巻頭言

発酵食品の可能性と産学官連携

会津天宝醸造株式会社 代表取締役社長 満田 盛護

写真:会津天宝醸造株式会社 代表取締役社長 満田 盛護

2020年10月15日

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会津天宝醸造株式会社は、福島県会津若松市にて1834(天保5)年より塩の販売と味噌の製造小売りを生業(なりわい)とし、1871(明治4)年には本格的に味噌の製造販売を開始した。

現代では食の欧米化や女性の社会進出、共働き世帯の増加など生活様式が目まぐるしく変化し、それに伴い食の在り方が多様化してきた。味噌に関しても、多くの方にとって手作りするものから買うものに変わり、インスタント味噌汁や液体、パウダータイプの味噌、当社が全国に先駆けて開発した調理みそなど、生活様式に合わせた商品が数多く台頭している。そして最近では、時短や簡便さが重視される一方で、「食と健康」がトレンドになっている。2010年代に塩糀(しおこうじ)と糀のあまざけが大ブームになり、定番の味噌、キムチ、納豆、ヨーグルトなどとともに「発酵食品=体に良いもの」というイメージが消費者の間で今まで以上に強くなった。

さらに、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品の市場規模が年々拡大していることからも分かるように、科学技術の進歩により農作物や食品の持つ機能性を検証できるようになったことは、食品メーカーのみならず消費者においても大きなインパクトになったことは間違いない。

当社も、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が手掛けた東日本大震災後の復興支援マッチングにて、産学官連携で玄米あまざけを開発し、その効果検証を行った。共同研究機関としてご縁を頂いたのが琉球大学医学部第二内科の益崎裕章教授と、福島県ハイテクプラザだ。益崎教授の研究テーマの一つである玄米に含まれる機能成分「γ-オリザノール」に着目し、当社の製麹技術を活用して商品開発を行った。

福島県ハイテクプラザに玄米糀製麹に関するご指導を受け、3年半の開発期間(臨床試験を含む)を経て、2015年にγ-オリザノール含有玄米発酵飲料「玄米オリザーノあまざけ」を上市した。益崎教授主導で一般財団法人沖縄県健康づくり財団にて実施された臨床試験では、玄米オリザーノ飲用により、間食回数の低下、腸内フローラのバランス改善、便秘肌荒れの解消などが認められている。

当時東日本大震災と原発事故の影響を受けていた私たちにとって、産学官連携により、科学的根拠による裏付けと安全性が確認された地元食材使用の発酵食品が開発できたことは、大きな希望となった。身近な食には多くの可能性があるということと、食の機能性を証明する科学の力の素晴らしさを実感できたことは当社にとって大きな財産である。

「人生100年時代」と言われているが、元気に暮らせる健康寿命を延ばすことが重要であり、そのポイントとなるのが「食」であるのだ。日本ならではの食文化、発酵食品は廃(すた)ることはない。しかし、未来を見すえてその在り方を見極め、次世代へつないでいくことが重要と考える。