リポート

地方開催の「諏訪圏工業メッセ」はなぜ成功しているか
~魅力あるSUWAブランドの創造を目指して~

諏訪圏工業メッセ 実行委員会 事務局長 荒井 誠司

2020年05月15日

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時計、カメラ、オルゴールが技術の源泉

「魅力あるSUWAブランドの創造」を目指し、2002年から開催している「諏訪圏工業メッセ」(以下、メッセ)は、昨年で18回目を数える。

諏訪地域は、日本のほぼ中心に位置し、諏訪湖や八ヶ岳、霧ヶ峰高原など自然豊かで風光明媚(めいび)な環境で、人口が6市町村合わせて約20万人の地域である。製造業の事業所数(従業員4人以上)は約800社、「小型・軽量・薄い」の「省の技術」が特徴の企業集積を誇る国内有数の「ものづくり」の地域である。

かつては「東洋のスイス」とうたわれ、戦前の製糸産業が隆盛を極めた時代から戦時中の疎開企業と地元企業が一体となって発展し、精密機械工業の一大集積地となった。その当時の時計、カメラ、オルゴールなどの製造技術が現在の「超精密・微細加工の集積地」といわれる当地域の技術の源泉となっている。

バブル崩壊の1991年以降、減少の一途だった当地域の工業製品出荷額に大きな危機感を持ち「まずは諏訪地域の企業・技術を知っていただく」ことからと、地域が一丸となって展示会をスタートした。

会場内俯瞰

「地方では国内最大級の工業専門展示会」

昨年のメッセ2019は、直前の台風19号による被害で各地の交通が遮断され、開催自体も危ぶまれたが、過去最高の425社(団体)の出展、2万7841人(前回比:約1, 000人減)もの多くの来場者をお迎えし盛大に開催することができた。

地方開催は難しいと言われる中で、「地方では国内最大級の工業専門展示会」と高い評価のあるこの展示会が成功している一番の理由は、「地域が一体となって開催」していることである。

「産・学・官・金」の連携は、言うはやすく行うは難しだが、民主導、いわゆる企業人や会議所などの経済団体が主体となり、これを行政や大学・金融機関などが支援する形で、今や地域の「産・学・官・金」が皆、当事者意識を持って実行している展示会である。

もう一つの特徴としては、商談成立・販路拡大の最大のツールとなっている「我が社の“ひとわざ(一技)PRシート」の作成や、ビジネスマッチングに深く関わっている工業専門アドバイザー(地域の大手企業OBなど)人材が豊富であることが挙げられる。

また、メッセは他の展示会にはない大きな特徴がもう一つある。会場内で多くの子供たちを見掛けることである。3日間で約3, 000人の小中学生や高校生、大学生が見学に訪れ、今でこそ「次世代のものづくり人材育成の場」として評価もいただいているが、当初は「ビジネス・商談の場に子供たちを受け入れることはいかがなものか?」と拒否反応もあり対応に苦慮した経過がある。

メッセ開催の目的と成果

工業専門展示会を標榜(ひょうぼう)するメッセの最大の目的は、言うまでもなくビジネス(商談・販路拡大)であるが、同時にメッセ開催を通じて「産学・産産連携の促進」や「SUWAブランドの情報発信」、「観光・農業・商業など他産業との連携促進」、「次世代を担うものづくり人材の育成」、「学会・ワークショップなどの招致」など各種の取り組みによる、ものづくり産業の活性化、地域活性化を目指している。

子供たちも大勢見学に訪れる

メッセ開催の成果として第一に挙げられるのが経済効果である。昨年の直接的経済効果は5.7億円、また出展社に対して行っている独自調査では、前回メッセから今回メッセまでの一年間の新規受注額が7.5億円となっている。合計金額は毎回約10億円超/回となっており、メッセ開催は地域に大きな経済効果をもたらしている。

メッセは「産・学・官・金」などの様々な分野の、様々なニーズとシーズを持つ人々が集まる「場」の提供(プラットフォーム)という新たなビジネスモデルを形成している。

地域内外の企業や行政や各支援機関、大学などとの交流により、連携のきっかけづくりができ、市場ニーズにあった技術・商品動向など類似技術の内容把握と情報収集が容易になるとともに、新規産業の創出や「産産、産学連携」による技術力向上も見込まれ、結果的には、「技術のSUWA」ブランド、県内の工業力や中央道沿線地域としての魅力も向上し、人的・組織的により強固なネットワークを形成することができる。

このほか、工業のみならず地域の観光・商業・農業などあらゆる産業との連携による地域活性化を目指しているが、継続開催により、今では地域資源としてメッセを通年で活用し、様々な波及効果を生んでいる。

地域が一体となり地域の強みを生かした独自の取り組みにより、「地方では国内最大級の工業専門展示会」との高い評価をいただけるまでに規模・内容とも充実をしてきた。

新たなステージへ

現在は、第4ステージ(2017年~2021年)として「価値ある技術の進化でグローバルに発信」をテーマに推進している。

メッセ会場として使用している「旧東洋バルヴ諏訪工場跡地」は、広大な面積(敷地=7.2ha、建物=約1万㎡)を有している。

メッセの最大の課題は、現在の会場(旧東洋バルヴ工場建物)の老朽化による永続的な会場の確保である。幸いにも、所有者である諏訪市が旧東洋バルヴ諏訪工場跡地活用基本構想(2019年3月13日)を策定、整備方針の一つに「メッセの継続開催のため、多目的な展示場施設整備の検討」を掲げ、専門委員会による具体的な検討を始めた。

この動きに併せて、メッセ実行委員会においても昨年から「在り方検討会」を常設し、新たなステージ(2022年~)に向けての検討が始まっている。

メッセの開催は「成果・効果が“ものさし”」として、企業(出展社)にとっての成果・効果がある限り、期限を区切らず開催するとしているが、当面は30回(2031年)を目指している。

これまで同様に、企業目線を重視し常に企業(出展社)に寄り添いながら、多くの人が集い、語らい、つながり、さらには絆を深めることができる「場(メッセ)」の価値を最大限に活用し、地域のものづくり(製造業)の発展、「魅力あるSUWAブランドの創造」を目指していく。

今年の「諏訪圏工業メッセ2020」は、10月15日(木)~17日(土)の3日間、諏訪湖畔の諏訪湖イベントホールで開催する予定である。

2020年5月目次

リポート
巻頭言
視点
編集後記