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中堅私大の社会連携のススメ 関東学院大学規矩大義学長インタビュー

本誌編集長 山口 泰博

2020年07月15日

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関東学院大学の規矩大義(きくひろよし)学長は、大学経営トップでありながら、経営の舵取りに加え、教員として教育や研究、そして社会連携や産学連携活動もこなす。企業出身だからこそ見えてくる研究と人材育成、連携などの私大の在り方をうかがった。

神奈川県横浜市金沢区に本部を置く関東学院大学は、1884年に横浜・山手で創立された横浜バプテスト神学校を源流とする伝統ある大学だ。136年経た今では、国際文化学部、社会学部、法学部、経済学部、経営学部、理工学部、建築・環境学部、人間共生学部、教育学部、栄養学部、看護学部と研究科を擁し、学生数は1万1000人ほどで総合大学として私大中堅の一角を成す。

コロナ対応で大わらわ

話をうかがったのは、コロナで緊急事態宣言が出される前だった。全国の大学では、休校に差し掛かり授業の在り方が模索されている最中だ。全学部全学科の授業をオンラインに変え、その対応で全学が思考錯誤していた。しかし全ての授業を動画で制作し配信するのは無理だという。

インターネットを通じて、eラーニングを配信するプラットフォーム学習管理システムのLMS(Learning Management System)を使用し、学生に課題を提示、添削することを中心にし、その一部に画像をはめ込んだり、パワポに説明動画をはめ込むなど90分フル動画にしない教材を急きょ作成し授業をスタートさせたばかりだった。

LMSを使えば受講者と教材、進捗の管理、受講者への講座割り当てといった学習管理が可能だ。一方通行にならないようアンケートやディスカッションもでき、コミュニケーションを促す機能も搭載している。アクセスが集中しサーバーがパンクしないよう生配信にしなかった。

しかし問題も浮上してきた。全ての学生がパソコンを持っているわけではない。情報環境が自宅に整っていない学生にはパソコンを貸し出すなどの支援を行った。どんな問題が生じるか見通せないこともあり、2週間単位で見直すことにした。いずれにしても、夏休みは短くせざるを得ない。

移動制限がある中、普段なら企業に予約して使ってもらうべき大学保有の実験装置も空いている。空いているからこそ使ってもらいたいが、使用を控えてもらうことにした。貸し出すことで人の移動が起こるからだ。教育の現場では奮闘が続く。

規矩大義 学長
規矩大義 学長

収益事業の歴史

「産官学」連携は、旧制の関東学院工業専門学校時代にさかのぼる。当時学内には実習工場を設置していた。現在まで続く伝統でもある。「大学には工場があって、夜間の学生がその工場で働き、その給料で大学に通う。そんな歴史がありました。収益事業をやっていい。そんな学風が備わっていて、キリスト教がベースとなる慈善事業が目的でした」と規矩学長が言うように、校訓に「奉仕」を掲げ、社会に還元できる研究活動を推進するために、学内外と連携は、大学のDNAの中に記憶され、外部企業との連携は創立時からごく当たり前に続いていたという。

研究は最先端ばかりではない

―G 型大学かL 型大学か、その言葉が注目を集めた時期がある。「第1 回まち・ひと・しごと創生会議」において経済活動で捉えたとき、世界を見据えた「G(グローバル)」と地域ごとの経済循環で捉える「L(ローカル)」の二つの視点で分類した。その考え方を日本の大学にも置き換えるべく「第1 回実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」では、大学を、グローバル・エリートを育成する「G 型大学」と職業訓練や社会に出たときを想定した実学を主に地域の労働者を育成する「L 型大学」に改編すべきとの考えに基づく。G 型は研究重点大学で、最先端技術などで世界に通じる研究分野の人材を育成する。

規矩学長 私が着任した20年ほど前は、そんな取り組みから遠ざかっていました。当時、社会科学系の教員は、自主独立研究が多く大学組織として、社会に打って出ようとしたときに、研究なのか教育なのか悩ましい問題がありました。

L型かG型か注目も集めた時期がありますが、研究を前面に押し出そうとしたとき、最先端ばかりを研究するのは現時点では難しい。全員が最先端の研究ができるわけではないからです。ならば、本学では教育に活用できる研究へと基軸を据えたほうがいいのではとなりました。その方向で10年ほど前から徐々に進めてきたのです。

―科学技術基本法が変わりますが、法が変わることで大学として変わることはありますか?

規矩学長 3.11(東日本大震災)を機に地震防災を研究してきた者として、純粋な理系の考え方だけで、防災や復興を研究できるのか…建造物を直すことや土地を残すなどの課題を、理系だけで進めていいものかとそんな思いがすごくありました。一方で、復興を進めていくとき事務官みたいな人たちがわーっと入ってきて理系とは相入れない計画ができることもあります。そして学内でも同様の声が挙がり始めたことから、文部科学省の私立大学研究ブランディング事業に応募することにしました。当時は純粋に表面工学分野だけで応募しましたが不採択でした。そこで、待てよと考え直しました。オール関東学院大学でやるべきではとなり、防災・減災・復興学という新しい学問を作ろう、そんな思いで応募すると平成29(2017)年度に採択されたのです。そこで人文・社会科学系がどんなふうにコミットできるかトライしました。

―しかし2019年で打ち切りになりましたね。助成がなくなるとプロジェクトもシュリンクすることもありますが。文系の先生方はどのように。

規矩学長 防災・減災・復興学といえば、土木か建築が定番でしたが学部から代表者を参加させるのではなく経済や文学、看護学など全学部から関われそうな先生方を一本釣りで声を掛け集まってもらい、三つの柱を設け、学際的研究に取り掛かりました。答えが出なくてもとにかくやってみよう。そんな思いです。すると文系の先生方からも自分たちの研究がこんなことに役立つ、貢献できるという声が出始めました。そして前向きな意見が増え始めてきました。防災関連だと、自治体の経済局のような部署から経済の先生が依頼を受けて研究する事例はよくありますが、建設関連の部署だと文系の先生の個人ネットワークやモチベーションだけでは関与しにくいですよね。

―学長が考える産学連携は?

規矩学長 国公立の大学や、大手の私大のように大きなファンドで大きなプロジェクトを展開するのは本学の規模では難しい。多くの私大は、教育にどれだけ貢献できるかが判断基準にならざるを得ません。それと教員の特性にも依存します。だから、産学連携は決して、産業界のためだけに存在しているわけではありません。企業のニーズに貢献することは前提としてあるのは当然ですが、先生方には教育にどう貢献できるかも考えてほしいですね。直接的に無理でも学生が積極的に関与できる産学連携です。プロジェクトを大学院生が生で見ることができ体験できるように。そこに学部横断、大学間連携が噛み合えばもっといい。

―理系は論文にしやすいようですが文系は論文にできますか。

規矩学長 文系は論文にしにくいわけではなく、書籍にまとめることに主眼が置かれているからでしょう。レポートでもいいのでペーパーとなり外に出ていくことは大事です。私は社会連携教育と言っているのですが、企業や地域とは多種多様なプロジェクトが可能です。特に文系のテーマの中には、学生参加という大きな期待が持てるものがたくさんあります。

社会に教育を頼むのは手抜き、大学が社会に貢献しますはうぬぼれ

―社会連携や地域連携、産学連携と言葉がたくさんありますが微妙に意味が違いますね。世間には非常に分かりにくいですが。

規矩学長 社会連携と産学連携は似たようなイメージですが、社会に学生の教育を一部だけお願いしますと言うのは、大学と学生の手抜きです。大学が社会に貢献しますというのはうぬぼれです。社会にとって、18歳そこそこの学生とコンビを組んでできることはたいしたことではありません。だけど社会連携活動の場で、知識や能力の乏しさに気付くはずです。学生がそう意識することで、やはり大学の授業で学ばなくては、社会に出たときに役に立てないと感じてほしいのです。活動を通じて対応力が身に付いていくのだから、実社会に出る前に経験してほしいのです。進路を決める上で、もっと勉強しなければと思うきっかけになればいいのです。その課程で企業や地域も、学生が参加することで、「こんな発想が」、「こんなアイデアがあるのか」と思ってもらえたらもっといいですね。しかし企業も大学と組んだからコストをかけずに必ずいい結果が出ると思われても困ります。ウインウインで互いに知恵を出し合わなくてはなりません。私たちの目標は、課題の答えが出るのではなく、持続的社会から答えを導き出す課程で横から学んでいる学生が次のネタを考えられるように、次の貢献ができるように学生を育てながら社会産学連携教育と研究を実践する... これが中堅私大の使命なのではないでしょうか。

規矩大義 学長

―学生数1万人以上の総合大学、可能性が広がりそうですが。

規矩学長 まさに今は、土木(建築・環境学部)と看護学部の教員が組んで、トリアージの考え方を地震防災の現場で生かせないか検討しています。トリアージとは、患者の重症度に基づいて治療の優先度を決定して選別を行うことで、看護の現場で防災に関わる際にこのトリアージを基に看護活動を展開します。トリアージを知らない建築・環境学部には新しい発見がありました。

―どんな組織体制なのでしょうか。

規矩学長 窓口は二つあって、街づくりなどざっくりしたニーズがテーマの場合は、社会連携センターで、研究に対する具体的なイメージが見えるものは総合研究推進機構です。社会連携センターは、研究分野のニーズを結びつける窓口として2014年4月に開設しました。総合研究推進機構は、研究の推進や向上、そして研究を通し本学の社会的使命の達成を目的としています。科研費や補助金といった競争的外部資金を獲得するときの、研究、教員のサポート役です。そして学内のシーズと学外のニーズをつなぎ産学連携、知的財産の管理や運用も担っています。

―学外からすると一本化してもいいのでは。

規矩学長 隣接した部門なので場所も隣同士で常に連携していますよ。風通しも良く、打率は非常にいいですよ。

―URA やコーディネーターは。

規矩学長 本学は、国立大や大手私大のようにURAを何十人も雇えません(笑)。URA兼コーディネーターのような役割の人材は実は、学内の職員に適任者がいます。先生方の研究内容や特性(人がら)を熟知するURAがいて、うまくマッチングさせてくれます。

―関東学院大学は、どのような産学連携を目指しますか? 学長の考えを聞かせてください。

規矩学長 地域なのか研究なのか考え方はいろいろありますが、企業や社会の求めを満たしつつも、学生が関われるのがポイントです。教育と人間形成につながるからです。関わった学生は、必ずあなた方の業界や会社、地域に役に立つ人間になりますよと言えるようにね。

規矩大義 学長

すごく働く学長そして異端

―すごく働く学長と小耳に挟んでいたのですが、エフォートはどのような配分ですか。

規矩学長 100を200にできればいいのですがね。ドクター1人、マスター9人、学部生10人の研究室を持っていて、授業は学部3コマ、大学院1コマです。それなりに結構な時間が必要です。

―それに加えて、学長という経営トップとして大学経営を見ながら、研究と産学連携も実践されています。

規矩学長 9時から17時を100とすると、150くらいがベースの仕事で、50くらいが研究や産学連携活動でしょうか。8時出勤で23時退勤ですね。

―働き方改革からするといけませんね。

規矩学長 絶対ダメですよ。怒られます。自分が好きで自主的にしていることで、他の職員や先生方はまねしてはいけません(笑)。

―企業を経験して大学へ来られたことは大きいですか。

規矩学長 それは大きかったですね。佐藤工業(中央技術研究所)はゼネコンなので純粋な研究は20%、現場の技術対応が80%ほどでした。大学は決断が遅いし、決まっても2年後ですか? みたいなことがありました。今日決めたら明日からやればいいじゃないかと思うことはよくありましたよ。でもそれが難しい。今までこうしてきたからまた同じことをするようなことが多くて。新しいことをするのになかなか踏ん切りがつかない。そこは企業文化と違うなと感じた部分です。しかし大学側から見れば私は異端かも知れません。

大学発ベンチャーの草分け

産学連携や大学発ベンチャーの草分けとして知られる「材料・表面工学研究所(材表研)」(湘南・小田原キャンパス内)は、1954年に世界で初めてプラスチック表面にめっき加工を可能にした。その技術が、バンパーやプリント基板など自動車部品に採用され軽量化を後押しし、燃費向上にも役立ってきた。

1946(昭和21)年 関東学院工業専門学校(現関東学院大学)の実習工場として実習のかたわら営業開始した関東化成工業株式会社だが、事業拡大に伴い関東学院から分離独立した。「めっき」などの表面処理技術の研究開発と実用化で自動車メーカーをはじめ国内外で実績を積み重ねてきた。

文部科学省が毎年発表する「大学等における産学連携等実施状況について」では、特許権実施等件数、知的財産権等収入、特許権実施等収入、研究者1人当たりの特許権実施等収入額で常に上位に名を連ねる。

JR関内駅前に横浜・関内キャンパス
社会連携も加速

横浜市は、横浜駅周辺、横浜みなとみらい21(MM21)地区、関内・関外地区と北から南に連なる横浜都心を形成し、「THE YOKOHAMA」と言えばこれらのエリアだろう。

関東学院大学は、関内地区に広報活動、学会・研究会や卒業生の会合、さらに横浜地区を中心とした企業や行政などによる催し物など多目的に利用するKGU関内メディアセンターが稼働している。

さらに、2022年4月に横浜市都心部のJR関内駅前(横浜市教育文化センター跡地)に新しく横浜・関内キャンパス*1(仮称)を開設する予定だ。

横浜・関内キャンパスの全景イメージ
横浜・関内キャンパスの全景イメージ

規矩学長が述べているように、企業や自治体などと連携した社会連携教育に熱心に取り組む。横浜・金沢八景キャンパスに置く法学部法学科、地域創生学科、経営学部経営学科、人間共生学部 コミュニケーション学科は文系でも特に積極的で親和性の高いことからこの新キャンパスに移転させる計画だ。

国際都市、港湾都市、行政や商業の中心地で観光と文化資源も豊富な関内・関外地区で、地域、企業、自治体などと連携した社会連携教育をさらに高めることが狙いだ。

それらの大学の教育施設の機能だけでなく、ホール、ギャラリー、コワーキングスペースなども設置し、一般利用も想定。地域との連携にも一役買いそうだ。さらに市民向けの社会人教育プログラムも計画し、立地を最大限に生かそうとしている。

横浜・関内キャンパスの断面イメージ
横浜・関内キャンパスの断面イメージ

横浜中心部に集結する横浜関学、神大、横市、横国

MM21地区には、2021年4月に神奈川大学が、地上21階、地下1階の「みなとみらいキャンパス」を新設する。横浜市立大学(金沢区)は、新設の「データサイエンス研究科」の大学院や社会人向けの教育プログラムを行う目的で2020年4月、MM21地区の横浜ランドマークタワー内にサテライトキャンパスを開設した。さらに横浜国立大学は10月にも関内地区にサテライトキャンパスを新設する。企業との連携を加速させたい構えだ。

今年から2022年にかけて関内とMM21地区の横浜市中心部へ相次いで大学の進出ラッシュの様相を呈している。

―キャンパスを移転するには大きなハードルがありそうですね。

規矩学長 関内移転は、学生募集の側面もあるものの社会連携を推進するには人が集まりやすい利便性の高い立地は欠かせません。これまでは大規模大学の神大さんを追いかけるようなところもありましたが、これを機にさらに大学連携が進展することも期待しています。

規矩学長 これまで見てきて感じるのは、拙速に時代の波に合わせても研究は10年一区切りだということです。いらないと思っても10年後に必要だった。そんなことはよくあることです。だからこれまで培ってきた教育や研究は大事にしていかなくてはなりません。仮に弱い部分があるなら学外とコラボして補えばいい。

今ある学部や研究に光が当たるようにしなくては。経済・経営が強い時期もあれば、理系が強い時期もあります。決してどちらか一方が独り勝ちするようなことはありません。時代の波に乗る必要はないのです。受験生が学部を選ぶとき、景気がいいと文系が人気で、悪いと理系が人気です。一生で考えたら、波に惑わされることはないですよ。自分のやりたいことをすればいいのに。学部で人生が決まるわけではありません。

―大学の研究で売りとなるのは何でしょう。

規矩学長 材表研のめっき以外では防災・減災・復興学です。材表研では業界を束ねて特許を取って活用する。オープンにすることで業界の発展が期待できます。1社が独占すると広がりません。企業と開発した技術を、大学が単願で特許を取らせてもらって、非常に安い実施料で中小企業に使ってもらうスキームです。そして次の技術開発を続けていけるのです。これをおよそ50年やってきました。大学は、特許の維持費と研究ができればいいので、その費用だけ賄うことができればよくて、ビジネスで儲けようという気はありません。

防災・減災・復興学は、防災工学と同じと思われがちですが、そこに人文社会も交えて発展させてきました。この二つが大きな柱です。もう一つは社会連携です。経営学部のK-biz(ケービズ)は、社会連携を効果的に行うためのプラットフォームです。全国の企業が課題を持ち寄って、学生が課題解決のお手伝いをする。

―喫緊の課題は。

規矩学長 改組を随分と実施してきました。しかし最もやらなくてはならないのはFD(FacultyDevelopment)です。学生が感じる大学教育の満足度を高めなくては。それが大学のバロメーターです。

―顧客満足度。

規矩学長 すごい先生がいるとか、有名人がいるとか…、それはそれでいいのですが、最終的には学生にコントリビュート(貢献する)してくださいねとお願いします。研究が得意で授業が少しばかり苦手でも、教養や知識では学生を圧倒的に凌駕(りょうが)し尊敬される先生はおられると思います。

―私大の社会連携産学連携はどうあるべきでしょう。

規矩学長 最近はSDGsが流行りです。これはものすごく大きなテーマですよね。一大学ができることは限られています。しかし社会には、そのヒントは山のように転がっています。企業が求めるニーズは、それらを汲み取る必要がありますが、大学が取り組む課題は、社会全体に貢献する人材を育成です。そのことを分かっていることが大前提です。

大学教員は地域から声が掛からなくなったらおしまい

―私大文系の教員はどうすればいいでしょう。

規矩学長 学内でもよく話すのですが、「俺らは関係ない」と考える人もいます。例えば科研費はどの分野にでもありますが文系は、企業からのニーズはきわめて限られています。自分たちの研究が国に社会に…と言うより、人に対してどんな影響を与えられるか、必ずニーズを持っている人はいると思うのです。一人でできなければ、他分野の先生と共同で取り組む方法もあります。そんな視点で、そんな研究をして、声の掛かる先生であってほしい一方、自分の研究と教育をリンクさせて、研究すればするほど学生への教育レベルも上がるようにしてほしいと思います。一生かけて世界に通じる先端研究をする人もいます。注力すべきことです。大学全体で最先端技術の革新的研究を推進する道もあります。一部の私大はそれでいいのかもしれませんが、本学は、人材の育成で社会を支えることが最も重要な役割で、将来にわたって技術革新できる人材を育てることが重要ではないかと思うのです。プロ野球は、少年野球から始まって裾野が広いでしょう。

―研究も教育も産学連携活動をする学長は少ないですね。産学連携施策は、つまるところ学長の考え方で変わるように思うのですが。

規矩学長 つまるところ「フットワーク」ですね。大学の利益ばかり主張していても産学連携は進みません。ビッグプロジェクトばかり狙っていても、そんなに頻繁に実現できません。どんなものでもいいから地域と関われるならやってくださいと。大学教員が、地域社会から声が掛からなくなったらおしまいです。社会連携は文系も理系も関わるチャンスはたくさんあるのですから。

サインするだけの協定はしない

―協定を結んでノーアクションというところもありますが。

規矩学長 法学部に地域創生学科があり、法律社会の仕組みをベースにした連携を多く実施しています。現在では20の自治体で協定を結んでいますが、サインするだけの協定ならやめましょうと言っています。テーマが明確でやるべきことがある程度見えているなら協定を結ぶことにしています。横須賀市では市議会とも協定を結んでいて珍しい協定です。これも差別化と言えるのではないでしょうか。

―研究については?

規矩学長 研究するのは当たり前のことで、それを社会なのか学生になのか教育なのか、何にフィードバックするかでしょう。昔は研究者になりたいから研究職に就いた、その代償として授業をやっている。そんな先生も少なからずいました。関東学院は、研究だけで一丁上がりではありませんよ。

―ありがとうございました。

同大学は三浦地域では関学、横浜周辺では関東と呼ばれるという。エリアによって略称が異なることを初めて知った。社会の要請に応えてきた私大として、これを機に横浜を前面に押し出し、横浜・関学や横浜・関大など全国的な統一の略称が必要な気がした。

「学長のリーダーシップの下」大学が発信する広報に踊る言葉だ。広報文などのように自ら発信する文書ほど、本当にリーダーシップを発揮しているのだろうかと推し計ってしまことがあるが、学長とお会いして、すぐに行動に移すフットワークの良さを感じた。これこそがリーダーシップなのだと。

*1:
地下2階・地上17階、延べ床面積は2万5221m、大学機能は6~17階。地下1階と1階にエントランス・ブックカフェ・スポーツ施設、2、3階にホール・ギャラリー、4階にマッチングオフィス・コワーキングスペース、5階デジタル図書館。地下1階~地上5階は一般開放のほか市民向けの社会人教育プログラムなども。
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