特集大学発ベンチャー表彰2020

文部科学大臣賞
人体と共存する細菌群のビッグデータをつかみ
次世代のヘルスケアを実現する

株式会社サイキンソー 代表取締役 沢井 悠

写真:株式会社サイキンソー 代表取締役 沢井 悠

2020年10月15日

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腸内細菌叢のDNA 検査サービスのパイオニアとしてこれまでに無いソリューションを提供する技術であり大学、企業との連携によって着実に事業を進めている点で評価ができる。既に2万件の個人向け検査の実績を持っており、これからの他サービスへの展開も含めて今後大きく成長することが期待される。

検査サービスを通じて大規模な腸内フローラデータプラットフォームを構築

株式会社サイキンソーは、「細菌叢(さいきんそう)で人々を健康に」を企業理念に設立されたヘルステックベンチャーです。社名にもなっている「細菌叢」とは、ミクロの世界で重要な役割を演じる細菌の集合体を表しており、よく知られているものとして「腸内フローラ」があります。腸内フローラは、人体の大腸内に住み着き、家主である人体と相互に関わり合いながら一種の生態系を形成している細菌群で、近年では、人体そのものの健康状態に大きな影響を及ぼしていることが知られるようになりました。腸にフォーカスを当て、体の内側からより健康になるための「腸活」という考え方も普及し、様々な腸活商品も登場することで業界は活況を呈しています。

このような社会背景のなか、当社は、人体と共存する細菌叢のビッグデータをつかみ、次世代のヘルスケアを実現するための事業を展開しております。具体的には、「誰でも簡単に受けられて腸内フローラを正確に知ることができるパーソナル型の検査」を提供し、現在では国内最大規模の実績を保有するに至りました。

検査サービスは、腸内フローラを構成する細菌群をDNA 解析するもので、「マイキンソー」というシリーズ名で提供しております。検査を通じて様々な人々の腸内フローラ構成データを収集しており、大規模なデータプラットフォームを確立、これを応用しさらなる新商品やサービスの開発に発展させていく予定です。

独自の細菌叢評価アルゴリズムを開発し医療機関との連携やOEM型サービスにより利用実績を拡大

当社の現在の主力事業は、パーソナル型の腸内フローラ検査である「マイキンソー」シリーズです。マイキンソーは、日本国内の600を超える導入医療機関で申し込んでいただくことにより、個人で利用することが可能です。マイキンソーにおける腸内フローラの解析は、大阪大学微生物病研究所との共同研究により確立した、最先端のDNA解析技術を使用して実施されています。また、国立研究開発法人理化学研究所の特別招聘(しょうへい)研究員(2020年時点)で腸内細菌学の権威である辨野(べんの)先生の指導の下、解析結果を「パーソナル検査レポート」としてビジュアライズするエンジンを開発しました。これまでの検査数は累計2万件を超え、人体の腸内フローラの精密DNA 検査サービスとしては国内No.1の実績と考えております。なお、マイキンソーの簡易版をオンラインECで販売しており、検査項目が限定されるものの、自宅にいながらでも検査サービスを受けることが可能になっています。

検査実績が大きく増えたきっかけとして、自社開発した「腸内フローラスコアリングアルゴリズム」があります。従来、腸内フローラは個人差がとても大きいものと考えられ、単一の指標でその良し悪しを評価することは困難であると認識されてきました。いわゆる「善玉菌」「悪玉菌」として知られるような、個々の菌として良い/悪い働きをするものは知られておりましたが、「集合体としての挙動」は簡単には解明できず、それゆえ腸内フローラの良し悪しは大きな謎でした。当社はこの謎に対して大規模データプラットフォームを用いたアプローチを試み、試行錯誤を通じて、ようやく腸内フローラの良し悪しを簡単に表現できるアルゴリズムを確立・実用化しました。

新しい「腸内フローラスコアリングアルゴリズム」はマイキンソーの第三世代(V3)に実装され、主に医療機関向けの検査サービスとして展開されております。第三世代マイキンソーは好評で、検査数実績の拡大に大きく貢献しました。さらに、最近ではこれに目を付けた大手企業などからOEM(相手先ブランド名製造)検査サービス開発の依頼が舞い込むようになり、家電メーカーのパナソニックやシオノギヘルスケア(塩野義製薬のグループ企業)といった企業で、当社技術を用いた検査サービスが実用化されております。

今後は、「次世代のライフスタイルを提案する」ヘルステックベンチャーの使命として、検査のその先の新しいビジネスモデル創出にチャレンジしたいと考えております。具体的なアイデアとしては、検査により分かる個人個人の体質に対し、パーソナライズ化したサプリメントなどを提供する事業モデルを構想しています。「検査する、分かる」を中心にこれまでサービス展開を行ってきましたが、さらにその先の「行動する、治す」を、新たな価値として提供していきたいと考えております。