巻頭言

コロナウイルスがもたらした状況と地方創生への取り組み

北陸先端科学技術大学院大学 学長 寺野 稔

写真:北陸先端科学技術大学院大学 学長 寺野 稔

2020年08月15日

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北陸先端科学技術大学院大学は、独立したキャンパスと教育研究組織を持つ日本で最初の国立大学院大学として1990年に開学され、本年(2020年)創設30周年の節目を迎える。

本学では、開学以来、企業との共同研究をはじめとする産学連携に力を注いできた。近年では、地方自治体や中央官庁、公的研究機関までを含めた産学官連携を大学改革の中心に位置付ける方針の下、間接経費の増加による大学の経営環境の改善や研究成果の社会実装はもちろん、学生の教育や就職支援などにも産学官連携を活用し効果を上げている。

世界は今、新型コロナウイルス感染症の拡大により大きな危機に見舞われている。この状況は東京や大阪、名古屋などの大都市に、人口や産業が集中することの危うさと地方にいることのメリットを明らかにしたと言える。

日本においては、企業全体の99%以上が中小企業に分類され、その多くが地方に存在するという産業構造上の特色がある。新型コロナウイルスがもたらした現在の状況は、真の地方創生の達成に取り組むためのチャンスであるとも考えられる。

本学の位置する北陸地域には、製造業を中心とした先進的かつユニークな技術を持つ中小企業が数多く存在している。この地域に限ることではないが、イノベーションの創出には異なる組織や技術分野のマッチングが有効であると考えられる。しかし、地方中小企業が独自に大学や他社の有するシーズやニーズを知ることは難しく、企業間の連携や産学連携によるイノベーションの創出を困難にしている。

本学では、URAや教員が北陸地域を中心として毎年300社以上もの企業を訪問し、ニーズやシーズを収集している。この活動を「御用聞き活動」と称し、毎年精力的に推進している。さらにこの活動を集約し、地域活性化や地方創生につなげるための総合的な取り組みとして、新製品・新事業の「種」を多数同時に形成し、イノベーション創出につなげるシステムである「マッチング・ハブ(Matching HUB)」というイベントをURAが中心となって企画・開催している。Matching HUB は、北陸地域のみのイベントではなく、震災からの復興支援を目的に熊本で開催し、さらに小樽、札幌や徳島など日本各地に展開することで、各地域の活性化に貢献してきた。また、本学では自らの産学官連携活動を対象とした研究にも取り組んでいる。新型コロナウイルスがもたらした状況を前向きに捉え、Matching HUB をはじめとして地域の活性化や地方創生につながる取り組みを進めていく方針である。

来年4月に施行予定の「科学技術・イノベーション基本法」では、「人文科学のみに係る科学技術」も対象とされている。経済学、社会科学、データサイエンスなども含めた科学技術の拡がりにより、産学官連携がさらなるイノベーションに貢献することを期待している。

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