特集地方自治体の気概

光り輝く中小企業が持続可能な未来をつくる

公益社団法人いわき産学官ネットワーク協会 事務局次長 荒木 学

写真:公益社団法人いわき産学官ネットワーク協会 事務局次長 荒木 学

2020年01月15日

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公益社団法人いわき産学官ネットワーク協会の概要と設立された背景

公益社団法人いわき産学官ネットワーク協会は、地域内外のネットワークを活用して、福島県いわき地域の活性化に貢献することを目的に設立された、いわき市の第三セクターである。事務所はいわき産業創造館内に設置しており、役員、事務局体制、実施事業などは表1のとおりである。

公益社団法人いわき産学官ネットワーク協会の概要
表1 公益社団法人いわき産学官ネットワーク協会の概要

いわき市は1856年の石炭発見から1976年の炭鉱閉山まで120年の石炭産業の歴史を有している。エネルギー革命により石炭産業が斜陽化した際、国などの支援により市内には工業団地が次々と造成され、誘致した企業が炭鉱の離職者を吸収していった。以来、いわき市は1989年から1996年までの8年間で企業誘致件数が115件で全国1位となるなど企業誘致の優等生であった。

しかしながら、1990年代前半のバブル経済の崩壊、1990年代中ごろからの日本企業の製造拠点のアジア移管に伴う国内産業の空洞化を経て、1997年には金融危機を迎えると、企業誘致依存の産業振興の限界が浮き彫りとなった。以上のことを背景に、これまでの国などの支援に依存した「対策」から、地域資源を生かした新産業創出の連鎖により地域産業の活性化を目指す「政策」への転換を図るため、2000年から産業支援機関の設立に向けた検討を開始した。設立趣旨や実施事業、法人形態などについて様々な議論を重ねていった。2004年には任意団体として「いわき地域産学官連携協議会」を設立し、法人化後のスタートダッシュのためソフト事業を展開しながら、支援スキルの向上、支援ノウハウの蓄積に努め、2006年3月に社団法人いわき産学官ネットワーク協会が設立された。

産学連携と海外販路開拓の成果

協会の設立以来、企業訪問を数多く積み重ねることで市内中小企業の方々と強固な信頼関係を構築してきた。この「顔の見えるネットワーク」をベースに培ってきた国内外のネットワークや国県市の補助制度などあらゆるリソースをフル活用し、ビジネスモデルを構築するお手伝いをおせっかい的に行っている。

2018年には風車マーケットへの参入を目指す「いわきウインドバレー推進協議会」を設立した。市内に150基の風車建設が予定されており、約1,450億円のマーケットが形成されることを踏まえたものである。同協議会の着実な活動により、会川鉄工株式会社がタワー製造で風車マーケットへの参入を果たすとともに、東北ネヂ製造株式会社がボルト製造で販売拡大を目指しているほか、2019年にはバックス情報システム株式会社が東京大学先端科学技術研究センターと風力発電機のタワーに大量に使用されるネジの劣化監視システムの実用化開発に着手するなど産学連携プロジェクトも創出された。

また市内企業の海外販路の開拓を支援するため、2012年から継続して台湾やシンガポールなどにミッション(使節団)を派遣し、現地の支援機関や有力企業などとの強力なネットワークにより様々な実績を積み重ねてきた。主な実績は二つあり、一つはマイナーズジャパン株式会社が台湾企業から約7,000万円の仕事を受注したことである。もう一つは株式会社シンテックが台湾の財団法人金属工業研究発展中心と連携協定を締結したほか、台湾企業と市内に合弁会社を設立するなど技術開発や販売の体制を整備し、2019年度から実際に国内での販売を開始、順調に売上を伸ばしている。この2社のほかにも多数の企業が商談を進展させており、過去9年間にわたる海外への販路開拓事業は確実に実を結んでいる。

風力発電設備 保守・メンテナンス研修会
風力発電設備 保守・メンテナンス研修会

今後の展望

中小企業を取り巻く環境は、少子高齢化や人手不足、テクノロジーの進化など急激な変化の波にさらされている。このような中、当協会ではこれまでの支援に加え、2019年度からAIやIoTといったテーマのセミナーを開催し、テクノロジーの活用や人手不足への対応を促している。

また、いまや世界の共通言語となったSDGsに関連した取り組みにも注力している。大企業がSDGsを実装すればサプライチェーンに組み込まれている中小企業もSDGs化が必要となる。そのような状況に先手を打って対応するため、中小企業の経営理念、ビジネスモデルなどにSDGsを導入し、企業価値を向上させる取り組みを始めている。

さらに、中小企業の後継者問題も深刻であることから、当協会では2020年度から後継者育成塾の実施を検討している。中小企業は地域社会のエンジンであり、その後継者の育成は、10年後、20年後の地域の未来をつくることにほかならない。

当協会は、今後とも先見性をもって中小企業のビジネスモデルの構築を支援していくことにより、中小企業に光り輝いていただくことで地域の持続可能な未来をつくっていく考えである。

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