巻頭言

わが国が直面する課題と当社の役割

株式会社関電工 代表取締役社長 社長執行役員
技術士(電気電子部門・総合技術監理部門)
仲摩 俊男

写真:株式会社関電工 代表取締役社長 社長執行役員 技術士(電気電子部門・総合技術監理部門) 仲摩 俊男

2021年2月15日

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わが国は環太平洋変動帯に位置し、世界に1,500カ所あるといわれる活火山の約1割が集まり、地震発生回数は世界の18.5%と極めて高い。また、国土の約7割を山地・丘陵が占め、ひとたび大雨が降ると水は山から海へと一気に流下する。筆者は熊本県水俣市の出身であるが、九州地区の急峻な山々、強い台風は「恐さ」としての思い出である。

わが国の自然災害、特に水害は近年頻発・激甚化しており、1990年から2019年の30年間において日降水量が200mm以上となる日数は、1901年から1930年の1.7倍、土砂災害の発生回数も2018年に過去最多の3,400件以上を記録している。この背景には地球温暖化による気候変動があり、菅首相の所信表明演説にもあった「2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロ」など脱炭素に加え、防災の未然防止、被害の軽減と災害復旧のための体制整備への取り組みは、わが国にとって重要な課題である。

また、人口減少と少子高齢化が進展し、消費者ニーズも「モノ」から「コト」へ軸足を移しつつあるなど、わが国の経済・社会構造は中長期的に大きく変化している。こうしたパラダイムシフトと合わせ、企業の果たす役割そのものも変わっていかなければならない。

株式会社関電工は1944年に関東電気工事株式会社として戦時中に産声を上げた。翌年の空襲で本社社屋と関東8支社のうち7支社を焼失する中、焼け野原に建てられたバラックや戦災復興住宅の一軒一軒に明かりを灯していった。その後も電力インフラの建設などを通じて社会とともに歩み、現在では再生可能エネルギーを含む発電所、送電線から地域の配電設備、さらにはビルや工場・商業施設など電力のライフサイクル全体の維持・構築を主力事業としている。また、水害・風害・震災など自然災害時の復旧も当社の重要な役割である。創立当時は1,000人ほどだった従業員数もグループ全体で10,000人を超え、協力会社も含めるとおよそ40,000人を数える。このように、当社は「労働集約型企業」であり、社是も「人間第一」である。

一方、建設業界における人手不足は深刻化しつつある。入職者の減少と就業者の高齢化もあり、新たな担い手の確保が大きな課題である。このような状況下、当社では働き方・休み方改革に加え、デジタル化による生産性向上を進めている。

かつては工事をすることがわが国の発展と人々の豊かな暮らしに直接つながっていた。しかし価値観が多様化した現代社会においては、当社が取り扱うインフラ、設備、さらにはエネルギーを通じ、人々にどのような価値を提供することができるかがより重要である。従って、当社の役割は「設備の建設」から「安心で豊かな暮らしを支える」という方向にシフトしていかなければならない。

2020年10月、当社は東京電機大学とレジリエンス向上に関する共同研究プロジェクトの設立に向けた包括的産学連携協定を締結し、情報技術を積極的に活用した災害復旧を目指すこととした。このほかにも、大学やメーカーなどと連携し、インフラの効率化、脱炭素、防災、さらには安心で便利なエネルギー利用に向けた技術開発を進めており、こうした取り組みを通じ、わが国の明るい未来に貢献していきたい。