リポート

東北大学における利益相反マネジメント

東北大学 総務企画部 コンプライアンス推進課 利益相反マネジメント事務室長 川嶋 史絵

2018年1月15日

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東北大学における対応

東北大学(以下「本学」)では、産学官連携ポリシーにおいて産学官連携活動を教育・研究に次ぐ「第三の使命」と位置付け、大学が組織としてこれを行うことを表明している。産学官連携活動推進にあたり利益相反(Conflict of Interest:COI)は必然的に生じてくるものであり、その存在を認識した上で、大学の教育・研究に弊害をもたらしたり、大学の公正性(Integrity)を損ねたりしないようマネジメントすることが重要であるといった一貫した考えの下、利益相反マネジメントを実施してきた。また、制度導入に際しては、学内の理解を得ることを第一義とし、2005年度の制度導入から09年に利益相反マネジメント規程を施行するまで、啓発による制度の浸透を優先した。その結果として、学内教職員による理解度は高く、定期自己申告は例年ほぼ100%に近い提出率となっている。

マネジメント体制について

本学では、大学本部にて一元管理型の利益相反マネジメントを実施している(図1)。利益相反マネジメント委員会では、担当理事を委員長とし、全学教職員からの利益相反自己申告を対象に審査し、特に、人を対象とする医学系研究については、専門の委員会である「人を対象とする医学系研究部会」を経て、利益相反マネジメント委員会にて審査を行う。利益相反マネジメントでは、学外有識者の意見を委員会に適切に反映させる仕組みを設けることが重要であり**1、本学では、利益相反マネジメント委員会に学外委員を含む構成としている。さらに、利益相反マネジメント全般に対して、学外有識者からの評価、アドバイスを受ける利益相反アドバイザリーボードを設置し、利益相反マネジメントを進めている。教職員からの相談やヒアリングなどについては利益相反カウンセラーである外部専門家が対応している。

図1
図1 東北大学利益相反マネジメント体制

また、教職員が利益相反マネジメント委員会の審査結果に不服がある場合は、不服審査委員会に申し立てを行う再審査制度がある。

利益相反マネジメント全体の支援業務は、専任組織として設置された利益相反マネジメント事務室において実施しており、その内容は、教職員からの申告受付、申告情報の一元管理、調査、委員会資料の取りまとめ、審査案の作成、教職員の相談窓口、利益相反マネジメントに関する国内外の情報収集などである。

以上のように、本学では、制度導入以来、一元管理を行うことで、申告から審査における対応の一貫性、利益相反マネジメントに関するノウハウや事例の蓄積を行ってきた。また、担当部署を明確に示すことで、学内の教職員に対し、相談しやすい環境を提供してきた。

マネジメントについて

利益相反マネジメントにおいては、一定基準以上の金銭的基準(Significant Financial Interest:SFI)を設け、それを超える外部収入を持つ教員や研究者を潜在的利益相反の状態にあるとして、マネジメントとするといった手法が取られている。SFIの把握は、利益相反自己申告書により行う。潜在的利益相反(Potential COI)が、推定的利益相反(Appearance COI)や顕在的利益相反(Actual COI)にならないよう、また、Potential COIがAppearance COIとなった際に適切な方法で対応したことを社会に対し説明できるよう実施するのが利益相反マネジメントの目的である**2。本学では、研究課題に係る利益相反自己申告だけでなく、出資をしてベンチャー企業の取締役に就く等の産学官連携を行う際には、事前申告を得て、利益相反マネジメントを行っている。なお、利益相反マネジメントは、研究環境の変化や社会情勢などに適合させるため、適宜、制度や手法の改訂や見直しを行っていく必要がある。

1.個人としての利益相反マネジメント

本学では、定期自己申告をはじめとした利益相反自己申告により教職員と法人等との経済的利害関係および産学官連携活動等の利益相反情報を把握、管理し、申告内容に基づく利益相反マネジメントを実施している(図2)。

図2
図2 定期自己申告とその他申告との関係
2.組織としての利益相反マネジメント

「組織としての利益相反マネジメント」への対応については、大学等研究機関における課題となっていた。本学においても、産学官連携の深化、成果の創出に向け、学内体制を充実させるための次の目標として位置付けていたが、2013年に官民イノベーションプログラム実施機関として採択され、出資事業を開始し、組織としての利益相反のあらゆる事象に対応できる利益相反マネジメントの体制構築が急務となっていた。

このような状況の中、本学では、文部科学省産学官連携リスクマネジメントモデル事業(利益相反マネジメント)(2015、16年度実施)において、組織としての利益相反マネジメントモデルの構築を事業の一環として進め、学内における検討および外部専門家による助言を受け、組織としての利益相反マネジメント制度の実施要領を立案した。

その後、利益相反マネジメントポリシーおよび規程の改正(17年6月)を経て、同年10月より「組織としての利益相反マネジメント」の運用を開始している。

組織としての利益相反マネジメントと個人としての利益相反マネジメントは内容を分けることが難しい場合が多く、情報の共有が必要になること、また、本学では既存の利益相反マネジメント委員会に外部委員を含んでいることから、利益相反マネジメント委員会を「組織」や「個人」で分けない体制とした。

対象は、①大学組織と企業等との経済的利益に関する情報、②大学組織の意思決定を行う役職員(特定役職員)と企業等との経済的利益に関する情報、および③大学組織として実施する産学官連携活動等に関する情報、であり、大学組織または大学組織の意思決定を行う役職員と経済的利益関係にある企業等との組織的な産学官連携活動等の実施を機関決定する前に実施部局等から申告を得る。事務所管部署、特定役職員および組織の長からの①~③の情報および申告は、利益相反マネジメント事務室へ提出を受け、データの管理を行っている(図3)。

図3
図3 東北大学 組織としての利益相反マネジメント実施体制

課題

上述のように本学では、制度導入以来、実務に基づくマネジメント手法を確立してきたところであるが**3、今後は、以下に示す対応が課題である。

‐組織としての利益相反マネジメント
施行を開始したばかりであり、個人としての利益相反マネジメントの実施同様、事象の把握と対応、事例の蓄積をしながらマネジメント手法の構築を進める。

‐臨床研究法に基づく利益相反マネジメント
臨床研究法が規定する特定臨床研究に対しては、臨床研究実施基準に従い利益相反管理を行うことになる。同法施行に向け、速やかに対応できるよう準備を進めている。

‐web申請の導入
申告書用紙による対応を行ってきたが、組織としての利益相反マネジメントや臨床研究法への対応も加わったこともあり、web申請への検討を進めたいと考えている。

今後の展望

産学官連携により不可避的に発生する利益相反をはじめとしたリスクをマネジメントすることにより、大学自体のインテグリティーを維持・確立し、研究者の名誉・信頼を組織的に守ることは、産学官連携活動を加速するために不可欠であるとされている**4

利益相反マネジメントは、研究費獲得のための重要な要素としても位置付けられてきており**5、また、「臨床研究法」や「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」において規定されているように、研究活動を行うために研究者の所属機関における組織的な対応が求められている。産学官連携活動の推進において、利益相反マネジメントは、研究者個人だけでなく、大学としても非常に有益であり、その必要性はますます求められるものである。

参考文献

**1:
科学技術・学術審議会,技術・研究基盤部会,産学官連携推進委員会,利益相反ワーキンググループ.(2)学内の体制整備.利益相反ワーキンググループ 報告書.2002年,p.18.
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**2:
国立大学法人東北大学.3.「第二次大学革命」と COI マネジメント.東北大学 利益相反マネジメント 平成24年度 活動報告.2013年,p.24-25.
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**3:
国立大学法人東北大学.平成27年度・平成28年度文部科学省産学官連携支援事業委託事業「産学官連携リスクマネジメントモデル事業(利益相反マネジメント)」事例集(利益相反マネジメント東北大学モデル).2017年.
http://www.bureau.tohoku.ac.jp/coi/model/,(accessed2018-01-15).
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**4:
イノベーション促進産学官対話会議事務局(文部科学省高等教育局,文部科学省科学技術・学術政策局,経済産業省産業技術環境局).(3)知の好循環.産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン.2016年.p.23-31.
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**5:
国立研究開発法人日本医療研究開発機構.研究活動における利益相反の管理に関する規則.2016年.
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