リポート

産×学連携 クリーンテック技術展の開催
~企業とアカデミアのブリッジ役を目指して~

名古屋商工会議所 産業振興部 モノづくり・イノベーションユニット長 佐藤 航太

名古屋商工会議所 産業振興部 モノづくり・イノベーションユニット長 佐藤 航太

2020年02月15日

  • Twitterを開く
  • Facebookを開く
  • LINEを開く
  • 印刷ボタン

産学連携をコンセプトに環境貢献技術を集めた展示会を開催

去る2019年11月19日、ベンチャー・スタートアップのインキュベーション施設として新たにオープンした「なごのキャンパス」*1にて、「産×学連携<クリーンテック>技術展」を開催した。

この展示会は、公益財団法人名古屋産業科学研究所*2の協力を得て、近年急速に関心が高まっている地球温暖化、温室効果ガスの排出削減を背景に、脱炭素、省エネ、水浄化、リサイクルなど、持続可能な循環型社会の実現に資する技術シーズを企業や大学アカデミアが持ち寄り、製造業の企画・開発部門の担当者や共同研究先を探す大学関係者に広く紹介するマッチングイベントである。

当日は中部地域を中心に全国のメーカーやアカデミアが40の技術シーズを展示。大気中の二酸化炭素を分離・回収して新たな用途で活用する技術や電気自動車(EV)のバッテリー負荷を低減する技術、水素社会の実現に関する周辺技術などが紹介され、来場者とのマッチングを目指した。

当日の写真1
当日の写真2

環境問題への意識の高まりを受けて

2015年に国連で「パリ協定」が採択され、「SDGs(持続可能な開発目標)」が定められて脱炭素社会に向けた社会・経済システムの変革は不可逆的な流れとなりつつある。実際、「RE100」*3への参画など、脱炭素に向けた取り組みを始める企業は海外を中心に着実に増えており、「ESG投資」*4も意識されるところである。グローバルに事業展開する企業が多い中部地域では、サプライチェーン全体を通じた温室効果ガス排出削減の観点から、各社では、製造工程で排出される二酸化炭素の削減や、よりエネルギー効率の高い生産プロセスなど、その対応を模索しているところである。

こうした動きを受け、今回のイベントでは特に環境関係に限定し、シーズを募集し、ポスター・機器の展示による技術紹介を行った。また併催イベントとして、経済産業省の推し進める「カーボンリサイクル」*5に関する施策情報の提供、脱炭素に関する世界動向の紹介、産学官で研究を進める企業の先行事例を伝える各種セミナープログラムを実施し、来場者の方に幅広く情報収集いただけるようにした。

嶋尾正名古屋商工会議所副会頭/環境・エネルギー委員長(大同特殊鋼株式会社 代表取締役会長)
嶋尾正名古屋商工会議所副会頭/環境・エネルギー委員長
(大同特殊鋼株式会社 代表取締役会長)

さらに、出展内容への理解を促し、来場者との距離を近づけるために、出展者によるピッチイベントを実施した。これは、同種の事業を実施してきた経験と反省からで、出展内容が専門的過ぎて難解だと、幅広い領域から参加する来場者には展示内容の想定用途がイメージできず、せっかくのマッチング機会を逃してしまうケースがある。

そこで今回は、製造業や金融業から有識者をコメンテーターとして招へいし、出展者のプレゼンテーション後にコメントや代表質問するプログラムを入れた。限られたプレゼン時間の中で、出展者は専門的な内容をかみ砕いて説明する。そして有識者のコメンテーターからは将来の展望や応用可能性についてコメントをいただく。質問があれば、具体的に補足する。こうしたやり取りが来場者の理解を促し、興味を持った提案者の出展ブースへ訪問する流れができる。

結果、当日は約400人もの来場者があり、「自動車部品メーカーと早速面談のアポイントが入った」など、具体的な成果を挙げた出展者もいるほか、研究者からは「他分野の方とディスカッションができ、学会とは違う刺激を受け大変有意義だった」との声を得た。日ごろの事業領域とは異なる分野で活躍する方々の言葉をうまく翻訳し、つなぐことができたと感じている。

企業とアカデミアをつなぐ存在として

中部地域がモノづくりの技術基盤を保ち、継続して競争力を維持し、強化していくためには、国際的な潮流に遅れを取ることなく、常に変化に対応する柔軟性が必要である。そこには企業の力だけでなくアカデミアと連携し、社会課題を横断的に解決する姿勢が求められている。

産×学連携<クリーンテック>技術展の来場者アンケートの結果を見ると、環境問題に対して「至急対応しなければならない」と危機意識を高く持つ企業がいる一方で、「社内での意識がまだまだ低い」と社内課題を指摘する企業も多いようである。今後も、地域の経済団体として何ができるか日々考え、企業とアカデミアとの「橋渡し役」を担えるよう積極的な取り組みを続けたい。

*1:
「次の100年を育てる学校」をコンセプトに、ベンチャー・スタートアップ企業を支援する複合インキュベーション施設。旧那古野小学校跡地を活用しており、プライベートオフィスやシェアオフィスのほか、様々な交流を生み出すイベントスペース(コワーキングスペース・体育館等)もある。
本文に戻る
*2:
中部地区を中心に、産業界の技術の発展に貢献する産学官連携支援活動、産業に関する学術研究のほか、大学や研究機関等における技術に関する研究成果の産業界への移転事業、先端技術分野の人材研修事業を実施。
本文に戻る
*3:
事業活動によって生じる環境負荷を低減させるために設立された環境イニシアチブ。事業運営に必要なエネルギーを100%、再生可能エネルギーで賄うことを目標とする。「Renewable Energy 100%」の略。
本文に戻る
*4:
従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の要素を考慮して行う投資。
本文に戻る
*5:
化石燃料の利用に伴う二酸化炭素の排出削減に向け、二酸化炭素を新たな資源と捉え、再利用する取り組み。
本文に戻る

2020年2月目次

特集
リポート
巻頭言
視点
編集後記