ヒト

“男女の仲以外はつなぎます”から始まった…

一般財団法人日本立地センター 地域イノベーション部 課長(全国イノベーション推進機関ネットワーク コーディネーター/グローバル・ネットワーク協議会 事務局コーディネーター) 有田 洋人

写真:一般財団法人日本立地センター 地域イノベーション部 課長(全国イノベーション推進機関ネットワーク コーディネーター/グローバル・ネットワーク協議会 事務局コーディネーター) 有田 洋人

2018年1月15日

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はじめに

2015年、3件目の職場である一般財団法人日本立地センターに入職し、3回目の冬を迎えた。現在は、経済産業省および自治体の産業振興に関わる委託業務などを行なっている。ここに至るまでは、広島県北部のまちで産学連携のコーディネーター、続いて多摩地域にある大学で地域連携のコーディネーターを経験してきた。これまでの産と学でのコーディネーター経験*1を振り返って、自分なりにコーディネーターの役割とは何かを考えたい。

中山間地域での挑戦

産学連携のコーディネーターという仕事は知らなかった。2008年に偶然、県立広島大学、庄原市、庄原商工会議所などが協議し設立した「しょうばら産学官連携推進機構」でコーディネーターの職に就いたことが、コーディネーター業のスタートであった。庄原市は広島県の北東部に位置し、大半は山林に囲まれた農業や土木建設業中心の、人口が約3.6万人のまちである。県立広島大学庄原キャンパスが立地していることを活用し、地域経済の振興などに役立つことを使命としていたが、零細企業が多く、産学官連携のものづくりを行うには非常に厳しい地域であった。そのため、産学官連携に固執せずに事業者の商品開発および事業改善などの相談に乗り、また庄原市の発展にとって必要と考えられるテーマでセミナーや研究会を開催することで事業者の支援を行っていった。その結果、産学官連携による特産品開発や庄原市の地域資源を活用した製品開発につながっていった(写真12)。

もとより初心者マークのコーディネーター1人では力不足である。しかし、全国各地にネットワークを広げ、アドバイスや事業者の紹介などでは先輩コーディネーターに助けていただいた。当時は、とにかく庄原市の地域経済に変化を与えることが必要と考えていたので、“男女の仲以外はつなぎます”とPRして活動していた。

写真1
写真1 庄原を盛り上げるために地元有志と大学生で創り出した「庄原焼き」
写真2
写真2 県立広島大学と地元企業との連携によって開発された特産品

大学での地域連携

庄原市での活動が約5年たち、隣の芝生が青く見えて、大学のコーディネーターという立場の方が特定の地域に縛られず地域経済の発展に大いに寄与できるのではないかと思っていたところ、恩師からの誘いもあり、2013年に開設したばかりの法政大学多摩地域交流センターに移った。恩師はいつまでたっても恩師である。大学では、多摩キャンパス周辺地域の自治会および住民団体と学生の交流、イベントへの学生派遣、中小企業とゼミとのマーケティングに関する連携(写真3)、ビジネスコンペの実施、学生の課外での活動に関する相談などの業務を行った。

写真3
写真3 ゼミと多摩地域の中小企業とのマーケティングに関する連携によって開発された化粧品

大学では、産業界にいた時にはあまり深く考えなかった学生の教育的効果について考えることになった。従来の学生の派遣では単なる人足となってしまうことも多かったので、企画もしくは運営面でも関与できるように交渉するようにした。また、学生が自らの課外活動を行うときに必要な提案力を高めるために、企画書の作成およびプレゼンテーションの指導も行った。

コーディネーターの役割とは

現在、経済産業省の委託事業で、地域経済をけん引する企業を創出・支援するために活動している全国のプロジェクト・マネジャーおよびコーディネーターを、コーディネーターとして支援している。これまでの自らのコーディネーター経験と、所属機関やバックグラウンドが異なる全国のプロジェクト・マネジャーおよびコーディネーターの活動を見てきた経験に基づき、私が考えるコーディネーターの役割とは何かを挙げてみる。

コーディネーターは、シーズおよびニーズの目利きをしてマッチングを行い、プロジェクトを推進する際にはその調整役となることが多い。しかし、単にマッチングと調整だけの役割で良いのだろうか。時には、企業と研究者にとっての情報屋、アドバイザー的な存在、サポーター、広報担当であり、必要に応じて冷静な状況判断の下でプロジェクトの軌道修正や、場合によっては中断あるいは断念させる役割を担うことも必要なのではないか。そのためには、幅広い領域へ広がったネットワークの構築が不可欠となる。また、コーディネーターの役割はプロジェクトの推進だけではない。立場にもよるが、プロジェクトを生み出すきっかけを創り出すこと、また自らがプロジェクトを創り出し提案することも必要ではないかと考えている。

*1:
「特許ニュース」No.14106(平成27年12月16日)
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