特集大学発ベンチャー表彰2017

株式会社FLOSFIA 
最先端パワーデバイスで社会を創る

株式会社FLOSFIA 代表取締役社長 人羅 俊実

写真:株式会社FLOSFIA 代表取締役社長 人羅 俊実

2017年10月15日

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【大学発ベンチャー表彰2017】新エネルギー・産業技術総合開発機構理事長賞
酸化ガリウムの単結晶を実現し、超低損失、低コストなパワーデバイスの試作に成功している。その独自技術とUTEC*1の支援、大手企業との協業等、外部リソースを活用し、実用化を進捗させている点等が高く評価された。電化製品から車載機器まで応用可能性は非常に広く、今後大きく成長することが期待できる。

新材料ベンチャー「FLOSFIA(フロスフィア)」

イノベーションの歴史をたどると、新しい材料の登場がきっかけとなっていることがよくある。コンピューターではシリコン、青色発光LEDでは窒化ガリウム、超高燃費航空機ではカーボンなどだ。

京都大学の藤田静雄教授(工学部電気電子工学科先進電子材料分野)は、新しい材料群「コランダムファミリー材料群」を見いだした。さまざまな材料が、同一の結晶構造、近い単位サイズ(格子定数)で存在していて、それでいて多様な機能を有している。例えば、絶縁性や導電性、半導体特性、高耐食性などである。

これらのうち、株式会社FLOSFIA(以下「当社」)で最初に注目したのが半導体特性である。「パワーデバイス」と呼ばれる半導体デバイスとして、電源やインバーター、モーター駆動回路などへ搭載すれば、ACアダプター・パワーコンディショナーの小型化やEV・HV車・無線給電などのエネルギー効率・燃費の改善などに貢献することが期待できる。半導体材料には、コランダム構造の酸化ガリウム(Ga2O3)を用いる。すでに当社ではSBD(ショットキーバリアダイオード)の実証試作に成功し(写真1)、世界トップデータとなる特性オン抵抗値の実現、実装デバイスでの高速動作の確認、コンバーターでの変換効率アップに成功してきた。

写真1
写真1 試作したSBD

これからいよいよ量産化である。さまざまな年齢層の多彩なエンジニアを擁し、知財・営業・間接部門も一丸となって製品化に取り組んでいる。

日本で新材料ベンチャーを増やしたい

これまで新材料開発は、ベンチャー企業には向かないと考えられてきた。開発に時間がかかり、多額の資金を必要とするためだ。実際に、新材料開発に先駆的に取り組んできたのは、大企業の中央研究所だった。しかしながら、投資回収の仕組みがうまく機能しなかったことから、中央研究所は開発予算や人員を減らしてほぼ絶滅してしまった。その結果、意外なことに欧米ではベンチャー企業がその担い手を務めるようになった。金融系機関投資家であるベンチャーキャピタルから多額の資金を集め、新材料開発に取り組む事例が多く見受けられるようになった。ベンチャー企業の多くは道半ばで倒産してしまうが、うまく開発に成功すると、最終的に大企業の仲間入りをするか、あるいは大企業の中にM&Aを通じて吸収される。大企業は中央研究所を持たなくても、必要とあればベンチャー企業を一気に吸収し、開発ステージの進んだ新材料を手にすることができる。

この動向を俯瞰すると、ベンチャー企業が大企業の中央研究所の機能を果たす、新たなエコシステムが出来上がってきたともいえる。ベンチャー企業の周りでは、さまざまなステージのベンチャー投資を好むベンチャーキャピタルたち、法律事務所や特許事務所などの専門家チームたち、ベンチャーキャピタルが運営するファンドへ投資資金を提供する機関投資家たちが切磋琢磨(せっさたくま)しており、ゼロからイチを生み出すチームとなる。

日本の大学は、新材料開発の領域で非常に強い競争力を有している。しかしながら、これまで大学の競争力を事業に結び付ける方法がなかった。当社で取り組む材料開発ベンチャーとしての挑戦は、未だ確立していないエコシステムをさまざまな人たちと共に創る、ミッシングピースを埋める挑戦である。その成功は日本の競争力を強め、長期成長の駆動力となると信じている。

当社では、酸化物、金属、有機材料など幅広い材料の作製が可能な独自技術「ミストドライTM法」(図1)を活用して、コランダムファミリーにとどまらない材料を作製していき、新しい世界をつくり上げる一助になるよう、引き続き挑戦していきたい。

図1
図1 新材料を実現するための新プロセス「ミストドライTM法」
*1:
UTECは、東京大学が承認する「技術移転関連事業者」として、ベンチャー企業を通じた大学の「知」の社会還元に向けて、優れた知的財産・人材を活用するベンチャー企業に対して投資を行うベンチャーキャピタル。
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