巻頭言

安全を科学し“安心”を創造する

株式会社千代田テクノル 代表取締役会長兼社長/一般財団法人放射線利用振興協会 理事長 細田 敏和

写真:株式会社千代田テクノル 代表取締役会長兼社長/放射線利用振興協会 理事長 細田 敏和

2020年07月15日

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今年上期のニュースの大半は、「新型コロナウイルス」関連が占めました。

新型コロナウイルスの感染予防には、手洗い、うがい、マスク着用の励行と「三密」を避けることが有効とされていますが、これは放射性物質の汚染防止・放射線防護の考え方とよく似ています。

放射性物質の汚染防止のためにはゴム手袋、吸入防止のためには防護マスクを着用します。

三密は、「密閉」、「密集」、「密接」ですが、放射線の場合には、放射線防護の3原則=「時間」、「遮蔽(しゃへい)」、「距離」があります。

新型コロナウイルスは、ウイルスがどこに付着しているかが分からないことと、ウイルス保有者も見た目には分からないこと、新型コロナウイルスの性状がまだ完全に解明されていないこと、感染して重症化するスピードが早く既往症との合併症で死亡に至ることが多いことから、人々に恐怖を与えています。

一方、放射線・放射性物質(放射能)も目に見えずよく分からないから怖いし不安だと言われていましたが、今は放射線の発生源(汚染場所を含む)は、測定器で簡単に検知できます。

新型コロナウイルスも放射線と同じように、ウイルス保有者や付着している所が検知できるようになれば良いのですが… また一日も早くワクチンができて安心して生活できるよう願うのみです。

放射線の場合は、被ばく線量や、集積線量によって障害発生の可能性があります。

2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故で福島県内の比較的放射能汚染度が低い地域に避難された方々を対象に、2011年7月から住民の方々の放射線被ばく線量を「ガラスバッジ」で測定を開始して、ピーク時には、29.5万人の方々が「ガラスバッジ」を着用しました。現在までに総測定数は300万件を超えています。

また、地域・住宅の除染が終わり汚染基準値以下となり、避難指示が解除され帰宅された方々についても、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のご協力で、国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)と共同開発した長期間(400日間=世界初)電池で測定できる被ばく測定器「D-シャトル」を着用していただき安全を確認しています。

過去に起きた米国のスリーマイル島原発事故(1979年3月28日)、ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)でも一般住民が専用の被ばく線量計で放射線被ばく線量を測定した例はありません。日本が初めてです。

今後福島県の住民の方々が、がんなどに罹患(りかん)された時には被ばく線量値との関連調査がなされるでしょう。

国に働き掛けて自治体と共にこれらの貴重なデータを解析して後世に伝えられるようにしたいと願っています。

写真1
市民線量計「ガラスバッジ」
写真2
帰還者用線量計「D -シャトル」

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