特集防災減災考

地域とともに防災力の向上を目指す

北見工業大学 地域と歩む防災研究センター センター長 川尻 峻三

写真:北見工業大学 地域と歩む防災研究センター センター長 川尻 峻三

2020年02月15日

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設立の目的

2016年北海道豪雨災害、2018年北海道胆振東部地震など、今、北海道ではかつて経験したことがない規模の災害が発生している。今後はさらなる降雨量の増加や大規模地震発生確率の増加など、われわれの生活に支障をきたす自然災害の発生が予想されている。

このような背景から北見工業大学では、大学内の防災研究に活用できるリソースを一元化した教育・研究を展開することで、積雪寒冷地域における防災力向上に貢献するための研究成果の社会還元を地域とともに行うことを目的として、地域と歩む防災研究センター(通称、SAFER:セイファー)を2019年5月1日に設立した(図1)。

図1 地域と歩む防災研究センターの概要
図1 地域と歩む防災研究センターの概要

本センターではこれまでの地域との共同研究を「防災」というキーワードでさらに一歩踏み込むことで地域の実情に見合った成果の還元を目指す。また、本センターを核とした教育活動によって、地域の防災力向上の即戦力となる防災技術者や行政担当者などの人材を育成・輩出する。

北見工業大学だからこそできる防災研究

北見工業大学では、2016年より北見市から無償で旧北見競馬場を研究フィールドとして貸与していただき、オホーツク地域創生研究パークとして運用している(図2)。この研究パークの総面積は約31万5000m(札幌ドーム約5.7個)である。橋、堤防、道路、鉄道などスケールが大きい社会基盤施設の自然災害に対する耐久性を実験的に調べる場合には、これまでは小さな模型を作製して、実験室内の水路や振動台で洪水や地震を再現し、被害メカニズムや対策方法について検討してきた。しかし、小さな模型は小さいが故に重力の問題(模型は小さいので作用する重力の影響が実物よりも小さい)などがあった。すなわち、真の被災メカニズムを知り、より効果的な対策方法を検討するためには実大スケールの実験が必要となる。本センターではオホーツク地域創生研究パークを活用し、社会基盤施設の実物大スケールでの実験と、その成果の早期社会実装にチャレンジしている。

図2 オホーツク地域創生研究パークの全景
図2 オホーツク地域創生研究パークの全景

分野間連携と産学官連携による実験河川による洪水実験

近年の豪雨災害で顕在化した被害の一つとして、橋と道路の付け根部の盛り土である「橋台背面盛土」の侵食・流失と、それに伴う道路陥没である。この道路陥没に気付かず橋台内へ車ごと落下し、2016年北海道豪雨や2019年台風19号でも犠牲者がでた。「橋台背面盛土」はいわゆる分野間の境界領域となっており、研究が進んでいない領域であった。そこで、まずは防災研究に活用できるリソースの一元化を図り、多分野の教員・学生が集まり、「橋台背面盛土」に関する研究をプロジェクト化した。1年ほど実験室内で基本的な実験を行い、その結果の妥当性を確認するためにオホーツク地域創生研究パーク内に小規模な実験河川と橋梁を構築し、実物大規模での検証実験に着手した。図3は構築した実験河川の全景である。この実験で用いる高性能なポンプ車などは国土交通省北見河川事務所と北見道路事務所から協力をいただいた。両事務所とは、地域での防災・減災への取り組みをより強固なものし、積雪寒冷地での災害に対するセイフティーネットとして地域社会へ貢献・還元していくことを目的とした連携協定を締結している。水路の構築には大規模な土木工事が必要になるが、これには地元の建設業者の協力があり、研究施設として円滑に工事を行うことができた。このような産学官連携によって実大規模での検証実験を成功させ、本センターが考案した対策工法は、現在、北見市内の河川で試験運用されている。

図3 実験用小規模河川の全景
図3 実験用小規模河川の全景

地域から頼られる防災研究センターを目指して

本センターでは、上記以外の研究においても産学官が三位一体となって取り組み、その威力を発揮している特徴的な研究テーマが多数ある。このような研究成果を早期に社会実装するためには、最終的には地域のニーズや実情に合わせて修正し、スムースに社会へ浸透させる必要があると考える。地域にある大学の特徴を生かした研究成果の創出と社会還元を目指し、常に地域住民の目線に立ち、寄り添って本センターでの取り組みを進めていく。

2020年2月目次

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