特集大学発ベンチャー表彰2020

文部科学大臣賞にサイキンソー
経済産業大臣賞にイノフィス

国立研究開発法人科学技術振興機構 起業支援室 原口 智全

写真:国立研究開発法人科学技術振興機構 起業支援室 原口 智全

2020年10月15日

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国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「大学発ベンチャー表彰2020」の受賞者を決定した。本年度はコロナ禍での受賞決定となったため表彰式は開催せず、表彰状・賞牌の授与を受賞企業各社に対して行った。

大学発ベンチャー表彰制度は2014(平成26)年度に創設され、今回は第7回となる。大学等*1の成果を活用して起業した大学発ベンチャーのうち、今後の活躍が期待される優れた大学発ベンチャーと、特にその成長に寄与した大学や企業などを合わせて表彰することで、大学等における研究開発成果を用いた起業および起業後の挑戦的な取り組みや、大学や企業などから大学発ベンチャーへの支援や協力がより一層促進されることを目指している。今年度の応募総数は33社。外部専門家で構成された選考委員会による書面選考・質疑応答などを経て6社のベンチャー企業が受賞した。

大学発ベンチャー表彰2020 受賞者
大学発ベンチャー表彰2020受賞者一覧表

文部科学大臣賞のサイキンソーは、人体の常在細菌叢(さいきんそう)データを活用し、次世代のライフスタイルを提供することを目指している。人体の腸内細菌叢のDNA検査サービス「マイキンソー」を提供し、サービスを通じて収集した大規模腸内細菌叢データプラットフォームを用いて次世代のライフスタイル提案につながる技術を開発するヘルステックベンチャーである。腸内細菌叢のDNA検査サービスのパイオニアとしてこれまでにないソリューションを提供する技術であり、大学および企業との連携によって着実に事業を進めている点が高く評価された。既に2万件の個人向け検査の実績を持っており、これからの他サービスへの展開も含めて今後大きく成長することが期待される。

経済産業大臣賞のイノフィスは、重作業での腰の負担を軽減させる装着型ロボット「マッスルスーツ」の開発・販売を行っている。主力製品である腰補助用マッスルスーツは2006年から開発。2019年には機能・価格のバランスが優れている「マッスルスーツEvery」を発売し、累積出荷台数は1万台を超えた(2020年3月時点)。事業会社・アカデミアとのアライアンスを構築し、顧客ニーズを製品改良に素早く取り入れる高速サイクルを実現しており、このような連携を生かして事業化を進めている点が高く評価された。日本発のマッスルスーツメーカーとして、大きく成長することが期待される。

JST理事長賞のXenoma(ゼノマ)は、スマートアパレル(IoT衣服)「e-skin」を展開している。e-skinを通じて、日常生活における楽しみや利便性を向上させ、さらに安心安全な社会の実現に貢献するための「予防医療」につながる製品やサービスを開発、提供している。日本だけではなくグローバル展開を目指した組織体制・経営方法で推進しており高く評価された。日本発のスマートアパレルの実用化により、今後大きく成長することが期待される。

NEDO理事長賞のHmcomm(エイチエムコム)は、ディープラーニングを用いた音声認識・自然言語解析の事業と、AIでの異音検知事業を提供している。データ分析・AIアルゴリズム構築をコアコンピタンスとして、製造・通信・流通・金融など様々な業界での実績を持つ。音声認識・自然言語処理技術にベースとなる強みを持っており、そこにAIを活用することで幅広く得意とする技術を活用できることが評価できる。労働生産性の向上という社会的課題の解決のために求められる技術であり大きく成長することが期待される。

日本ベンチャー学会会長賞のNABLAS(ナブラス)は、AI人材育成事業、コンサルティング事業、R&D事業を一体で行い、AIに関するソリューションを提供している。AI人材育成事業では既に数千人を超える教育プログラムの提供実績があり、AIに関するソリューション展開において着実な事業展開を行っている点が評価された。拡大が見込まれるAI教育、企業などへのAI導入に視点をあてたビジネスモデルに今後の発展が期待される。

アーリーエッジ賞のアグロデザイン・スタジオは、タンパク質結晶構造解析を活用した安全性の高い農薬の研究開発を行っている。ターゲットタンパク質の結晶構造に基づいて化合物デザインを行い、対象病害虫のみに作用する分子標的農薬を実現する。研究者自らが研究成果の社会実装のために起業をしており、これまでの資金調達や事業体制推進などの一連の流れが評価された。これまでにない分子標的農薬をデザインするものであり実用化による大きな社会的インパクトの創出を期待したい。

大学発ベンチャーが創出され、成長し、社会にイノベーションをもたらすまでの過程においては、産学官による息の長い支援が必要である。本表彰制度が、そうした支援体制のより一層の整備のための一助になれば幸いである。

*1:
国公私立大学、高等専門学校、国公立試験研究機関、国立研究開発法人、公益法人などの非営利法人
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