特集大学発ベンチャー表彰2017

株式会社Lily MedTech 
「乳がんと闘う」この言葉のない世界を目指して

株式会社Lily MedTech 代表取締役 東 志保

写真:株式会社Lily MedTech 代表取締役 東 志保

2017年10月15日

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【大学発ベンチャー表彰2017】アーリーエッジ賞
普及のためには今後超えるべきハードルもあるが、実現すれば既存の乳がん検査の課題を克服しうる社会的意義の高い製品である。起業直後ながら臨床試験を開始しているなど、スピード感のある事業展開を行っている点などが高く評価された。早期実用化による大きな成長を期待したい。

リング型超音波振動子を用いた乳がん検診

株式会社Lily MedTech(リリーメドテック/東京都文京区、以下「当社」)は、リング型超音波振動子(写真1)を用いた革新的な乳がん用検診・診断機の開発を行っている。既存の検査手段のマンモグラフィー検査は、①圧迫による痛み、②X線被ばく、③若年女性に対して腫瘤(しゅりゅう)などの検出能力が低い**1ことが課題となっている。エコー検査は、技師がプローブ(探針)を用いて撮像するため、①再現性が低く、②技師のスキル依存性が高いため、ともに見落としリスクが高い。

当社の装置(写真2)は、乳房を水平に囲むリング状の超音波振動子を断層面に垂直に動かすことで、がんの見落としリスクが極めて少ない3次元画像を撮像スキルに依存することなく無侵襲で取得する。さらにアプリケーションの拡充により感度と特異度が両立する検診・診断システムを構築する。痛みなく、被ばくなく、取り漏らしが少なく、全年齢の方に使用できる。また自動計測・機械学習により開発する自動診断支援機能を実現し、単に医療機器の性能向上という目標を超え、健診率の向上にコミットできることを目指し、より多くの方の死亡率低減に寄与する。さらにQOL(生命の質)向上により現役の母親世代だけでなく、その家族もがんの苦しみから解放する事を目的としている。

写真1
写真1 リング型超音波振動子
写真2
写真2 製品イメージ

医学部発のベンチャーとして

当社の共同研究先である東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センターの東隆教授からは、研究面でのサポート(主に診断精度向上を図るアプリケーションの共同開発)を受けている。同じく共同研究先の東京大学医学部附属病院乳腺・内分泌外科からは当社の臨床機を使用した、患者による臨床研究の支援と、得られた臨床画像から開発へのフィードバックにつながるコメントをいただいている。2016年度の成果として、マンモグラフィーでは捉えられなかった高濃度乳房のがんが当社の装置で捉えられ、エコー検査と同等の画質で全乳房の中にがんが捉えられている。また、臨床研究に協力いただいた女性のうち、アンケート回答者全員が全体的に快適な検査であったとの回答だった。

今後、自動診断支援機能の開発のため、機械学習による画像処理についても共同開発を行う予定だ。

男性目線だけでなく女性目線のレビュー

当社は多様性を重要視しており、さまざまな働き方を望む女性社員も積極的に雇用している。臨床現場には当社代表を含め女性社員のみが立ち合い、使用感や印象などさまざまなフィードバックを、被験者である女性や女性技師などから広く得ている。男性目線では気付かない、女性が気にする点や気にしない点も丁寧にすくい上げ、社内の会議でも女性が発言しやすい環境や雰囲気づくりを心掛けている。

診断機だけでなく検診機としても普及を目指す

乳がんは11人に1人が罹患(りかん)し、罹患者数と死亡者数はいまだ増加の一途をたどっており、女性の30〜64歳では、乳がんが死亡原因のトップとなっている。早期に発見できれば生存率は高いが、検診受診率はOECD(経済協力開発機構)加盟国30カ国の中で最低レベルに位置している**2。このような背景から、働き盛りの女性や母親現役世代を救うため、検診機の普及を目指している。技師や臨床医の少ない地方や診療所、移動型バスで撮像を行い、より多くの方に快適に受診いただき、乳がんと闘う女性やそのご家族の苦しみや悲しみを少しでも減らすべく、乳がんの死亡率低減を目指していく。

参考文献

**1:
“若年者に対する診療マンモグラフィは勧められるか(検診.画像診断・画像診断―マンモグラフィ・ID51700)”.日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン」.
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**2:
“乳がんとは”.ピンクリボンフェスティバル.
http://www.pinkribbonfestival.jp/about/(accessed2017-10-15).
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