リポート

群馬大学が興す産学共創と地域協働

群馬大学 理事(研究担当) /副学長 窪田 健二

写真:群馬大学 理事(研究担当) /副学長 窪田 健二

2020年05月15日

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群馬大学は、北関東を代表する総合大学として、「知の探究、伝承、実証の拠点」として、「次世代を担う豊かな教養と高度な専門性を持った人材を育成すること」、「先端的かつ世界水準の学術研究を推進すること」を基本理念に掲げ、教育や研究、社会貢献などの活動を推進している。この中で学術研究成果の伝承、実証の拠点として地域・社会を活性化するために、産学連携などを通して社会貢献を行ってきた。また、昨今の環境、地域・社会ニーズに応えるべく、この4年の間に研究推進の中心となる研究・産学連携戦略推進機構の改編を中心に、四つの研究・教育センターの設置、金融機関との新たな連携体制の構築などの取り組みを行ってきた。

研究・産学連携戦略推進機構の試み

研究・産学連携をより強力に、かつ効果的に推進していくために、それまでの研究・産学連携戦略推進機構を2016年に整理・改編した。この改編により、実効的な組織対組織の産学連携体制の構築に向け、群馬大学研究・産学連携推進機構を発足させた(図1)。本機構のミッションは、優れた研究成果を生み出すための体制を強化し、そこに関わる人材を育成し、また知的財産の管理・運用などを円滑に行い、本学の研究の一層の高度化とその成果を広く社会に還元することである。

そのために、全学的な研究戦略の策定と研究環境整備を行う「高度研究推進・支援部門」、研究者および研究支援者の育成を担う「高度人材育成部門」、知的財産の管理活用およびリスク管理を担う「産学連携・知的財産部門」の3部門に再編した。また、これら3部門を統括する「研究・産学連携戦略本部」を設置した。さらにURA室(現研究企画室)を本部に設置することで、それらが有機的に連携して、研究の推進から成果の社会実装までを組織的支援の下に行うことができるようになった。これにより、産業界との資金・知財・人材の好循環を確立していくことを目指している。

図1
図1 群馬大学研究・産学連携推進機構の組織体制
<ミッション1:重点研究の創出、研究支援体制>

研究推進支援においては、本学の新たな強み・特色ある研究を創出することを目的として、2016年度に「重点支援プロジェクト」(現在11プロジェクト)を開始した(図2)。本プロジェクトは、トップダウンによる拠点型研究の推進・創出と学内ファンドを組み合わせて、研究の一層の高度化と競争的外部資金の獲得による自立した研究実施体制の構築を基に、産業界と共同研究の拡大を図る好循環サイクルの形成を目指している。その成果の一つとして、2019年10月には群馬大学未来先端研究機構に「ウイルスベクター開発研究センター」が開設された。現在のライフサイエンスに欠かせない遺伝子改変ツールの研究開発を推進し、学内外との共同研究・連携の中で、ツールの供給者としての存在を確立し、本学だけでなくわが国のライフサイエンスを支える重要なプラットフォームとして本学の強みとなることを期待している。

加えて、若手研究者、女性研究者などへの研究支援、医療ニーズに立脚した先端医療開発研究を目指した医理工融合研究やSDGs(持続可能な開発目標)などの「社会的課題解決」につながる研究を促進するための制度も設け、分野間の融合や若手研究者の育成を図っている。

図2
図2 群馬大学における「強み・特色」研究創出への取り組み
<ミッション2:組織的産学連携の推進>

機構の改編を受け、産学連携を実効性のある協働関係として組織的に推進するために、知財やリスクマネジメントの扱いを明確にし、共同研究講座や共同研究部門規則の制定、金融機関との連携強化を目的とした協定締結などを実施した。2017年度には、学外からの相談業務の簡易化を進め、共同研究への対応・組織的連携強化を目指して、「産学連携ワンストップサービスオフィス」を設置し、学外からの産学連携へのアクセスを容易にした。これにより、相談内容を全学で共有化できたことで、個人によるコーディネートでは対応しきれない課題にも対応できるようになった(図3)。

図3
図3 群馬大学の産官学金連携事業の推進体制

2016年8月には、文部科学省主催の「産学パートナーシップ創造展」への自動運転自動車による次世代モビリティシステムの出展に対する高い評価が基となって、同年度の文部科学省補正事業「地域科学技術実証拠点整備事業」に、本学と群馬県が共同で提案した完全自律型自動運転の社会実装を目指した事業が採択となった。これにより、「次世代モビリティ社会実装研究センター」の設置・拠点化を進めることができた。

本センターの設置に当たっては、当時まだ少なかった自動運転の実証についての「よろず相談所」として機能することを目的として協議会を設置し、2017年度には共同研究講座(2講座)も設置した。本整備事業による、テスト走行コースも備えた拠点施設の完成後には、完全自律型自動運転の研究開発が大きく進み、共同研究の活発化と北海道から九州まで全国各地での実証実験の実施につながっている。

<ミッション3:地域連携の取り組み>

地域と連携する取り組みとして、研究インフラである研究共用機器を経営資源と捉え、研究の持続のための研究力向上と資源獲得を狙い、高度研究推進・支援部門の機器分析センターを中心に、近隣の大学や地域企業との機器の共用拠点「りょうもうアライアンス」を構築した。その活動を通して、地域に根差した教育研究の高度化、新技術開発、新産業創出に貢献する活動を行っている。

その他、金融機関との協定により、金融機関の職員に「群馬大学産学協働コーディネータ」としての活動を委嘱(現在64人)する制度も導入するとともに、金融機関との人事交流も開始し、地域の産学連携活動を一層加速するだけでなく、本学職員の資質向上も進めている。

数理データ科学教育研究センターと食健康科学教育研究センター

教員組織を一元化した学術研究院の体制を基に、将来的な社会との協働・連携の拠点構築および教育研究の核となる組織構築を機動的に進めるべく、2017年に「数理データ科学教育研究センター」、「食健康科学教育研究センター」を全学共通組織として設置した。数理データ科学教育研究センターは近年、期待される超スマート社会(Society 5.0)の基盤を支える情報数理およびデータ科学などの情報学分野の教育を行い、これらの素養を持った人材の育成および研究推進を図ることを目的として設立した。センターでは数理データ研究のみならず、「ぐんま数理データサイエンス教育プログラム」や「群馬大学STEM教育プロジェクト」など、教育プロジェクトを通して地元自治体との連携を図り、データサイエンスの教育研究も推進している。

また、農業県であるにもかかわらず本県には農学部がなかったことに対する地元ニーズに応えるために、食健康科学教育研究センターを設立した。農作物の6次産業化や、機能性食品などの食品の高付加価値化、併せて、食に関連した健康増進に関わる研究を推進することを目的としており、各分野の教育を学生・社会人に提供し、実務家および研究者を養成する。食健康科学教育研究センターでは、食品産業と食にまつわる健康についての個々の研究以外にも、センター独自の重点プロジェクトとして、地元needs-oriented(需要指向)な研究を推進し、地域の企業・自治体との連携の下にその成果を上げつつある。

これからの取り組み

本学では、上述のような研究・産学連携、地域連携に関する体制整備を進めてきたが、今後は、これらを基に社会の要請にさらに機動的に対応する学内外のプロジェクトを企画・構築し、地域と連携して社会的課題の解決に取り組むこととしている。

2020年5月目次

リポート
巻頭言
視点
編集後記