シリーズURAの質保証制度

第1回 リサーチ・アドミニストレーター(URA)2020の現状
~シリーズ開始にあたって~

金沢大学 学長/リサーチ・アドミニストレーター協議会 会長 山崎 光悦
金沢工業大学 大学院 教授/リサーチ・アドミニストレーター協議会 副会長 高橋 真木子

写真:金沢大学 学長/リサーチ・アドミニストレーター協議会 会長 山崎 光悦 写真:金沢工業大学 大学院 教授/リサーチ・アドミニストレーター協議会 副会長 高橋 真木子

2020年12月15日

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リサーチ・アドミニストレーター(URA)という職名をご存じだろうか? 試みに、本誌内で検索すると、URAで170件、リサーチ・アドミニストレーターで241件が挙がる。全10回からなる「シリーズ:URAの質保証制度」を始めるにあたり、初回の今回は、そもそもURAとはどんな役割を期待され、どのような人たちが、大学等の研究機関の中で実際にどんな業務を担い、研究力強化に貢献しているのか、2020年現在の日本のURAの概況をご紹介することにする。

日本のURAにとって2021年はどんな年になるか

2011年開始の「リサーチ・アドミニストレーター(URA)を育成・確保するシステムの整備」、2013年開始の「研究大学強化促進事業」という二つの文部科学省事業の開始に続き、2021年はURAの質保証制度が開始される三つ目の大きな区切りの年となる。URAに限らず一般に専門職の確立には、専門化されたスキル(知識、問題解決能力などの業務遂行能力と業績)、ある程度の規模の集団の存在、相互に認め合う職能団体に加え、能力の評価指標が必要とされる。後述するように1,400人余の実務者が活動し、世界のURA団体の国際連携組織であるINORMS(International Network of Research Management Societies)が、アジアで初めて、2021年5月に広島で開催される、というこのタイミングで開始される質保証制度は、まさに日本のURAの定着に向け、時宜(じぎ)を得たものといえるだろう。

そもそも、URAとは

URAを一言でいうと、研究推進支援のプロフェッショナル、すなわち大学等(大学および研究機関など広くアカデミアを意味する。本文では以下、「大学等」と略す)の研究力強化に関わる業務に携わる専門人材である。現在の大学は、教育、研究、社会貢献を通じて社会に貢献することを強く期待されている。この期待に応えるため、例えば、研究費の獲得、研究環境の整備、利益相反マネジメント、知的財産の管理活用、契約、広報などの多様な研究推進支援が不可欠となる。想像するだけで、いかに優れた研究者でも全てに対応することは不可能であることがわかるだろう。大学等が自らの強みを最大化するためにこれらの機能を充実させ、研究力の向上を目指す時、研究者、事務系職員と連携し、これら研究推進支援業務を担うプロフェッショナルがURAである。このような役割は、大学等のみならず、産業界でも研究企画や新規事業開発など類似職が存在している。まさに、日本における大学のニーズを反映し、チームサイエンスの時代の要請によって生まれた職種であるといえるだろう。

国際的には、70年以上の歴史を持ち研究費の適正管理の背景から展開してきた米国、研究評価への対応で役割を確立した英国に加え、昨今のDX、コロナ禍の大学等をとりまく環境が激変する中で、オーストラリア、北欧諸国、さらにアフリカ諸国、ブラジル、インドなどでもURA*1の必要性が高まっており、各国のニーズに沿う形で、発展してきている。

日本におけるURAの現状

現在国内の大学等で活動する者は、169機関の1,459人に達している*2。その中心的な属性は、30~40代が最も多く、約半数がPhD(博士号)を保持している。URAの業務は上述したように多岐にわたる上、数十人規模のURAが活動している大学がある一方、自大学ではURAはまだ自分一人、という組織も多く存在する。組織に所属するURA人数とURAの中核業務の関係を分析した結果、組織規模によりURAが担う中心的業務が異なることが改めて明らかになった(伊藤・渡部 2020)。図1に示すように、一人URAの組織の過半数では、URAが中心的に担う業務の筆頭に産学連携があり、大きなニーズがあることが推測される。組織あたりの人数が増えるにつれ、プレ・アワード*3、ポスト・アワード*4、研究戦略などのURAが中核となって担う業務の種類が増え、分業が進んでいくと想像される。これが、日本のURAの担当業務のリアルであり、ある種の分かり難さの原因でもあり、今後の可能性とも言える。

図1
図1  URA 人数規模別の担当業務構成

研究活動サイクルにおける研究推進支援専門職の役割

実際に、URAの業務は、研究力の強化にどのように貢献するのだろうか。大学組織レベルでモデル化すると、資源獲得から研究の実施、成果創出、その波及効果が次の資源獲得につながる、というサイクルが描ける。これに、URAとコーディネータ*5の役割を追加したものを示す(図2)。まずわかるのは、研究のサイクルのほぼ全てのステップにURAやコーディネータが関与していること、URAとコーディネータの業務が重複している部分があることである。この図は、一般的な大学の活動を前提にモデル化したものだが、現実はより一層複雑である。実際には、それぞれの大学等の執行部の方針、研究推進支援として重視する活動、またキャンパスが地理的にまとまっているか、分散型か、TLO(技術移転機関)が学内・学外にどのような形態で存在し連携しているか、医学部・病院の有無、などの多様な要因により、個別最適な役割があるだろう。しかしいずれにしても、大学の教育・研究・社会貢献の役割の実装には不可欠な業務であることがわかる。

図2
図2 大学等における研究資源獲得・活用モデル
※印:プレ・アワードは、URA とコーディネータの両方がプレアワード業務を担っている、ということを意味する。
ポストアワード、技術移転、広報も同様である。

以上概観したように、URAとは日本においては約10年前に新しく定義された大学等の研究推進支援業務を担う専門職であり、その仕事は、およそ大学等の研究にまつわる全領域に広がる。多岐にわたる業務範囲においては、博士号取得者の研究経験だけでなく、大学事務職員の実務経験、企業における研究企画や新事業開発の経験、研究開発マネジメントの経験などが発揮される可能性を持つ。このような多様性を生かすため、共通の言葉で自身の専門性や経験・業績を示すことを可能にするのが、2021年度に始まる質保証制度である。次回から9回にわたり、質保証制度の導入の背景、制度の概要、認定する人材像、認定のスキーム、認定のための研修カリキュラム制度、また研修科目を具体的に紹介する予定である。大学等を舞台にしたこの仕事に関心を持つ多くの方に、興味を持っていただければ幸いである。

参考文献

伊藤伸・渡部俊也、日本知財学会第 18 回年次学術研究発表会予稿集(2020) 2A15
髙橋真木子・吉岡(小林)徹、研究技術計画、第31巻第2号(2016), pp.223-235.
*1:
アメリカではUniversity Research Administrator(URA)、イギリス等欧州諸国ではResearch Managerが一般的な名称である。日本においては、設計当時の参考をアメリカに求めたことからURAとされているが、欧州の視点も踏まえ、団体名は、リサーチ・アドミニストレーター協議会、Research Manager and Administrator Network Japan(英名)となっている。
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*2:
2018年度大学等における産学連携等実施状況調査(文部科学省)における、全業務時間の半分以上をURAとして従事している者。
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*3:
競争的資金の申請に関わる業務で、例えば、研究プロジェクトの企画立案,大学内外への調整業務,競争的資金の申請書作成支援等が含まれる。
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*4:
競争的資金の採択後の運営に関わる業務で、例えば、研究プロジェクトの管理運営等のマネジメント,その他大学内外に対する調整業務,リスク対応等が含まれる。
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*5:
産学連携コーディネータも、知財コーディネータ、地域連携コーディネータなどの総称として用いる。
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