特集大学発ベンチャー表彰2020

日本ベンチャー学会会長賞
東大発のAI総合研究所 NABLAS株式会社

NABLAS株式会社 中山 浩太郎

写真:NABLAS株式会社 中山 浩太郎

2020年10月15日

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既に数千人を超える教育プログラムの受講者実績があり、AIに関するソリューション展開において着実な事業展開を行っている点が評価できる。さらに拡大が見込まれるAI教育、企業などへのAI導入に視点をあてたビジネスモデルに今後の発展が期待される。

AI人材育成、コンサルティング、R&D(研究開発)を統合して行うAI総合研究所

NABLAS(ナブラス)株式会社は東京大学発のベンチャー企業であり、最先端のAI技術を活用したAI人材育成事業・AIコンサルティング事業・R&D事業の3事業を展開する、AI総合研究所として活動している。これらの3事業を統合して提供することで、企業のニーズや状況に合わせたソリューションの提供を可能にしている。AI技術の社会実装を様々な形で実現し、人・テクノロジー・社会問題をつなげることで、人が人らしく生きられる社会の実現を目指す。

AI人材育成サービス「iLect(アイレクト)」では、課題解決に特化したAI人材育成講座と、仮想化されたクラウド型のプログラミング環境「iLect System」を提供している。iLectの講座は、多くの企業で法人研修プログラムとして活用されており、Deep Learning講座(JDLAのE資格に対応)やデータサイエンティスト育成講座などを中心に、すでにのべ4,000人以上(2020年8月時点)の利用者が受講している。

AIコンサルティング事業では、的確な問題発見と技術選定を行った上で企業の課題解決につながるソリューションを提案しており、それを基に、企業の持つ知見やデータを活用して競争力の高い技術開発をするR&D事業に展開している。AI技術の導入から開発までのワンストップソリューションの提供を行い、人材・技術・データの面で相乗効果を引き出すことで、AIを活用した課題解決に対して他企業では難しいレベルでのコミットを可能にしている。

AI総合研究所としての成功

当社の成功要因には、上記の3事業を統合して展開できる点があげられる。創業者の中山は、大阪大学で博士号(情報科学)を取得後、大阪大学大学院情報科学研究科で特任研究員、東京大学知の構造化センターおよび東京大学大学院工学系研究科で助教/講師を担当した経歴がある。過去10年以上にわたり、東京大学でAIに関する研究・研究開発に携わってきた。特に、直近5年は東京大学にて人材育成に注力し、5年で2,400人のAI人材を輩出した実績がある。これらの活動を大学内の小さな範囲に留めず、より多くの人に届けることを目指し、当社の前身にあたるiLect株式会社を設立した。

iLectは人材育成サービスの提供を目的として設立したが、実際に事業展開する中で、AI技術の導入や開発に対するニーズの急激な高まりを目の当たりにした。AI人材育成を進める企業には、人材育成の先に「AI技術を利用して競争力の高い新技術を作る」ビジョンや、「AI技術を導入して組織としての生産性や競争力を高める」といった目的がある。そのため、人材育成だけでなく、技術の開発から導入までも支援することでより社会ニーズに応えられると考え、事業拡大する形でNABLASという社名に変更した。以降、3事業一体でソリューションを提供する「AI総合研究所」として事業展開を始めた。これにより、事業間に高い相乗効果が生まれ、企業の状況やニーズに合わせた的確なソリューションを柔軟に提供できるようになった。

一事例として、知識・技術不足により、どんな技術を導入するべきか何をするべきかが分からないという企業に対して、まず人材育成サービスを提供することでAIに対する知識の底上げを図り、その上でAIコンサルティング・R&Dにつなげる流れを作った事例がある。また、AIコンサルティングの一環として丁寧(ていねい)なヒアリングを実施し、どんな場面で具体的にAIが活用できるのか、現在組織の中にある素材をAIに活用するとどういったことが可能になるのか、といった課題整理と課題解決後のストーリー作りを行った上で、技術を共同開発するR&Dにつなげた事例もある。

このような活動を続けた結果、優良なクライアントを数多く開拓することができ、2019年度は4億円(前年比622.3%増)の売上を達成するなど、より大きな価値を社会に届けることに成功した。また、新型コロナウイルスによる業績への影響は少なからずあったものの、オンラインでAI人材育成講座を受講できる「iLect ON」というサービスの展開や、AIコンサルティング・R&D事業にてこれからの時代に向けた企業の新しい動きを支援するプロジェクトの立ち上げに向けて動くなど、世の中の変化に伴って増えたニーズに迅速に対応しているため、今後も順調な成長と事業規模の拡大が見込める。