海外

自力で海外の大学からインターンを受け入れる中小企業

本誌編集長 山口 泰博

2020年02月15日

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人工水晶を使うニッチな市場を国内で取り合うより、海外に進出して市場を広げようとする中小企業がある。
その戦略は、自力で海外の大学生を受け入れて採用し、共同研究やビジネスパートナーも開拓する。

水晶を自在に操る

メガネやカメラなどのレンズには、薄い膜が何層か重ねられている。その膜厚(塗料やめっきなどを含む被膜の厚み)を制御するには水晶が必要だ。

それらの製品を開発するピエゾパーツ株式会社(東京都八王子市)は、水晶加工で人の感知できないナノレベルを振動で感知する水晶センサーを操る数少ない企業だ。

国内では光学機器メーカーが主な取引先で、需要が限定的な膜厚モニターは、2~4社がニッチな市場を取り合っている。そこで同社は主力の膜厚モニター水晶(写真)や圧電素子に加え、最近ではQCM*1センサーや回路を活用しパソコンで見える化した。工夫を重ねる。

QCMは、水晶振動子の発振を利用して分子の質量を計測する手法だ。電極表面に物質が付着するとその質量に応じて共振周波数が変化する。この性質を利用し、ナノレベルの質量感知を可能とし超微量の質量センサーとして機能する。

近年はスマートフォンにカメラが装備され、その市場は爆発的に増えたが、国内の量産工場は中国に移り、有機ELディスプレイが増えた。主要取引先も中国や台湾、韓国のメーカーへと変わる。

代表取締役の早川祐介社長(写真左)は「どれも超ニッチ市場で、零細でも海外に出て行かないと…。海外進出によって『部品屋』からの脱却を図りたい」と今では本社8人、新潟工場13人、台湾ブランチ2人、マレーシアブランチ1人(モナッシュ大学*2マレーシア校に出向中)とアジア市場でマーケティングや共同開発拠点を構築してきた。

とにかく行ってみよう

距離感のある海外進出は中小の町工場にとってハードルが上がる。「インターネットが発達しても、信頼関係は会ってこそ。実際に見て聞いてコミュニケーションしないと。とにかくやってみよう…です」早川社長のフットワークの良さに驚く。

その言葉通り、海外進出も共同研究もインターン生受け入れも自力で果たした。平均すると、毎月1度は米国と台湾、マレーシアを飛び回る。そこには前職の半導体製造装置メーカー時代に、台湾や韓国など海外出張の経験が生きている。

モナッシュ大学から受け入れ

海外の大学とのインターン生受け入れは3人目を数える。1人目を受け入れるきっかけは2016年。独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)のスキームでベトナムから日本語が堪能だった女子学生を2カ月間受け入れた。しかし手続きや報告書などの事務作業の煩雑さが身に染みたという。そんな理由もあって2度目からは、早川社長自ら大学を訪問しパートナーを探した。

そして2018年7~8月の2カ月、テキサス大学ダラス校から1人の学生を受け入れた。米国を選んだのは企画や販売力の不足を埋めるためやマーケティングや企画といった学生のアイデアを期待したからだ。

さらに3年前から共同開発先のモナッシュ大学から、楊栄禄(ヨウ・エイロク氏=写真右)を受け入れた。大学に日本へのインターンシップ希望を出していたヨウ氏だが、過去に実績がなかったことから実現できず早川社長に直談判したという。ヨウ氏は、大学の公式インターンシップではないこともあり、冬休みを利用し渡航費も自分で負担した。ヨウ氏のひた向きな思いに早川社長は、住まいにと自宅の一室を提供。ホームステイしながらのインターンシップを経て大学を卒業し、2019年12月から正式に入社した。

水晶を発振させるには電気系回路も重要で、これまで電気系回路は外注していたが、ニッチな仕様で思うようにいかなかったという。電機系エンジニアを目指していたヨウ氏の採用に早川社長は「仕事に対する姿勢が素晴らしい」と大絶賛だ。

*1:
QCM:Quartz Crystal Microbalance(水晶振動子マイクロバランス)
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*2:
モナッシュ大学(Monash University)は、オーストラリアのクレイトンに本部を置くビクトリア州立の大学。オーストラリアに6、マレーシアに1、南アフリカ1と8キャンパスがある。
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