巻頭言

産学官の連携協定と学外学修

津田塾大学 学長 髙橋 裕子

写真:津田塾大学 学長 髙橋 裕子

2019年7月15日

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2016年4月に学長に就任して以来、いくつもの連携協定書に署名した。産学官の多岐にわたる主な連携先を時系列で並べてみると、次の通りである。

一般財団法人国際協力推進協会(APIC)、関西大学、渋谷区、武蔵野美術大学、佐倉市、鯖江市+鯖江商工会議所、NPO法人佐原アカデミア、国分寺市、住田町、成田国際空港株式会社、電気通信大学、公益社団法人日本将棋連盟、飯田市、千駄ヶ谷大通り商店街振興組合、小平市、株式会社伊藤園など。協定締結の背景には、小平と千駄ヶ谷それぞれのキャンパスとの地理的つながりや、専任教員による研究面での個別の関わりがある。

なぜこのように多様な機関などとの連携協定を結んできたのか。一つには学生の学び方が変化し、学外での実践的な学修が不可欠となったからだ。本学では学生のインターンシップなどを支援する学外学修センターを2017年度に、連携推進センターを2018年度に立ち上げた。学年暦も4ターム制にして、第2タームと夏休みに、学外で長期にわたり学生一人ひとりの関心に応じた学修ができるようにした。

教員もそれぞれの研究領域の専門性を生かしながら、学生と共に地域にあるさまざまな課題を解決するプロジェクトに参加している。プロジェクト進捗の報告を聞くと、学生の新たな学び方に伴走する教員も、また、新たな角度から研究に取り組んでいることが見て取れる。

具体的なプロジェクトの断片をいくつか紹介してみよう。千駄ヶ谷キャンパスがある渋谷区では、学生と教員が「こどもテーブル」のボランティア活動に参加している。子どもたちとのおやつや食事作りに加えて、「大学生と子どもたちとの英語交流」の一環として英語絵本作りのワークショップも実施した。また、渋谷区に加えて、鯖江市、国分寺市などにおけるオープンデータ(著作権などの制約なしに自由に二次利用可能なデータ)やソーシャル・ビッグデータ(個人情報保護に配慮した公共性の高いデータ)を積極的に利活用して、地域住民や観光客などをサポートする情報発信サービスについても、学生と教員が一緒になって検討している。それぞれの地域のニーズについて共に考え、地域に資する具体的な提案を編み出していくプロセスが、学生たちの実践的な学びの場となっている。

また、小平キャンパスでは、初等英語教育を専門とする教員や学生が、地域の小・中学校において、学習ボランティアとして、英語の授業や英語活動への積極的な支援を展開している。学内プログラムの一環である「夏休みこども英語プログラム―津田塾生とつくる英語劇」は今年14年目を迎えた。学生スタッフが作る英語台本の録音に留学生が協力し、子どもたちの大変良い刺激になっている。最終日の子どもたちによる英語劇発表会は地域に根差した楽しい国際交流の機会にもなっている。

このような活動の発表の場に参加すると、課題解決や地域貢献に主体的に関わっているという意識を学生たちから強く感じる。学外での産学官の連携プロジェクトを通して、学生の一人ひとりが多様な背景を持つ大人や子どもと豊かに関わり、ユニークな学修成果を着実に得ている。このようなプロセスを通して、正解のない課題に取り組む姿勢それ自体を身に着けていると実感する。