リポート

立命館大学事業継承塾の産学連携による新展開

立命館大学事業継承塾 副塾長/教授 守屋 貴司

写真:立命館大学事業継承塾 副塾長/教授 守屋 貴司

2020年06月15日

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事業継承塾の発足の背景と経緯

日本においては、中小企業の経営者の高齢化が急速に進展し、後継者がなく事業廃業をするケースが増えると同時に、後継者のない事業体のM&Aによる事業継承も組織的かつ急速に進みつつある。また、広くアジア諸国においても、事業継承問題は多くの中小企業にとって死活問題となっており、深刻な社会問題にもなりつつある。

このような時代背景の中、立命館大学経営学部・大学院経営学研究科(大阪府茨木市)と大阪府中小企業家同友会が2018年5月22日、茨木市の本学大阪いばらきキャンパスで、人材育成や教育・研究活動の推進、地域経済の発展を目的とした連携協力に関する協定を締結した。そして後継者難から社会問題化している事業継承(承継)についての課外プログラム「立命館大学事業継承塾」を開設した。

これまで経営者が築いてきた企業価値を、次の世代に円滑に引き継ぐための教育が極めて重要な課題となっていると認識し、将来親族の事業を継承し発展を志す有為な人材や中小企業に関心ある人材の育成が必要である。これにより日本のみならず東アジア全域の経済を支える経営者を育成することを目指している。

また、本学経営学部教授会の議論において、受講生が、事業承継を前提とした事業相続の教育のみを行うのではない。将来、承継しようとする事業(会社など)の従業員による事業継承やM&A、廃業まで含めて考える機会を与えると同時に、親から子への企業価値-経営哲学の継承、事業(会社等)の技能継承や文化継承、そして、地域における大きな役割(地域雇用の継承、地域活性化や地域経済を支え、地域を変革する主体としての中小企業ネットワークの継承など)までも含めて学ぶことを教育の目的として設定した。

それ故、本学経営学部では、事業承継塾ではなく、あえて、文化継承、技能継承、企業価値の継承、企業哲学の継承、地域の雇用継承、中小企業の地域のネットワーク継承などの様々な意味を込めて、立命館大学事業継承塾とした。

連携協力協定締結式

立命館大学事業継承塾の内容と展開

立命館大学事業継承塾は、1年単位の課外教育プログラムであると同時に、1回生から4回生までの学部生と、経営学研究科前期課程の1回生から後期課程の3回生までの大学院生によって構成される。経営学部長を塾長とし、経営学部教授3人、講師1人の副塾長からなる教育指導体制をとる課外の教育組織である。

まず、2018年度秋学期より大阪府中小企業家同友会より「特殊講義:大阪府中小企業家同友会寄附講座―中小企業経営実践―」を経営学研究科の正課科目として開講し、大阪府中小企業家同友会を代表する経営者13人がゲストスピーカーとして、日本の中小企業運動の現状と課題、各企業の経営革新や事業承継事例について、とても興味深い講義が展開された。本講義を、立命館大学事業継承塾生が積極的に受講し、多くの学びを得るようになった。同寄附講座は、毎年開催し、2020年度からは、本学大学院経営学研究科から同経営学部で開講されることとなっている。また、2018年度には、大阪府中小企業家同友会より優れた経営者を招聘(しょうへい)し、講演会も展開し、立命館大学事業継承塾生より好評を博した。

2019年度は2018年度に続き、4月に立命館大学事業継承塾の募集を行い、約40人のメンバーが集まった。2019年度は、大阪府中小企業家同友会と連携して、まず、現在の日本の中小企業の課題として最も大きな課題である「人材不足・人材難」について、大学生の目線からいかに解決をすべきかを立命館大学事業継承塾生がチームに分かれて、地元の中小企業の調査・研究を行い、7月に「中小企業課題解決コンテスト」を実施した。また、2019年度の秋学期は、自ら承継する可能性のある関西の伝統産業などの中小企業の事業承継に関する記録として、それぞれの会社の社史を作成してもらい、それについて分析をし、2019年の12月に社史コンテストを実施した。社史コンテストでは、大阪府中小企業家同友会の代表理事を審査委員として招聘し、大会当日、同代表理事より貴重なコメントをいただくことができた。社史コンテストの入賞作品については、「立命館大学事業継承塾作品集」として、教育成果報告書を作成することができた。また、2019年度には、立命館大学事業継承塾主催で、本学経営学部校友会会長で老舗企業の社長の講演や京都府中小企業団体中央会副会長の講演をいただくことができた。

2020年度4月より、立命館大学事業継承塾と産業界との産学連携をより深めるために、立命館大学事業継承塾アドバイザリーボードを設置し、大阪府中小企業家同友会代表、本学経営学部校友会、京都府中小企業団体中央会と諸団体の代表と近江商人に起源を持つ、創業150年のツカキグループ代表取締役社長の塚本喜左衛門氏、シダックスビューティケアマネジメント株式会社社長の林伸光氏の5人の方々に、アドバイザリーボードを依頼し、サポートをお願いすることができた。立命館大学事業継承塾のアドバイザリーボードは、年1回程度開催し、立命館大学事業継承塾の産学連携について提言いただくと同時に、立命館大学事業継承塾の運営責任者である副塾長からの相談事に、個別にアドバイスをいただくことになっている。

社史コンテストの様子

立命館大学事業継承塾の問題点・打開策と未来への展望

立命館大学事業継承塾は、課外教育活動であるため単位にもならず、塾生の学生にとって、正課科目履修の上に、教育・研究を行う必要がある。それゆえ、課外教育課題を正課の科目履修でサポートできる仕組み作りが重要である。2020年度は、社史コンテストに対応して、社史の作成指導を受けるプロジェクト演習を設定し、そこで、社史作りの教育・研究指導を受けて作成することとなった。しかし、2020年春学期の中小企業課題解決コンテストに対応した正課科目は、設定できていない。

それだけに、本学の事業継承教育プログラムの未来への展望としては、立命館大学事業継承塾に対応した正規のインテンシブ・プログラム「事業継承(承継)教育プログラム」を大学経営学部の正課科目の中に作ることが、立命館大学事業継承塾生や運営する教授陣の念願であり、今後の目標ともなっている。経営学部のインテンシブ・プログラム「事業継承(承継)教育プログラム」では、基礎科目として、「仮称 事業継承(承継)概論」を学び、事業継承に関わる基礎知識を獲得しつつ、「特殊講義:大阪府中小企業家同友会寄附講座―中小企業経営実践―」で、優れた同友会の経営者の生の声からの事業継承事例や経営事例を学ぶことになる。その上で、立命館大学事業継承塾の「中小企業課題解決コンテスト」や「社史コンテスト」に対応して、プロジェクト演習などの科目設定し、正課科目で、コンテストに対応した研究指導が行われることを望んでいる。また、これまでの既存科目の中より、履修した方が望ましい専門科目(中小企業論、生産システム論、人的資源管理論)などを履修するように奨励し、一連の指定科目を履修した学生に対して、「事業継承(承継)教育プログラム履修」の認定を行うことを構想している。

2020年6月目次

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