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大学農場の搾乳を支える「うしぶ。」

帯広畜産大学 うしぶ。部長 家畜生産科学ユニット 正木 さやか

写真:帯広畜産大学 うしぶ。部長 家畜生産科学ユニット 正木 さやか

2020年10月15日

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うしぶ。とは 道内各地のスーパーでも販売

北海道十勝で乳牛170頭を飼育する帯広畜産大学では、毎日、乳牛の搾乳を学生だけで行っている。それが「うしぶ。」である。うしぶ。は1999年に立ち上げられ、昨年20周年を迎えた。現在、うしぶ。には21人の部員が所属し、毎朝夕3人のシフト制で搾乳している。

学生ではあるが、大学の非常勤職員として責任ある仕事を任されている。私たちの朝は4時40分から始まり、搾乳を終えてから講義に向かう。また、夕方の講義が終れば、牛の待つ牛舎に向かう。私たちの大学生活は牛とともにあるのだ。

私たちの搾った生乳の一部は、学内の乳製品工場でパック詰めされ、「畜大牛乳」や「畜大牛乳アイスクリーム」に加工され、大学生協や北海道内各地のスーパーなどで販売されている。

道内各地のスーパーでも販売

非常勤職員として畜大牛乳生産の牛舎へ配属

うしぶ。では、毎年4月に新入部員を募集する。動物好きの多い帯広畜産大学の学生の中でも、牛が好き、牛に興味があるという学生が集まる。もちろん、牛を見たことのない人、触ったことがない人、搾乳をしたことがない人でも大歓迎だ。現在のうしぶ。部員もほとんどが入学するまで搾乳をしたことのない初心者ばかりだった。では、どのように搾乳方法を学ぶのか。うしぶ。では、新入生の指導は全て先輩が行う。丁寧(ていねい)かつ正確に搾乳作業ができるようになるまで、数カ月間、付きっ切りで指導にあたるので、誰でも一人前に搾乳ができるようになる。

最初は、特別管理牛舎という病気の牛やお産する牛を収容する牛舎で搾乳の練習をする。そこで搾乳の基礎を学び、実践練習を繰り返す。基礎がきちんとできるようになり、成績判定試験で先輩から合格がもらえたら、ついに「畜大牛乳」を生産している牛舎へと配属される。しかし、新しい場所での作業となっても、搾乳前の様々な準備作業や後片付けまで、きちんと作業ができるようになるまでは研修生として先輩とともに搾乳作業の工程を学び、その後、大学の非常勤職員として正式に雇用され、搾乳業務にあたることができる。安全な畜大牛乳を生産するために、新入生の教育にも力を入れているのである。

食品安全目標達成のために

本学の畜産フィールド科学センターではISO22000認証を取得している。ISO22000とは、スイス・ジュネーブに本部を置く国際標準化機構(ISO)が策定した食品安全に関するマネジメントシステム規格である。グローバル化が進み、国家間で食品の安全性に関する規格が曖昧(あいまい)になっている中で、世界で共通して食品安全衛生が提供できるように定められた。私たちは搾乳作業を通して、まさに世界水準の食品安全を実践しているのだ。

日々の活動の中で特に注意しているのが、搾乳手順と乳房炎牛(乳房炎とは乳牛で最も発生率の高い病気であり、乳房炎を発症した牛の生乳は出荷できない)の対応だ。搾乳手順は大学で定められている手順に従い、可能な限り生菌数の少ない安全な生乳を生産できるように取り組んでいる。搾乳中に少しでも乳房炎が疑われた場合は、その場で乳汁の乳房炎検査を行い、乳房炎判定が陽性の場合は、その場から教員(獣医師)に連絡し、早期治療に努めている。

地域との交流

私たちうしぶ。は、地域の方々との交流として、毎年いくつかの大学のイベントに参加している。例えば、「畜大ふれあいフェスティバル」では、地域の方々に畜大牛乳や畜大牛乳アイスクリームを試食していただいた。また、牛体モデルを使った搾乳体験も行った。小さな子供から大人まで、様々な方に牛乳の原点について知ってもらえる良い機会となっている。また、地元のデパートで畜大牛乳のPRを兼ねて「畜大牛乳試飲会」をさせていただいている。これらの活動を通して、地域の方々の生の声を聞くことができ、「いつも飲んでるよ」「畜大牛乳が一番おいしい」「これからも頑張ってね」といった消費者の方々の言葉と笑顔は何よりもうれしく、何よりも私たちに力をくれる。うしぶ。が畜大牛乳を生産できているのは、消費者の方々が畜大牛乳を飲んでくださるからであり、人と人とのつながりは大切なものと日々感じている。

地域との交流

コロナの影響で消費量減でも感染予防を徹底

今、新型コロナウイルスの影響で牛乳の消費量が減ってしまっている。しかし、酪農家を応援するプロジェクトとして、たくさんの方に乳製品の消費にご協力いただいているようで、本当に感謝の気持ちが込み上げてくる。私たちうしぶ。も新型コロナウイルスの感染予防を徹底しながら搾乳業務にあたり、少しでもおいしい牛乳をお届けできるように精進していきたい。消費者の方々に安心して畜大牛乳を飲んでいただけるよう、現状維持ではなく、さらなる食品安全と品質向上を目標に安全な牛乳を生産していきたい。