巻頭言

プラネタリーヘルスとオープンイノベーション

長崎大学 学長 河野 茂

写真:長崎大学 学長 河野 茂

2021年3月15日

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2020年1月、私は学長として「長崎大学は今後プラネタリーヘルスに貢献していく」と宣言した。本学が目指すプラネタリーヘルスとは、人間の健康のみならず、環境資源・教育・政治・経済など俯瞰(ふかん)的な視点に立って地球規模の課題解決の実現に取り組むことである。しかし、解決すべき課題は複雑に入り組んでおり、既存の知の枠組みだけでは解決に導くことが難しくなっている。本学が取り組むプラネタリーヘルスは、地球規模の課題解決に向けて分野や領域を越えた多面的な知の連鎖を誘発し、かつ時代の変化にしっかり並走するための長崎大学の新たな挑戦である。

本学は熱帯医学・感染症、放射線医療科学分野における卓越した実績に加えて、長年の海洋水産研究と長崎県の地理的特性を生かした先端創薬や海洋エネルギー部門の充実など、地球規模の課題に挑む新しい研究コアの創出の基盤を有している。

さらに近年、県内へ相次ぐ情報技術系企業や物流系企業の研究開発拠点進出は新たなチャンスである。今春開校した情報データ科学部を加えた10学部と2研究所を持つ総合大学として、企業のニーズに合った効果的な人材育成や共同研究を推進でき、地域創生の原動力となるために産学官による新たな知の拠点づくりの契機となり得る。

その核となるのが、2020年7月1日に長崎県産業労働部、長崎県産業振興財団および長崎大学研究開発推進機構の3者が包括連携協定を締結して立ち上げた長崎オープンイノベーション拠点である。

これまで長崎県が企業誘致、県内外企業のマッチング、新事業展開支援などの事業を通して構築してきた産業界とのネットワークを活用し、大学と県における人事交流、産学官連携コーディネート業務の相互連携・協力が円滑に進むようになることで大学URA機能の強化にもつながり、長崎大学の持つ研究・技術シーズと企業ニーズとのマッチングによる共同研究の推進や事業化に結びつける「橋渡し」業務が期待される。

今回の長崎オープンイノベーション拠点では、「AI・IoT・ロボット」、「海洋」、「医工連携・ライフサイエンス」、「航空機産業」、「アントレプレナー・スタートアップ」の五つの主な領域を設定したうえで、本学のアカデミアとしての英知を結集し、従来の枠組みにとらわれない産学官の有機的な連携を推進する。

すでに先行して実施している例として、2019年10月に寄附講座として設立されたFFGアントレプレナーシップセンターが中心となる起業家人材育成とスタートアップ支援は成果が出始めている。

本学はこの長崎オープンイノベーション拠点を通じて、地元企業、県内進出企業、地元経済界、関連協議会、県内市町村、さらには県内外の他大学・高専などと大学としてのプラネタリーヘルス的な視点から産学官金が一体となった地域と地球規模の課題解決の実現に取り組んでいく所存である。