特集地域の商品をブランドにするヒント

産学連携で生まれた商品での大学名表記

愛媛大学 社会連携推進機構 准教授 秋丸 國廣

写真:愛媛大学 社会連携推進機構 准教授 秋丸 國廣

2020年06月15日

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産学連携活動の一つの成果として,愛媛大学だけでなく全国的にも実用化された製品事例が増え、それに伴い製品への大学名称の表示も増えてきている。ここでは、製品化事例それぞれにおいて、大学名称がどのように使用されているかについて、愛媛大学を例に情報を整理し、課題について考えてみたい。

大学が製品保証したかのような表記も

愛媛大学で2014(平成26)年度から2018(平成30)年度までに製品化されたもの14件について、大学名がどのように表示されているかを調べたところ、多くの事例で商品パッケージや製品紹介ホームページなどで大学名が表示されていた**1。その表示内訳は、「共同研究」3件、「共同開発」5件、「教授推薦」1件、「大学監修」1件で、学章やブランドマーク、ロゴタイプを使用したものが5件あった(表1)。2015(平成27)年に製品化された一例において、「営利目的の使用であるが、産学連携活動の成果としての製品化」として意義が認められ、ブランドマーク・ロゴタイプの使用が許可され、以降の扱いの先例となった。

大学には一般の方から製品についての問い合わせが入ることがある。愛媛大学が研究した製品を入手したいという趣旨であり、確認したところある飲食品製造会社のホームページに「〇〇の研究が愛媛大学で行われ」などと表記されていた。確かにその数年前に共同研究実績はあったが、製品化された食品を動物へ長期投与したときの影響を確認した程度であるにもかかわらず、製品の健康機能を大学が研究したかのように捉えられる表記もあった。また、「副作用も安心」の表記については、大学は製品を保証することはないため、誤った表記といえる。先の製品化事例とは異なり、大学として未確認の製品PRがあるという一例であり、どうマネジメントするか、リスクをどう捉えるかは組織的課題である。

表1  愛媛大学産学連携活動による製品化における大学名表示実態
表1

製品開発に関わったような不明瞭な表記も

文部科学省産学官連携実績報告における実用化事例は2014(平成26)年以降から事例掲載が多くなった。2017(平成29)、2018(平成30)年度報告事例について参照リンクなどにある企業ホームページ内の製品紹介から大学名表記を確認したところ、国立大学から報告のあった実用化事例107件のうち、40件において大学名が記載されていた(図1)。表示の内訳は、「共同研究を実施」や「共同研究の成果」のように「共同研究」の表記が11件(27%)、「共同開発」は16件(40%)、大学ブランド商品が7件(17%)、商標を含むライセンスが3件(8%)商標を含むライセンスが3件であった。「共同開発」のうち、大学が関与した技術開発などの事実の表記である特許技術や製造に関する技術の開発を意図して示されていたものは10件であるが、残りの6件は単に「共同開発」や「大学と開発」としたものであり、製品開発に関わったと捉えられるやや不明瞭な表記である。

図1
図1 実用化事例における大学名表示*1

許可を得ずに名称使用―大学名表記と製造物責任

増加しつつある実用化製品事例における大学名表記で、「大学と共同開発」との表示も散見されるようになったし、大学へ許可を得ずに名称使用されている例もあり、産学連携従事者の頭を悩ませる課題になっている。

そもそも共同研究の成果として大学名を表記することは何が問題であろうか。そこで、製造物責任法の解説文献を引用したい。「製造物責任法における責任主体」(朝見行弘著、国民生活2012年12月号)に、「表示製造業者」の説明として、自ら製造者として表示をした者のほか「当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者」とあり、そのような表示により「消費者に対して製造物に関する信頼を与えていることから、製造物責任法に基づく製造物責任を負うべき」とされている。

つまり、共同研究の成果である商品の製品パッケージなどに「大学が開発」と記載され、消費者が大学は製造業者と同等に関与したと誤認するような場合は、法的には開発者として製造者と同様に製造物責任を負うことになる。昨今、共同研究などの実施において大学が製品開発に関わる事例が増えており、大学名表記についてリスク管理を検討する理由がここにある。

産学連携表示についてのガイドライン

愛媛大学では、商品化事例において「大学と共同開発」と表記され、なおかつ学章・ブランドマークの使用が許可されている案件があり、このことから製造物責任が及ぶ懸念が高まった。そこで、製品化の際に事実のみを正確に表示するための最低限のルールとして、産学連携表示についてのガイドラインを作成した(「愛媛大学における産学連携で生まれた商品の包装やカタログ等への産学連携表示についてのガイドライン」2019「平成31年」3月28日)。そのポイントは、以下の事項である。

  • ①産学連携の実績、事実(共同研究・受託研究の実績、学術指導の実施、ライセンス契約等)があること
  • ② 大学が製造物責任を負う部分が基本的にないこと(「共同開発」等の文言は、製造物責任に及ぶ可能性があり適切でない)
  • ③社会的に不適切な表示がないこと、事実誤認が生じる可能性がないこと
  • ④愛媛大学教職員の顔写真、イラストや映像等の掲載は避けること

本ガイドラインに基づき、大学名称などの表示を希望する企業からは「産学連携表示許可申請」を提出することとした。本ガイドライン制定後関与した大学研究者から製品における大学名などの表記について問い合わせが入るようになった。うち1件において製品チラシに「大学と共同開発」との表現があり、相談後「愛媛大学の技術シーズを基に開発」と修正することになった。2019(令和元)年度末現在で7件の表示許可申請があったが、それらのほとんどは申請がなければ産学連携部署で把握できなかったものであり、大学として実用化事例の把握もできるようになったことは、リスクマネジメント上大きな成果と言える。

共同研究成果の企業利用は、共同研究契約にその扱いを定めることが通例であるが、実用化に至ったときには企業から製品などへの名称使用の許可申請があることを想定して、担当部署を明確化し、学内規定による対応ルールを定めるなどの組織的リスクマネジメントを行うことが望ましい。

製品パッケージや製品PRチラシなどに大学名を表示することが求められたら、一般消費者へ与える印象と事故発生時の責任訴求を考慮の上、表示の目的、表示の内容、大学との連携状況などを確認すべきである。企業と連携した開発商品では、大学名の表示はブランド表示のような効果があると思われるが、教育研究活動の成果の製品化である場合、不要な責任を負わないようにすることと負うべき責任の所在を明確にするとともに、法的責任を負うことになった場合の対応をあらかじめ検討しておくことが必要である*2

参考文献

**1:
秋丸國廣.産学連携で開発した製品における大学名表示に関する考察.産学連携学会 関西中・四国支部第11回研究・事例発表会.2019年12月.
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*1:
文部科学省産学官連携実績報告における「産学官連携活動の主な実用化事例」(平成29,30 年度)に掲載の国立大学法人事例107 件について大学名表示を確認した。40 件で大学名表示があった。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/sangaku/sangakub.htm,(accessed 2020-06-15)
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*2:
大学の研究成果等を使ったブランド商品において、大学が製造もしくは企業へ委託製造をしている場合は、大学は製造物責任を負うべきであり、この場合の大学名称の表示は本編における議論とは趣旨が異なる。
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