視点

互酬性の規範

北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部 地域連携推進センター長
知的財産部門長 教授 山本 外茂男

2020年03月15日

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「一億総中流意識」という言葉が死語になってしまった。「お互い様」のつながりが社会を支えていた昭和の時代を懐かしく思い出すことが増えた。

日中は家の鍵をかけることがなく、隣のおじいちゃん、おばあちゃんに怒られ、時にはおやつをもらえた時代。お裾分けが普通だったご近所付き合いが今となっては懐かしい。

茅葺(かやぶ)きの家に住み、お腹が空けば鶏小屋で卵をもらい、秋には山中で栗や叺(かます)一杯のアケビを取って食べた子ども時代。母親が町に買い物に出て、ゆで卵一個を買って食べるのをためらい帰って来た話を聞いたことを今も思い出す。貧しいなかでも精一杯に子どもに愛情を注いできた母親。

今の時代はどうだろう。産・学・官それぞれのなかで格差が開き、「互酬性の規範」を失い、「信頼」や「絆」を失いつつあるのではないか。企業格差、自治体の格差、大学の格差。研究領域での格差。研究者間格差。ある種の「行き過ぎた能力主義や暴走する資本主義」が様々な「格差」のスパイラルを生んではいないか。

産学官連携を担う者にとって、「信頼」や「お互い様の精神」は重要な心構えである。日本にはあの巨大災害時に、世界中から驚きを持って称賛された「お互い様」の精神文化が息づいているはずである。

人付き合いを広げ、維持するためには時にエネルギーを必要とする。情熱が必要である。「夢」は安らぎになる。「希望」は力になる。「願い」は行いになる。もっと「夢・希望・願い」を語り合える機会を持ちたいものである。

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