リポート

工業高校生が動物園にと作った自動給餌器、ミニブタも気持ちいいブラシ

福岡県立三池工業高等学校 教諭 電気科主任 正木 陽一郎

2020年01月15日

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大牟田市動物園に勤務する本校卒業生から、動物に自動で餌を与える給餌器を作ってほしいと依頼され、生徒が自動給餌器を製作した。ものづくりの素晴らしさや大変さを学び、手作りによる製品で地域に貢献する取り組みで工業高校の存在感を示した。

自動給餌器とは

自然の中で暮らす動物は、餌を求めて長時間歩き回るが、動物園で人の手によって飼育される動物たちは、餌が与えられるので運動不足になる。また、一度に大量の餌を与えると、動物の健康にも良くないので、少しずつ与え、餌を探す行動をさせるなどの工夫が必要になる。そこで必要となるのが、動物が予測できない時間の給餌を可能とする電子制御の給餌器で、これが自動給餌器である。一般的にペット用の自動給餌器は各メーカーが作っているが、動物園用の自動給餌器は市販されていない。

きっかけは、2011年度本校電気科卒業生から、「動物園で使う自動給餌器を作りたい。電子回路を考えてほしい」との依頼である。そこで2017年度電気科3年生の課題研究という授業の中で、三池工業高校電気科オリジナルの動物園用自動給餌器を作ることにした。

製作には、市販のプログラマブルタイマーを購入し、制御回路でモーターを回転させることにより、餌が出る仕組みにする。上から餌を入れ、時間になるとプロペラが回転し、餌が落ちるようにした。しかし、電源に乾電池を使用すると、容量が足りないのでバッテリーに変更し、ソーラーパネルで充電することにした。そして2018年2月にラマ用自動給餌器を動物園に納入できた。

モルモット用自動給餌器とミニブタのブラシ

ラマ用の自動給餌器に続き、次はモルモット用自動給餌器を作ることにした。さらに、ミニブタの体をこするブラシの製作も依頼されたので、同時並行で製作に取り掛かった。

モルモット用の自動給餌器は、ラマ用と餌の大きさが違うだけだったので内容はほぼ同じだったこともあり、2018年11月に納入できた。

餌を落とすプロペラ
餌を落とすプロペラ
改良版の自動給餌器
改良版の自動給餌器

ミニブタブラシの製作は、2018年4月より開始した。ポリバケツに人工芝を巻き付け、ポリバケツをミニブタの餌場の屋根から吊るす。モーションセンサでミニブタの動きを感知し、20Wの直流モーターでポリバケツを回転させ、20秒間ブラシが回転するようにした。

ミニブタブラシの製作は大変時間がかかり、試作機の完成は2019年2月だった。ブタがブラシに体をこすりつけると、負荷がかかって電流が流れ過ぎて、直流安定化電源の設計変更とブラシのポリバケツとモーターの結合部分の強度が心配だったので、いったん持ち帰ることにした。その後も何度もやり直し改良を重ね7月にようやく納入することができた。

ミニブタブラシ製作の様子
ミニブタブラシ製作の様子
ミニブタとミニブタブラシ
ミニブタとミニブタブラシ

苦労したところ

自動給餌器は、電子回路の設計と試作に予想以上に時間がかかった。乾電池やバッテリーを使用するのでIC(集積回路)などは省エネタイプのものを採用した。また餌を出す部分の強度でも餌が引っかかって出なかったり、プロペラ部分が壊れたりと苦労した。当初、乾電池動作タイプを製作し、11月から実際に動物園で使っていただいたが、乾電池がすぐ消耗することが分かり、バッテリーとソーラーパネル方式に変更したうえで2月に再度納入し直した。

ミニブタブラシは、2018年4月から製作を開始し試作機が完成したのが2019年2月であった。試作機の改良後、5月にブラシとモーターの接続部分の止めネジを4カ所に増やし納入するもうまくいかず持ち帰った。6月に同部分の材質を真鍮(しんちゅう)から鉄に変え止めねじをM4からM5(ねじの規格で呼び方)にして納入するが、またうまくいかず持ち帰った。7月は同部分を溶接しやっとうまくいき納入することができた。製作開始から実に1年3カ月かかった。

自動給餌器(ラマ用、モルモット用)と、ミニブタブラシは順調に動作していると聞いている。動物園の関係者も大変喜んでくださり、計画から製作、完成までの説明と写真も付けた看板を作っていただき園内に掲出していただいた。生徒達も自分が作った製品が役に立っていることに大変誇りを持ち、ますます製作に力が入っている。

今後も工業高校らしくものづくりを通して地域貢献していきたい。

動物園作成の看板
動物園作成の看板

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