リポート

釜石市と岩手大学の連携
~釜石市共同研究員の活動~

釜石市役所 産業振興部水産課 主任(岩手大学前共同研究員) 磯原 なつ美

写真:釜石市役所 産業振興部水産課 主任(岩手大学前共同研究員) 磯原 なつ美

2020年05月15日

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共同研究員とは

岩手県釜石市は岩手大学と2001年に相互友好協力協定を結び、東日本大震災による復興に係る連携をはじめ、これまで多くの分野で連携をしている。連携の代表例として、これまでに4名の市職員を岩手大学に常駐職員(以下、共同研究員という)として派遣をしている。2020年度現在、岩手大学では県内自治体3市3名の共同研究員を受け入れている。筆者は釜石市の共同研究員としては、4代目で、2018年4月より2年間派遣されていた。今年度より5代目となる職員が派遣されている。

共同研究員のミッション

釜石市共同研究員は、岩手県内(特に釜石地域)に係る産学官連携の強化、三陸復興に係る各種活動のコーディネート、地域課題の解決に向けて取り組んでいる。県内・釜石市の企業、地域、自治体や各団体の課題を把握し、その解決のために岩手大学の関係各所と協議・情報共有しながら大学の先生や専門家とのマッチングを行い、さらには共同研究のための外部資金の獲得を目指すことが主なミッションではあるが、釜石市共同研究員の活動内容は多岐にわたり、産学官連携のみならず、地域の課題解決や地域活性化に関わる内容であれば分野を問わず、その活動範囲は広い。

共同研究員の活動事例

①共同研究のサポート

これまで初代の共同研究員から、様々な産学官連携のサポートを行ってきている。例としては、高付加価値Co合金「コバリオン」の開発、冷蔵用スラリーアイスの研究、高台避難のための階段避難路用GFRP製床板の開発などが挙げられるが、筆者が派遣されていた期間においては、前任者から引き継いだ案件2件「市内水産加工会社×岩手大学農学部」、「市内企業×岩手大学人文社会科学部」および新規案件2件「市内企業×岩手大学人文社会科学部」、「市内企業×理工学部」の共同研究のサポートを行った。

②地域連携フォーラムの開催

2017年度、東日本大震災後初の「地域連携フォーラム in 釜石」を行った。本フォーラムの開催により震災によって途切れることがなく、岩手大学と釜石市を中心とした「産学官連携」「地域連携」活動が行われていることを広く伝えることができた。釜石市としても大学との連携強化のため、また、広く市内企業に周知をし、参加していただくことで、大学へのイメージを変えること、大学シーズの情報を発信することにより共同研究の推進も期待できることから、毎年フォーラムを開催することを希望した。そして2018年度と2019年度、釜石市民ホールTETTOにて、「地域連携フォーラム in 釜石」を継続して開催している。1回目のフォーラムとの違いは地元高校生と、釜石キャンパス水産システム学コースの学生の発表も可能な限り盛り込んだことである。

内容については、大学側と協議を重ね、大学側の意向と市の意向のヒアリングを行うことにより双方が納得できるフォーラムを目指している。

2019年度「岩手大学地域連携フォーラム in 釜石」での
共同研究員の発表の様子
2019年度「岩手大学地域連携フォーラム in 釜石」での
高校生発表者と岩手大学長記念撮影の様子
③行政と大学の連携

釜石市と岩手大学はこれまで様々な連携事業を行ってきたが、両機関共に人事異動や震災後の混乱から情報共有が十分にできなくなり、思うような関係構築や連携事業を継続することが難しくなっていた。この課題を解決するために、筆者は共同研究員という二面性を持つ立場を活用して、市関係部署と大学との調整と合意形成のため、市各課が大学と連携・相談したいときのワンストップ的な役割を積極的に行った。この役割を担うことで、市側が伝えたいことと、大学側が伝えたいことを整理して伝えることができ、円滑に議論の場を設けることができる。

活動の成果も見え、徐々に市役所内の各課からの問い合わせが多くなっており、共同研究員が窓口となりつなぐこと、場合によっては案件をサポートすることにより、連携の輪が広がっているように思う。

また、行政と大学の連携に関わって、大きな1歩が「岩手大学×釜石市連携ミーティング」の実施である。2001年度の協定締結を皮切りに、共同研究員の派遣、釜石サテライトの設置など、両機関は緊密な関係を構築してきた。2018年度秋には、農学部水産システム学コースの学生が釜石市に移住し、釜石キャンパスで学び始めるなど、連携も新たな段階に入り、地域の活性化、研究活動の推進、学生生活の充実が図られている。

一方、取り組みが多様化するということは、担当課のみで情報がとどまる可能性、いわゆる「情報のタコツボ化」となる可能性も潜んでいる。そこで多様な取り組みを両機関で共有し、顔の見える連携の強化を目的として大学側と市側との調整を行い、2019年12月に連携ミーティングを開催した。

今後は、定期的にその時の話題や両機関で検討していることや相談事(大小かかわらず)をざっくばらんに意見交換できる場としていくことで、大学と市との情報共有に加え、市としては課を超えての組織横断的な連携の強化、大学側としても上田キャンパスの職員・教員が、釜石キャンパスの情報を共有することができ、連携の質や幅も広がることが期待される。

④先行事例調査 ~愛媛大学と愛媛県愛南町の取り組み調査~

これは自身で考える現在の課題である「岩手大学と釜石市との継続した連携」について検討するため、調査を行ったものだ。地域に大学の水産研究センターを誘致した先行事例を調査することにより、釜石市における大学との連携体制を検討することを目的として調査を行った。調査内容としては、愛媛大学をはじめとして連携の主体となっている4機関にヒアリング調査を行った。

この調査により様々なキーワードを得ることができた。調査結果と考察を基に、釜石市と岩手大学でより良い連携体制を構築できるようにサポートしたいと考えた。「連携ミーティング」を開催できたことは成果 であると考える。

釜石市共同研究員の活動についてはこの他にも、大学や学生が地域活動する際のサポート、学会への参加、研修の講師や大学講義でのアドバイザーなど様々な活動をしている。

今後の展開

以上、共同研究員の活動の紹介を行ったが、過去の共同研究員の活動を振り返ると、共同研究員という市役所職員と大学職員という二面性を持つ立場が様々な連携を円滑なものとし、加えて元研究員と現研究員の情報共有により、持続的な連携につながっていることも確かである。今後は共同研究員OBが増え、市各課に存在することで、産学官連携の幅も広がり、企業のみならず地域全体と大学との連携につながり、持続的な連携体制が構築されていくことが期待できると考える。

これまでの共同研究員が培ってきた「繋がり」と現共同研究員がこれから係る方々の「繋がり」を意識しながら、持続可能な連携体制を構築していくことが共同研究員のミッションであると感じている。

最後に、大学と行政・地域の連携のための人材として共同研究員の派遣は今後も継続してほしいものである。

2020年5月目次

リポート
巻頭言
視点
編集後記