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岐阜大学研究推進・社会連携機構 特任准教授(リサーチ・アドミニストレーター) 馬場 大輔

写真:岐阜大学研究推進・社会連携機構 特任准教授(リサーチ・アドミニストレーター) 馬場 大輔

2018年2月15日

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はじめに

私は現在、岐阜大学リサーチ・アドミニストレーター(以下「URA」)として、岐阜大学の広義の研究推進・支援に係る業務を担う一方、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)へクロスアポイントメント制度*1で出向しています。ここでは、自身のキャリアパスを振り返り、やりがいなどを中心にお伝えしたいと思います。

「どうすれば、世の役に立てられるのか」

私は、名古屋大学で微生物を用いた環境汚染物質の分解技術開発に関する研究で博士号を取得しました。在籍した研究室はその研究テーマが故、企業との接点も多く、学生時代から「共同研究」に携わっていました。元々、研究の深堀りの重要性は認識しつつも、その実用化や社会普及に強い関心を持って研究者を目指していたこともあり、この「産学連携」はまさに研究の理想形でした。

しかし、実際には大学の研究と現場が求める技術には大きなギャップがあり、ギャップを埋めるための橋渡しが重要であることに気付きました。それと前後して、その橋渡しを担う「コーディネーター」という仕事の存在を知り、同時にNEDOフェロー*2の先輩らの話を聞き、技術開発を担う研究者ではなく、その研究者を支援する側に思い切って転身しました。そして、無事NEDOフェローに採用され、縁あって岐阜大学の産学連携部署に着任しました。大学の「知」を社会で活用するにあたり、世の役に立てられるよう技術を咀嚼(そしゃく)したり、ニーズを引き出したり、方向性を一緒に考えたり、そのコーディネートは難しくも、とてもやりがいがありました。

「どうすれば、世の中に知っていただけるのか」

3年間NEDOフェローとして産学連携をみっちり勉強し、同部署の助教としてさらに経験を積んだ1年半後の2012年8月、現組織への改編に伴い「URA」という役職を与えられ、新しく研究推進部署を立ち上げました。それまでの企業目線で実学的な研究者の支援に加え、プレアワードを中心とした学術的な研究者も含む全研究者が支援対象となり、さらにコンプライアンスやアウトリーチ、マネジメントまで担うこととなり、守備範囲が広範になりました。

私は、研究費の獲得やそれに係る各手続きにおいて、研究者の真意を引き出してテクニカルにブラッシュアップしたり研究者の思いを図示化することを通して、研究者の夢を世の中に知ってもらうお手伝いをしているつもりです。一番うれしいのは彼らからの「ありがとう」ですが、何より目の前の其々の課題を一緒にブレークスルーしていくことはやりがいがあります。

「どうすれば、研究者の役に立てるか」

冒頭に申し上げた通り、2016年4月からクロスアポイントメント制度で、NEDO:岐阜大学を8:2のエフォートで勤務しています(実質週1回程度の大学勤務イメージ)。私は、NEDOフェローをきっかけにこの業界に飛び込みましたので、NEDOへの出向、しかも当時のNEDOフェロー事業担当部署への配属は運命的でした。NEDOは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と並ぶ国内最大級の研究資金提供機関として、国のロードマップに基づき進める大型のナショナルプロジェクトや実用化・事業化を強く意識した各種公募事業が中心なので、大学や公設試験研究機関などは企業と一緒に産学連携体制を組んだ上で提案する必要があります。

プロジェクトメークやブラッシュアップがURAなど研究支援者の得意とするところだとすると、応募前や採択後にURAらが研究者の役に立てるチャンスはたくさんあるように感じています。もちろん、研究者によってその介在度は調整する必要がありますが、せっかくの魅力ある提案内容がアピール不足だったり、事業の方向性と合致していなかったり、ケアレスでマイナスな印象が残ることは非常に残念ですから。

「どうすれば、自分を活かせるか」

クロスアポイントという両身分のまま両機関で仕事をする経験は、実に刺激的です。実際は、エフォート割合通りに仕事を割り切ることは難しいし、物理的距離も律速となり、大変なことも多いですが、事業に応募する立場と事業設計して公募する立場の違い、大学とは違う多様な「人」との出会い、官省庁の事業設計のやり方など、URAという立場だからこそよく分かり勉強になります。

たくさんの新しい人、モノ、仕事から受ける刺激を常にポジティブに捉えることで、これからも楽しく仕事をしていきたいと思います。

*1:
在籍型出向:研究者が大学、公的研究機関、民間企業のうち、二つ以上の組織と雇用契約を結び、一定の勤務割合の下で、それぞれの組織において研究・開発および教育などの業務に従事すること。
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*2:
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)産業技術フェローシップ事業:産業技術に対して幅広い視野と経験を持ち、技術シーズを迅速に実用化につなげていくことのできる優れた技術者を養成することを目的に2008年度まで募集されていた。
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