巻頭言

科学を活かす仕事の仕方

株式会社肥後銀行 代表取締役会長 / 熊本経済同友会 代表幹事
甲斐 隆博

写真:株式会社肥後銀行 代表取締役会長 / 熊本経済同友会 代表幹事 甲斐 隆博

2020年03月15日

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我々のような顧客サービスを基本とする企業が科学の位置付けを認識するにあたって、科学とは、先人の知恵の集合体であり、科学する姿勢が事業経営における必須要件であると考えています。

肥後銀行は、昨年11月に公益財団法人日本生産性本部が主催する日本経営品質賞を銀行として初めて受賞しました。その受賞理由に、体系的組織変革と人づくりが挙げられていますが、その背景には先人たちの研究から生まれた三つの理論をベースに組み立てられた組織変革論を、デジタル・テクノロジーをベースに展開した成果が評価されたと思っています。

その第1の理論が「変化の速度の差の原理」であり、以下6種類の経営資源は同時に変化するものではなく、「情報・カネ>モノ>ヒト>意識>制度・法律>価値観」の順で変化しにくくなるという分析であります。我々の変革は、最も変化の速い情報機能を組み込んだコンピューター・ベースの仕事環境づくりを行い、ITスキルを向上させ、古い価値観をデジタル社会に適応できる価値観に転換し続ける努力から始まりました。

第2に、「表と裏の競争力」という考え方の導入です。営業店における表の競争力(マーケットシェア)を強めるためには、本部と経営が商品開発や管理・検証業務の効率化そして組織編成など、顧客から見えにくい裏の競争力強化が重要です。

第3に、「モラトリアム人間の時代」という認識です。昭和の時代は社会的責任や義務の履行が始まる青年からオトナ社会への移行期をモラトリアム(猶予期間)として、ある一定期間全体で容認していた時代でありました。しかし、平成に入り高度情報化社会に突入して以降、青年期特有のモラトリアムが、あらゆる年代層、階層に共有される普遍的傾向になりました。その背景にデジタル技術の発展、グローバリゼーションの進展、大都市部への人口集中などの大きな変化が挙げられ、結果、組織運営が年功序列では難しくなったわけです。組織運営の標準化には、明確な運営ルールとコンピューター・サポートが必要となっています。

今後、Society5.0を目指すデジタル・トランスフォーメーション(DX)の伸展により、デジタル・デバイド(情報格差)はますます拡大していく可能性のある地方経済社会において、また、人口減少社会で既存の制度・システムを維持していくためにも、デジタル・テクノロジーの活用は必須であります。

肥後銀行は伸展するDXの地方経済社会における受け皿となるべく、DXの組織的体質化を図ってきました。このノウハウを地方のDXが伸展していない中小企業を支援すべく、展開を始めています。ビジネス教育会社を作り、ITスキル・アップと礼儀礼節を指導する部隊を中心に活動し、地道な説明が浸透し、ニーズが顕在化してきた段階であります。

昨年12月には、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と地域産業発展による持続可能な地域社会づくりの推進を目的とし、連携協定を締結しました。地方銀行として、地元の産学官連携を促進するに際し、不知の科学分野へのアクセスの円滑化と科学的知見をベースとした協力が得られるものと期待しております。

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