特集産学連携に関する2020年度予算

科学技術振興機構
産学連携に向けた取り組みについて

国立研究開発法人科学技術振興機構 産学連携展開部 イノベーション拠点推進部 産学共同開発部

2020年03月15日

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研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)の制度変更

1)A-STEPについて

研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)は、大学等で生まれた科学技術に関する研究成果を国民経済上重要な技術として実用化することで、研究成果の社会還元を目指す技術移転支援プログラムである。2019(令和元)年度現在、A-STEPは、大学等の研究成果の実用化に向けた産学連携の可能性を検証する機能検証フェーズ、実用化に不可欠な中核的技術の構築を行う産学共同フェーズ、さらに製品化に向けた実証試験を行うための実用化開発を実施する企業主導フェーズの三つのフェーズで構成される(表1)。A-STEPは産学共同のアーリーフェーズから実用化開発まで幅広いフェーズを対象としており、さらには、医療分野を除く全ての研究分野を対象としている。このように、社会的・経済的なインパクトにつながることが期待できる、幅広い分野の研究開発を支援対象としている。

2)今後のA-STEPの取り組み、2020(令和2)年度A-STEPの制度・運営の変更

産学連携による研究開発の拡大・活性化が求められており、そのためにA-STEPが取り組むべき内容は次の通りである。一つは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業や科学研究費助成事業などで創出された先端的な基礎研究をA-STEPに早期に接続し本格的な産学共同研究に導き、A-STEPの研究課題のステップアップをより円滑にすることで、切れ目のない研究開発の体制を取ること。もう一つは、産学共同研究に取り組む多様なシーズを持つ研究者を積極的にA-STEPに取り込み、産学共同の研究開発を行う研究者の裾野拡大を図ることである。

上記取り組みの強化のため、2020(令和2)年度からA-STEPの制度・運営を以下の通り変更する。まず制度面では、従前の三つのフェーズをトライアウト、産学共同、企業主体の三つのメニューに再編し、産学共同の下に育成型と本格型、企業主体の下にマッチング型と返済型の二つのタイプを置く。産学共同育成型は2020(令和2)年度から新たに設置される(表1)。運営面では、A-STEPの開発主監(PD)*1と各メニューのプログラムオフィサー(PO)*2から構成される会議体(以下A-STEP全体会議という)を設置し、A-STEPの有望な研究課題を共有し今後の支援の方策などについて議論する。個別の研究課題に対しては、研究推進上の助言を与える推進アドバイザー*3を配置する。

表1 2019(令和元)年度のA-STEPと2020(令和2)年度からのA-STEP
表1
3)2020(令和2)年度A-STEPの狙い

切れ目のない研究開発推進の取り組みの一つとして、2020(令和2)年度新設の産学共同育成型では、先端的な基礎研究成果を本格的な産学共同研究に早期に接続する。産学共同育成型へは、共同研究相手の企業が確定していない企業探索段階で大学等研究者が単独で応募することができる。大学等研究者は、相手先企業の探索、企業ニーズとシーズの擦り合わせによるシーズ技術の検証、シーズ技術の知財化を行い、本格的な産学共同研究を行うための体制構築と具体的な研究開発計画の策定を行う。研究終了時には、産学共同本格型にステップアップすることが期待される。

同時に、産学共同の研究開発に取り組む研究者の裾野拡大を図る。従前の機能検証フェーズを引き継ぐトライアウトでは、300万円/最長1.5年のみとし、より多くの研究課題に対して産学連携に挑む研究者を支援する。また、トライアウトと産学共同育成型では、40歳未満の若手研究者の採択・支援を強化する。さらに、産学共同本格型と企業主体では、設立10年以下の企業に対するマッチング条件を緩和する。

A-STEPに取り込んだ先端的な基礎研究成果、A-STEPのメニュー間での円滑なステップを図るためには、適切なマネジメントが重要となる。A-STEP全体会議では、A-STEPの有望な研究課題をPD、POが共有し今後の支援の方策などについて議論することで、メニュー間での研究課題の円滑なステップアップを促すための体制を取る。このようなプログラム全体を俯瞰(ふかん)するマネジメントに加え、個別の研究課題に対するマネジメントも強化していく。特に、産学共同育成型では、共同研究相手の企業の探索、産業界・企業ニーズの詳細な把握が重要である。各研究課題に配置する推進アドバイザーが、研究者に対し、企業探索活動、シーズ技術の戦略的な知財化、具体的な研究開発計画の策定などに関する助言を行い、本格的な産学共同の研究開発の開始に向けた支援を行う。

共創の場形成支援プログラム*4の発足

「共創の場形成支援プログラム」は大学・国立研究開発法人、企業および自治体などの多様な機関の参画によるコンソーシアム型の研究チームや運営体制により産学連携拠点形成を行うプログラムである。本プログラムは、持続可能な開発目標(SDGs)に基づいた「ビジョンの探索・共有」を目指し、「バックキャスト型研究開発」と「持続的なシステムの構築」の一体的支援を行うものであり、2020(令和2)年度公募開始を予定している(図1)。

これまでの拠点形成事業は、様々なコンセプトのプログラムが林立し、また公募が1回限りの場合が多いなど、申請者への負担が指摘されていた。また特定研究分野・大規模大学へ資金が集中する一方で、支援終了後は拠点が縮小し解散してしまう懸念事項があった。

そこで本プログラムでは、既存の拠点型産学連携制度の大くくり化を進める中でこれまでの拠点プログラムの良い点を継承しつつ、定期公募の実現を含めさらなる改善を図っている。本プログラムの制度方針は以下の通りである。

1)ビジョンの探索・共有

自然科学系のみならず人文・社会系を含めた多様なステークホルダーを巻き込み、SDGsに基づいた国や地域の特性・持続可能性・イノベーションの観点を統合した、独自ビジョンの探索・共有を支援する。

図1
図1 共創の場形成支援プログラム概要
2)バックキャスト型研究開発

将来のビジョン達成からバックキャストし、新たな価値創造につながる研究開発目標とテーマの設定、その実行を支援する。研究課題の概念実証(Proof of Concept:PoC)以降は外部リソースによる研究実施へ段階的に移行することを求め、研究テーマの新陳代謝を促進する。また募集分野の一部を政策的に重要な分野として設定することで、地域特性や独自的な発想に基づくプロジェクトから政策的に重要度が高いプロジェクトまで、様々なタイプの研究機関・研究提案に柔軟に対応していく。

3)持続的なシステムの構築

価値創造に必要となる機能(外部リソース獲得、研究人材・マネジメント人材育成等)を備えたシステムを構築し、プロジェクト終了後も代表機関が中心となり持続的に運営する体制の整備を支援する。また、組織内外の様々なリソースを統合し、ビジョン達成に向けた研究開発体制(バックキャスティングからの研究テーマ、研究開発マネジメント体制、サイエンス基盤等)の構築も併せて支援する。その一方で、プロジェクト共通の基盤整備、例えば共用設備維持費や人件費などの経費は基盤的経費として扱い、安定的に措置できる枠組みとする。基盤整備の経費を保証しつつ研究課題の社会実装を促すことで、新たな研究開発課題の誘起と価値創造の仕組みと体制の持続的運営化を期待する。

支援メニューには、価値の創造を目指す異分野融合領域の研究開発と、そのために必要となるプラットフォームの構築・マネジメントなどを最大10年間一体的に支援する「本格型」と、目指す社会像と新たな価値の設定、その実現を目指す研究テーマの組成、研究開発体制・マネジメント体制の整備等を2年間一体的に支援し、本格型への移行を目指す「育成型」の2通りを設定する。特に育成型では、今まで拠点型プログラムに採択されていない機関からの応募を期待する。

*1:
A-STEPを含むJST産学連携事業について、マネージメントシステムの改善、プログラムの運営方針策定と統括などを行う。
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*2:
本プログラムの運営、研究課題の審査・評価・フォローアップ等を行う有識者。
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*3:
研究課題ごとに選任され、研究者等に研究開発推進上の助言等を行う有識者。
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*4:
本記事の情報は2020年2月時点。最新情報は本プログラムのウェブサイト参照。
https://www.jst.go.jp/pf/platform/
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