視点
余裕を失う「元気な企業家」
摂南大学 経済学部 教授 野長瀬 裕二
各地の企業を30年歩いてきて、最近は変調を感じる。「元気な企業家」の層が薄くなりつつあるということだ。元気な企業家というのは漠然とした表現かもしれない。もう少し具体的に言うなら、新しい事業や技術に挑戦することを楽しそうに語る企業家だ。こうした企業家群は産学連携の基盤となる。
現在も元気な企業家に出会うことは多いし、大学発ベンチャーは政府の政策支援の成果もあって増えてきた。しかし、大学発ベンチャーの決算書を拝見すると、営業損失を補助金収入で軽減しているような、納税で国家に貢献するに至っていない事例が多い。
筆者が15年前ぐらいから交流しているベンチャー企業群が、ようやくIPO申請できるフェーズに到達している。この頃に創業した企業家達は、いまだに現役の方も多い。一方、筆者が問題と感じているのは、25年前ぐらいに初めて訪問した企業群である。その当時と企業家が世代交代している事例が多い。
「元気な企業家」の後継者たちが、グローバル経済の奔流の中で、将来について明るく語る余裕を失っているような気がする。M&Aなどの手段で、昔より数が少ない「元気な企業家群」に事業を集約するフェーズが来ているのではないだろうか。