連載とある科学の研究管理者(アドミニストレーター)

#3 レベル5

本誌編集長 山口 泰博

2020年10月15日

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地方創生は最重要課題と位置付けられ、まち・ひと・しごと創生総合戦略では地方大学の強化などを盛り込み、スーパーグローバル大学、指定国立大学など矢継ぎ早に示される戦略。大学と産学連携への期待は高まるばかりだ。第3回となる今号は、表にこだわってみた。そして、この連載のタイトルの意味も徐々に触れつつ、共鳴と指摘とユーモアを織り交ぜながら、分かりやすく追っていきたい。これからが本領発揮だ。

大学に期待される項目が多い、まち・ひと・しごと創生総合戦略

少子化による人口減少と若年層の大都市流出が社会問題化し、地方創生は最重要課題だ。そこで「まち・ひと・しごと創生総合戦略(総合戦略)」が閣議決定。2015年度に策定され長期ビジョンを実現するため5カ年の目標や施策や基本的な方向が提示された。

総合戦略には、地方の大学に関する記述も多数存在し、地域への貢献が期待された。例えば、仕事と人の好循環づくりとして、地方に仕事をつくり、安心して働けるようにするための地方への人材還流、人材育成、雇用対策や2020年までの5年間の累計で東京圏から地方へ約10万人の人材を還流などである。また若者人材の還流や育成・定着支援では、地域で女性の活躍推進、新規就農・就業者への総合的支援、大学・高等専門学校・専修学校など地域ニーズに対応した人材育成支援、若者、高齢者、障害者が活躍できる社会の実現だ。

地方への新しい人の流れをつくるという項目では、地方大学などの活性化を命題に、地方の自県大学進学者割合を平均36%にし、新規学卒者の県内就職割合を平均80%へ。知の拠点としての地方大学強化、地元学生定着促進などがあり、大学への期待が大きい。

スーパーグローバル大学タイプA(トップ型)

個性や特徴を スーパーグローバル大学

これまでの高等教育機関や研究機関として一括りだった大学の位置付けが細分化され、従来の機能のほか、国際的競争力を持つ大学や地域に貢献できる人材を育てる大学など、地域や形態、規模などに応じ、それぞれの大学が個性を持ち始めているのは確かだ。

文部科学省は2014年に「スーパーグローバル大学(SGU)創成支援事業」の対象となる大学の選定結果を発表した。SGUをタイプA(トップ型)とタイプB(グローバル化牽引型)に分けて採択。指定されると、優秀な研究者を高給で雇ったり、大学が財務基盤の強化のため研究を活用する子会社を設立したり、研究成果を活用する事業者への出資などが認められている。

トップ型は14校。最高の世界大学ランキングのトップ100 を狙う実力がある、世界レベルの研究を行う大学だ。国立大学改革の推進役としての役割などが期待されている。

一方、グローバル化牽引型は24校だ。これまでの実績を基に、さらに先導的な取り組みに挑戦し、日本社会のグローバル化を牽引していると認められた大学である。

世界レベルの教育研究を行うトップ大学や、先導的試行に挑戦しわが国の大学の国際化を牽引する大学など、徹底した国際化と大学改革を断行する大学を重点支援することで、高等教育の国際競争力を強化するとした。人口減少だけでなく、グローバル化への対応が課題となっているためだ。

産学連携は、企業にとって、大学の知見や研究成果、ブランドを活用し、自治体との協力の下、補助金の獲得で新製品や新事業を作り出すなどのメリットがある。一方で、企業が求めるビジネスに対するスピード感やコミットは大学によってまちまちだ。特に医工連携では、医療の専門用語とものづくり企業との言葉の壁が生じる。異なる分野の連携にはよくあることだ。

スーパーグローバル大学タイプB(グローバル化牽引型)

レベル5**1の指定国立大7校

指定国立大学法人制度は、日本の大学における教育研究水準の向上とイノベーション創出を図るため、世界最高水準の教育研究活動の展開が相当程度見込まれる国立大学法人を指定国立大学法人として指定する制度で2017 年度から導入された。その大学が、東北大学、東京大学、京都大学、東京工業大学、名古屋大学、大阪大学、一橋大学だ。

指定国立大学

わが国の高等教育の国際競争力の向上を目的に、海外の卓越した大学との連携や大学改革により徹底した国際化を進める、世界レベルの教育研究を行うトップ大学や国際化を牽引するグローバル大学に対し、制度改革と組み合わせ重点支援を行うことを目的としている。

「とある科学の…」**1の世界観になぞらえると学園都市に7人しかいないレベル5(ファイブ)がこの指定国立大学7校(国立大学に限定した場合)といえる。そして、レベル5最強の「一方通行(アクセラレータ)」が東京大学であることは誰もが認めるところだ。

立場上、第3位の「超電磁砲(レールガン)」こと御坂美琴(みさかみこと)や第5位の心理掌握(メンタルアウト)こと食蜂操祈(しょくほうみさき)などに例えて2位以下の順位を付けることはできないが、肩の凝る小難しい情報になりがちな本誌では、科学と「とある…」ファンのような世代や思考を持つ人たちにも知ってほしい。そして話題にしてほしい。そんな願いからときおりなぞってキーボードをたたいていることをお許し願いたい。

メディアや固定化されたブランディングイメージだけにとらわれた大学選びから、指定国立大学のレベル5を目指すとか、スーパーグローバル大学だから希望したとか、そんな受験者がいるとこの連載の価値があるというものだ。

指定国立大学7校と学園都市最強のレベル5の7人**1との関係性
指定国立大学7校と学園都市最強のレベル5の7人**1との関係性

10万人が受験すれば30億円の受験料収入

しかし、世間はまだまだそういうわけにはいかないようだ。

東洋経済の2020年版の「志願者数が多い大学」ランキングTOP50(株式会社大学通信が発表)によれば、1位近畿大学(2020年の志願者数)145,350人、2位日本大学113,902人、3位早稲田大学104,576人、4位立命館大学103,669人、5位法政大学103,628人、6位千葉工業大学103,269人、7位明治大学103,035人と続く。近畿大学は毎年万単位で増え続け、10年前から志願者は倍以上に伸びたという。ちなみに慶応義塾大学は22位38,454人だ。

これは、有名私立大学でも安心はできないことを意味し、上位のほとんどが東京・関東首都圏だ。しかし、近畿大学のように東京以外でも1位になれることも見逃せない。とはいえ関東、関西など都市部に集中していることは否めない。大学は、地方創生を掲げる政府の方針と、東京一極集中への批判とは裏腹に、ここ10数年の間に郊外へ移転した学部の都心回帰にやっきだ。生き残るためのやむを得ない状況なのだ。都心であっても学生集めの競争は激化する一方である。

受験者にとって立地は大学選別の重要な判断材料で、学生を確保する狙いがあり、特に私立大学のキャンパス再編が目立つ。私立大学の文系の受験料を仮に3万円としても10万人が受験すれば30億円の受験料収入が見込める。志願者数は大学にとって重要な見過ごせない収入源なのだ。

2020年度版「志願者数が多い大学」ランキング
図:2020年度版「志願者数が多い大学」ランキング

本音は都心へ出たい

東京への一極集中是正のため、安倍晋三首相(当時)が議長となる「まち・ひと・しごと創生会議」で、東京一極集中の是正に向け、東京23区内での大学や学部の新増設を抑制する仕組みについて、検討をし「東京に集中しがちな若い世代が地方に向かう流れを作る」としてきた。

地方大学への支援を拡充すると同時に、一方では、地方の若者の東京流出は、進学による上京などが大きな要因となっていると言われてきた。また、学部増設を抑制し都内の大学定員拡大を抑え、地方大学への進学者を増やす狙いがある。政府は2020年までに、東京圏への人口流入と地方転出の人数を同程度にする目標を掲げてきたが東京一極集中は収まらない。例えば、文系総合大学の立正大学は2014年に、大崎キャンパスから品川キャンパスへ名称を変更し、熊谷キャンパスにあった法学部と法学研究科を品川キャンパスへ移転。中央大学は八王子の法学部を、2022年度をめどに都心に再び移転させる方針を明らかにしている。都心の後楽園や市ヶ谷にキャンパスを中心に再編させる模様だ。このほかに、東京にキャンパスを置く地方大学も多い。関西学院大学の東京丸の内キャンパス、近畿大学東京センターは東京八重洲に、東京での就活支援を強化するが目的である。また、京都に本拠地を構える立命館大学は、京都市内の衣笠キャンパスや朱雀キャンパスのほか、びわこ・くさつキャンパス、大阪いばらきキャンパスなど広範に拠点を置くが、東京や大阪にもサテライトキャンパスを設置。名古屋商科大学ビジネススクールは、主に社会人を対象にMBAスクールを東京や大阪で実施している。

1位千葉大、2位北大

一方、国立大学はどうか。国立は私大と異なり志願者数や立地に大きく左右されにくい。だから私大のそれと単純比較はできないが参考までに、2020年大学入試の文部科学省のまとめからデータを抽出した。その結果、国立大学(82大学394学部)の募集人員は77,996人、志願者は307,192人で、平均倍率は3.9倍だった。国公立大学合計にすると100,146人、439,565人、平均倍率は約4倍である。表は志願者数上位10大学。

2020年度 国立大学志願者数
図:2020年度 国立大学志願者数

(次号へ続く)

参考文献

**1:
とあるプロジェクトポータル、とある魔術の禁書目録(インデックス)、とある科学の超電磁砲(レールガン)
とある科学の一方通行(アクセラレータ)
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