視点

研究組織スラック

摂南大学 経済学部 教授、 首都圏産業活性化協会(TAMA協会) 会長 野長瀬 裕二

2019年7月15日

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島津製作所の田中耕一氏が研究成果や新製品をこのところ生み出している。2002年にノーベル化学賞を受賞した後、シニアフェローとなってからの新境地を迎えているようである。流動性能力と結晶性能力のバランスが良い若手研究者時代に田中氏は、初期の業績を出している。その時期が過ぎた後、苦しみながらも若手研究者を指導しながら業績を出すように進化している。田中氏のそうした進化のプロセスを許容した島津製作所の経営姿勢は称賛に値しよう。この事例は、わが国が考えなければならない課題を端的に示している。大学などにおける研究者選別のロジックは既に十分示されている。

一方、スター研究者となるには、野球やサッカーのように、まずレギュラーポジションをつかまねばならない。若手が革新的新分野を切り開こうとすると、スリム化した現在の大学では、既存のレギュラーポジションに収まりが悪い。島津製作所のようにある程度の「組織スラック」を許容しないことには技術ポートフォリオが拡大していかない。

イノベーション政策において、研究者のための「組織スラック」についての議論が必要な時期に来ていると思われる。