視点

プレプリントと産学連携

大学共同利用機関法人自然科学研究機構 研究力強化推進本部 特任准教授 前波 晴彦

2020年07月15日

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分野によっては書籍や紀要、国際会議での発表が重視されるなど優先順位に違いはあるものの、査読を経た学術論文が科学知識の生産における主要な役割を担っていることに異論はないだろう。

ピアレビューと呼ばれる専門家同士の査読システムは、科学知識の質を担保する上で重要なプロセスである。一方、査読システムには公開まで数カ月から年単位の時間がかかるなどいくつかの課題が指摘されている。そこで1990年代以降、査読を経ていない論文がプレプリントサーバーと呼ばれるウェブサイトで公開されるようになった。

プレプリントによって最新の知見が素早く公開され、他者がそれを利用することが可能になる。実際、COVID-19でも非常に多くのプレプリントが公開され解決に向けた議論を支えている。

しかしプレプリントは査読を経ていない。これは本来的な特徴であり、内容の真偽、精度、適用限界などの厳密性は査読論文に及ばない。では産学連携でもプレプリントの特徴を気にする必要があるだろうか。

例えばプレプリントに基づいて情報発信した後に内容が大きく修正されることもあるかもしれない。いざ産学連携でとなれば、産学双方によって内容が検証されるのだから大きな問題にはならないだろうか。そうかもしれない。

しかし産学連携の実務者であれば、最初のボタンの掛け違いが悲劇につながった苦い経験を持っているのではないか。自身が扱う情報の精度を気にしてし過ぎることはない。

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