特集地方自治体の気概

地域産業の付加価値創造による魅力ある雇用の創出をつやま産業支援センター

津山市産業経済部 みらい産業課 主幹(つやま産業支援センター事務局次長) 沼 泰弘

写真:津山市産業経済部 みらい産業課 主幹(つやま産業支援センター事務局次長) 沼 泰弘

2020年01月15日

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4分野を柱として産業支援施策

岡山県津山市は、713年に美作国(みまさかのくに)の国府が置かれて以来、美作地域の産業および経済の中心として栄え、歴史的な町並みの形成とともに商業集積も進み、近年では工業誘致による内陸工業都市としても発展してきた。しかし、人口は1995年をピークに漸減傾向が続いており、特に高校卒業後の地域外への進学や就職による人口流出(18歳の崖)が大きな課題となっている。

そうしたなか、本市では2014年2月に「津山市成長戦略」を、さらに2015年10月に「津山市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、創生に取り組んでいる。具体的には先に策定した「津山市成長戦略」に基づき、地域内発型の産業振興に資する「つやま産業支援センター」を2015年4月に設置し、様々な戦略的サポートを実施している。

地域経済の縮小が進む中、地域外からの資金獲得は産業振興において重要な要素だが、本市の移出額の大半は製造業によるものである。そこで本市では当センター設置前に市内製造業者の大半(約200社)を職員が訪問し、ヒアリング調査を行った。結果、本市には下請け型企業が多く、生産性および収益力に課題があることが分かった。そこで当センターでは産業支援の機軸を「地域産業の付加価値創造による魅力ある雇用の創出」とし、関係機関との連携の下、下記4分野を柱として産業支援施策を展開している。

  • ①産業の集積と成長
  • ②地域企業の高付加価値化(個別企業の支援)
  • ③創業・新事業の促進
  • ④産業人財の育成

民間人材を全国公募

まず、当センターの設立にあたっては、マネージメントとマーケティングに長けた民間人材を全国公募し、統括マネージャーとして招聘(しょうへい)した。そして、現場主義をモットーに市内の製造業を中心に積極的な企業訪問を行う中で、特に改善意欲や成長志向を持つ企業を対象に、専門家などによる伴走支援を行うことで技術や販路の課題に対処することにした。加えて、技術連携やプロデュース、知的財産取得支援などを進め、高付加価値製品の開発・販路開拓をサポートしている。

現在までに累計500社を超える企業を訪問しており、新製品開発や新分野進出への意欲を喚起するとともに、大企業OBなどの生産管理専門人材を中小企業に派遣することで、5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)や改善活動を地域企業に根付かせ、生産性向上およびコストダウンを図っており、投資に回す資金を生み出すサポートも行っている。

また、各分野の経営者、創業希望者、大学・高等専門学校、金融機関など「産学金官」の異業種の方が出会い交流することで、イノベーションや連携が生まれる仕組み「異業種連携プラットフォーム」を定期的に開催している。こうした連携の場を提供することで、幾つもの新製品や新サービス、ビジネスマッチングが連鎖的に行われ、付加価値の高い事業が生まれてきている。

異業種連携プラットフォーム
異業種連携プラットフォーム

売り上げが3年で7倍近くになった取り組みも

ファイバーシート天井システム

地震などでも落下しにくく、落下しても安全な膜による天井を短時間で張ることができる画期的な製品を、市内企業と地域の金属加工企業などで組織する「津山ステンレス・メタルクラスター」会員企業とが連携して開発し、特許を取得。津山工業高等専門学校にて開発した金具の耐久試験を行い、実習室にも施工した。

国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にも登録され、学校や大手自動車会社の工場などに採用されている。

荷台昇降トラック アンロード・プラス

これまで物流業界になかった荷台全体が地面まで昇降する革新的なトラックを開発。特許も取得し、現在までに大手ロードサービス会社に加え、製造関係の大企業からも受注している。

ファクトリーブランド化支援「MADE IN TSUYAMA」プロジェクト

下請け専業だった市内縫製企業3社それぞれのファクトリーブランドの立ち上げをサポート。加えて市内のアウトドア用品販売事業者とかばん縫製業者をコーディネートし製品開発をサポートした。現在、大手百貨店や東急ハンズなどにも販路が拡大し、売上は2016年度438万円。2017年度1,910万円、2018年度3,030万円に増加している。

モノづくりの現場、魅力を体感できる企画

当センターでは市内IT企業と連携し、全ての企業訪問や対応履歴をデータベース化するシステムを開発・運用しており、きめ細やかなサポートに結び付けている。さらに企業訪問の際の聞き取りから、随時企業サポートメニューを追加、更新している。

具体的には、専門家派遣制度や付加価値化・事業転換、知的財産権取得、販路開拓のサポート補助制度など、企業の挑戦意欲を喚起する制度設計を行っている。

その他、支援事業や関係機関の情報をまとめた「ビジネス通信」を、センター職員が毎月手作りし、関係機関および過去の訪問企業全てにメール配信している。

2017年10月には、市内中心部の商業施設「アルネ・津山」内に学びの拠点施設として「津山まちなかカレッジ」を開設した。「アルネ・津山」には市立図書館や未就学児の預け入れ施設が入居しており、女性やシニア向けのリカレント教育を中心に様々な研修を開催し、2018年度は235回、延べ2,558人が受講した。

2018年から小中高生を中心に、地域の企業・産業を楽しく知ってもらう体験型企業見学会の「つやまエリアオープンファクトリー」を岡山県美作県民局と共に開催。開催時期は子どもたちが参加しやすい夏休みとし、会場は津山圏域定住自立圏を形成する津山市、鏡野町、勝央町、奈義町、久米南町、美咲町に立地する企業から募り、モノづくりなどの現場に直接足を運んでもらうことで、その魅力を体感できるよう企画した。2018年は参加45社(47会場)、延べ来場者1,756人、2019年は54社、2,380人と多くの参加をいただいており、将来この地域での就業につながることを期待している。

つやまエリアオープンファクトリー
つやまエリアオープンファクトリー

以上、つやま産業支援センターの取り組みの一端をご紹介したが、まだまだ活動は緒に就いたばかりであり、魅力ある雇用の創出に向け、今後も関係機関と連携し地域産業の活性化にまい進していきたい。

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