リポート

先端技術開発で、新産業と第4次産業革命をけん引

公益財団法人福岡県産業・科学技術振興財団ロボット・システム開発センター長
神谷 昌秀

写真:公益財団法人福岡県産業・科学技術振興財団ロボット・システム開発センター長 神谷 昌秀

2020年03月15日

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これまでに、800を超える研究開発プロジェクト

福岡県は理工系大学の集積率が西日本で最も高く、この頭脳を有効に活用し、産業界の技術ニーズと大学などの先端的研究シーズを仲介して、研究や技術の交流を促進するため、1986年「21世紀へのプラン」の中で、産・学・官連携システムの検討を行った。

1987年に、推進機関の設立準備が始まり、公益財団法人福岡県産業・科学技術振興財団の前身となる「財団法人福岡県科学技術振興財団」が1989年11月1日に設立された。事業内容は、(1)産学官の共同研究による創造的研究開発支援事業、(2)科学技術に関する研究交流事業、(3)国際的科学技術交流推進事業、(4)科学技術振興調査事業の四つである。

1990年、県庁近くに事務所を開設し、初めての産学官共同研究開発事業を公募して2テーマを採択するとともに、科学技術庁から研究開発事業も受託した。

1995年には、それまでの機能をさらに強化するため、基礎から事業化までの一貫支援、その成果を地域展開することで、本県産業の高度化や産業育成を目指す「財団法人福岡県産業・科学技術振興財団」へ改組した。また、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)からRSP事業(ネットワーク構築型)のコーディネーター4人が配置され地域での支援基盤が整った。

これまでに実施してきた産学官共同研究開発プロジェクトは、文部科学省やJST、経済産業省や国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などの大型事業をはじめとする、国が推進する事業375件、県事業401件、民間事業42件など、合計800件を超えた。

発展可能性が高い分野で、新産業を育成

福岡県の新産業振興施策は、一般的な地場産業振興とは組織や施策を区別して、発展可能性が高い分野に絞り込み、地域の大学や産業の高いポテンシャルを活用した産学官連携による総合的な取り組みを基本として推進し、その実践が当財団の役割となった。これは福岡県の特徴的な手法で、大変有効なシステムとなった。

2001年、福岡県は東アジアの半導体設計開発拠点化を目指した「シリコンシーベルト福岡構想」を開始し、財団内に推進室と技術者育成や集積を進める「人材育成カレッジ」を開設した。2004年に福岡市早良区に、独立行政法人中小企業基盤整備機構による大学連携型企業家育成施設「福岡システムLSI総合開発センター」が建設され、当財団はインキュベーション施設や共用設計ツールなど、半導体関連分野の支援環境を整えながら、企業の開発や事業化、育成、集積促進に取り組んだ。

その後、糸島市に半導体分野の試作開発を行う「三次元半導体研究センター」や実証試験を行う「社会システム実証センター」、博多区に「福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センター」、福岡市西区に「有機光エレクトロニクス実用化開発センター」を開設し、現在、図1に示す5センターによる支援体制となった。

図1
図1 5つの支援センター

第4次産業革命の基盤構築

近年、AIやIoTなどの第4次産業革命に向けた取り組みが進んでいる。これらを実現する基盤技術は、電子デバイスやソフトウェアなどの半導体関連技術であり、福岡県内には図2のように417関連事業所が集積した**1。当初の取り組みは、設計開発分野の集積を目指したが、近年はソフトウェア分野が急増している。

図2
図2 福岡県内の半導体関連事業所数
資料)笹野尚著「産業クラスターと活動体」、2018年:ふくおかIST調査

財団内には、これらを支援するインキュベーションが合計88室・36ブースあり、県内事業所の21%となる88事業所が入居し様々な事業を行っている。

AI開発の支援を行うため、経済産業省とNEDOが進める「AIチップ開発事業」のサテライト拠点に指定され、その設計開発環境も整備された。

①電子デバイスの試作開発

自動車EV化や5Gなどの高速通信が拡大し、その電子デバイスは高機能化や小型化、高集積化などへの対応が強く要求されている。

三次元半導体研究センターは、半導体実装分野の設計から試作開発、試験評価を一貫支援できる国内唯一の公的試験研究機関である。その機器利用件数は年々増加し、昨年は開所時の3倍以上となる466件、累計2,210件。企業などとの共同研究開発も、累計115件となった。図3に機器利用企業の分布を示すが、福岡県内が最も多く、関東など国内各地からも多くの企業に利用されている。その目的は、材料開発や製品試作開発・評価が半分以上で、近年は自動車関連企業が増加している。

図3
図3 三次元半導体研究センターでの機器利用
②IoT機器の開発・実証・導入

IoTの普及では、製造現場では何をどうすれば良いか分からないとかITベンダーからは現場ニーズが分からないと言う意見が多く、その乖離(かいり)が普及の阻害となっている。

当財団では、導入希望がある企業へ複数IoTベンダーが参加し、意見交換やマッチングを行う「現場ニーズ把握会」を県と実施し、現場への導入普及を進めている。

また開発製品に温度や振動、衝撃をかけて可動限界を評価する「HALT試験機」や「無線通信評価室」なども整備し企業を支援している。

③企業技術者の育成

当財団が運営する「システム開発技術カレッジ」は、電子デバイスやシステムのハードからソフト、AIやデータサイエンスなど、基本から応用までを学べる国内最大のリカレント教育機関である。講座体系は、電子回路などの「基盤技術」とセンサーや通信などの「要素技術」、システム品質などの「システム構築技術」の3体系で、財団内や企業への出張講座など、年間80回以上を開催し、これまでに1万8000人以上が受講した。

本年度、内閣府や経済産業省が実施する「第8回ものづくり日本大賞の人材育成支援部門」で、経済産業大臣賞を受賞した。

④有機EL材料の実用化

有機光エレクトロニクス実用化開発センターは、公益財団法人九州先端科学技術研究所などと連携して、九州大学で開発された世界最先端有機EL発光材料の実用化を進めている。デバイスの試作評価、基礎物性や解析、プロセス開発をはじめ、企業の参入支援も行い、支援企業である九州大学発ベンチャー株式会社Kyulux(キューラックス)では、開発した黄色単色材料のパネルメーカーへの採用が決まった。

先端技術開発で、今後の第4次産業革命をけん引

福岡県は、第4次産業革命を支える産業集積や人材が豊富で、高い地域ポテンシャルがある。当財団には、これまでの取り組みによって構築してきた多様な支援機能やノウハウがあり、今後の新産業振興や第4次産業革命を担う重要な役割がある。

特に、三次元半導体研究センターが福岡大学と開発してきた「部品内蔵基板技術」は、これまでの電子基板や機器を飛躍的に小型化、高速化、高信頼化できる画期的な技術であり、今後の第4次産業革命の基盤になると大きく期待される(図4)。

今後も当財団は、企業への新技術開発や人材育成などに積極的に取り組み、福岡県をはじめとした国内のイノベーションや新産業の育成・振興に取り組んでゆく所存である。

図4
図4 部品内蔵モジュール

参考文献

**1:
九州経済 調査月報「シリコンアイランド九州の新しい地平」.公益財団法人九州経済調査協会.2018.11,p22-27
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