シリーズURAの質保証制度

第2回 日本版URA の歴史と質保証制度導入の背景

金沢大学 学長/リサーチ・アドミニストレーター協議会 会長 山崎 光悦
金沢工業大学 大学院 教授/リサーチ・アドミニストレーター協議会 副会長 高橋 真木子

写真:金沢大学 学長/リサーチ・アドミニストレーター協議会 会長 山崎 光悦 写真:金沢工業大学 大学院 教授/リサーチ・アドミニストレーター協議会 副会長 高橋 真木子

2021年1月15日

  • Twitterを開く
  • Facebookを開く
  • LINEを開く
  • 印刷ボタン

今回は、我が国におけるURAの歴史と質保証制度導入の背景について紹介する。特に質保証については、文部科学省における委員会や関係事業の報告書等で詳細が述べられているので、興味のある方は、合わせてご覧いただきたい。

我が国におけるURA制度導入の歴史と背景

我が国の大学等の研究機関では、研究者(教員)と事務職員という二つの属性でこれまで運営されてきた。これが平成16(2004)年度の国立大学の法人化にともない、大学に求められる役割の肥大化、高等教育の国際的競争の激化、さらには研究プロジェクトの大型化など、大学を取り巻く環境が大きく変化し、従来の研究者・事務職員という役回りだけでは、大学の本来の使命である研究とそれを土台とした高度な人材育成、そして産学官連携を含む社会実装に対応できなくなってきた。

平成14(2002)年前後の数年間、文部科学省・JSTは大学等の研究機関の研究成果の知的財産化や社会実装を推進するため、産学連携コーディネータ配置のための各種事業に力を入れてきた。これに加え、平成10(1998)年施行のTLO法(大学等技術移転法)に始まる経済産業省の一連の推進施策により、今日の一般社団法人大学技術移転協議会(UNITT)の基盤が構築された。少し遅れて、平成18(2006)年から始まった科学技術振興調整費「若手研究者の自立的研究環境整備促進」事業において、金沢大学ではその間接経費で、主に事業で採用された若手研究者を支援するための人材を配置した。その後平成21(2009)年度の教育研究高度化のための支援体制整備事業において、金沢大学は研究支援人材の充実を掲げ、その流れで研究支援業務に従事する人たちの情報交換やネットワーキングを目的とした「リサーチ・アドミニストレーション研究会」を立ち上げた。当時は50人弱の集まりであったが、これが毎年開催されるようになり、リサーチ・アドミニストレーター(URA)の役割が注目されるようになった。

平成23(2011)年度には、文部科学省「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」事業が開始され、この事業に採択された15大学でURAが配置されるようになり、採択校が幹事校として「URAシンポジウム」を毎年開催するようになった。また、同時に「スキル標準の策定」と「研修・教育プログラムの整備」が委託され、それぞれ東京大学、早稲田大学が事業を実施した*1*2。この東京大学が実施した事業で策定されたのが、URAのスキル標準である。このような文部科学省の施策により大学等におけるURAの配置数の増加にともない、より効果的なネットワーキングの場の提供という観点から「リサーチ・アドミニストレーション研究会」と「URAシンポジウム」の合同開催、さらには、URAシステム整備事業の終了と共に、URA制度の定着を目指して平成27(2015)年3月のリサーチ・アドミニストレーター協議会(RA協議会)が組織されるに至った。一連の経緯を図1に示す。

図1
図1 日本におけるURA 制度整備の過程とRA 協議会

研究大学強化促進事業とURAの配置

平成23(2011)年度に始まった第4期科学技術基本計画では、大学等の国際的な研究力の低下が指摘され、大型研究費の投入の仕組みや若手研究者育成のための環境整備事業、産学官連携コーディネータ配置事業など、日本の大学群の研究力強化に資する諸政策が文部科学省から矢継ぎ早に打ち出された。その流れを受けて平成25(2013)年度には研究大学強化促進事業(事業期間10年間)が始まった。この事業では、URA組織の体制整備と環境整備を求めており、選定された22の大学等の研究機関においてURA職として業務に従事する人たちが大幅に増えた。

このようにURA職の重要性が認識され、配置人数が増加する一方で、現場では、1)大学での研究経験者であったり、事務職からの転向であったり、あるいは企業出身者であったりと、バックグラウンドや経験、専門性に多様性があり、またパフォーマンスにも個人差がみられる、2)大学等が期待する能力・実績を有するものが適切に採用・配置されていない場合がある、3)適切な研修機会が不足していて人材育成に関する取り組みに、組織間格差がみられる、4)有期雇用のために不安定な職種となっているなどの課題が指摘されるようになってきた。

このような課題認識の下、文部科学省に「リサーチ・アドミニストレーター活動の強化に関する検討会」が設置され、平成30(2018)年9月にURAの質保証の意義と認定制度導入に関する論点整理*3がまとめられ、URAの質保証の必要性について指摘されるに至った。この検討会にはURA関連団体として、RA協議会、UNITT、医療系産学連携ネットワーク協議会(medU-net)、学術研究懇談会(RU11)、研究大学コンソーシアム(RUC)、多能工型研究支援人材育成コンソーシアム、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が参画し、議論が進められた。

リサーチ・アドミにストレーターの質保証に資する認定制度の導入

この質保証制度の検討に至る課題はすでに述べた通りであるが、最も重要なのは、URAが所属先を変えた時、これまでの経歴や経験がリセットされてしまう、という点である。これは、経験を適切に待遇に反映することができないということである。研究者であれば、助教、准教授、教授という職位に基づき、同一職位あるいは上位の職位での異動が一般的であるが、現状、URAにはそのような仕組みがない。これはURA職がまだ十分に認知されていないことや能力指標が明確ではないことに起因する。こうした状況を解消する切り札が統一的観点を基盤とする認定制度の導入である(図2)。現在、多くの機関の方の多大なご協力を得て、研修プログラムの構築、認定スキームの検討を進めている。この過程で、URAあるいはURA類似職の業務が見える化されると共に、URAについての認知が高まっていくものと期待している。

図2
図2 認定制度のスキームイメージ *3より転載

もう一つ重要な点は、URAと呼ばれる人たちが担う極めて多様な業務に対して、それを包括的かつ一定水準での研修を実施できるようになるという点である。数十名規模のURAを配置している機関もあれば、数名あるいは1人しかURAを配置できていない機関もある。後者の場合、URAの育成をその機関一つで完結することは難しい。しかも、こういう状況の機関の方が多数を占めている。こうした機関のURAに対しても、一定レベルの体系的な研修を提供できることは極めて意義がある。

我が国のURAの歴史はまだ10年足らずと浅いものの、すでに大学になくてはならない役割を果たしつつある。こうした人材の資質と能力を国を挙げて伸ばしていくことが、我が国の研究力強化の観点から重要になってくると言えよう。具体的な研修および認定制度の内容については、次号以降にその詳細を解説する。

*1:
平成25年度科学技術人材養成等委託事業「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」(スキル標準の作成)において東京大学がURAのスキル標準を策定した。研究戦略推進支援業務、プレアワード業務、ポストアワード業務の3つの中核業務とそれに関連する専門業務に区分され、22項目で構成される。また、ここでいうスキルを実際に定義したスキルカードは、実績あるいは経験を定義した「業績指標」と知識等をベースにした理解力または問題解決能力を定義した「業務遂行能力指標」からなる。
本文に戻る
*2:
スキル標準の策定と並行し、早稲田大学への平成23-25年度の文部科学省委託事業によって、研修・教育プログラム例が提案された。
本文に戻る
*3:
文部科学省「リサーチ・アドミニストレーターの質保証に資する認定制度の導入に向けた活動の強化に関する論点整理」(平成30年9月、リサーチ・アドミニストレーター活動の強化に関する検討会)
本文に戻る