特集大学発ベンチャー表彰2017

株式会社サイフューズ 
バイオ3Dプリンタを用いて細胞のみで臓器をつくる!

株式会社サイフューズ 取締役 秋枝 静香

写真:株式会社サイフューズ 取締役 秋枝 静香

2017年10月15日

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【大学発ベンチャー表彰2017】科学技術振興機構理事長賞
独自の細胞積層技術を有し、さまざまな大学と協力し、複数の再生医療製品の導出に向けて研究開発を進捗させている点などが高く評価された。三次元化技術は再生医療市場の3割超に必要とされる技術であり、今後広く基盤的な技術として普及し、大きなインパクトを創出することが期待できる。

細胞のみから成る三次元組織の構築

株式会社サイフューズ(東京都文京区、以下「当社」)は、当時九州大学医学部整形外科の中山功一先生(現佐賀大学医学部臓器再生医工学講座教授、当社創業者)が発明した「細胞だけで立体的な組織・臓器を作製する基盤技術」を基に、2010年に設立した九州大学発の再生医療のベンチャー企業である。

当社の基盤技術は、細胞凝集現象により得られる「スフェロイド」と呼ばれる数万個の細胞の塊を、型枠または剣山「Kenzan」と呼ばれる治具上に立体的に積み立てることで、細胞だけで厚みのある立体的な組織・臓器を構築するものである(図1)。人工材料(スキャフォールド)を用いずに、細胞のみで移植可能な大きな組織や臓器を作製できる点においては、世界でも他にない新規性と独創性を持つ技術である。また当社は、この基盤技術をオートメーション化させた細胞版の3Dプリンター「バイオ3Dプリンタ『regenova®』」(図2)を、澁谷工業株式会社(石川県金沢市)と共に開発し、12年から販売を開始。現在までに国内外の複数機関に装置を設置しており、各研究機関におけるシーズ開発が徐々に加速してきている段階である。今後は実用化に進めるシーズの選定と、さらなる発掘と拡大に向けて、引き続き国やアカデミアと連携しながら、開発に取り組んでいきたいと考えている。現在開発を進めているパイプラインとしては、骨軟骨再生、血管再生、末梢(まっしょう)神経再生などが挙げられるが、いずれも再生医療分野での実用化へ向け、国内外の大学や研究機関、多くの民間企業と連携している。

図1
図1 株式会社サイフューズのプラットフォーム技術
図2
図2 細胞製人工血管の事例

起業から現在に至るまで

2010年の起業までを振り返ると、大学での基礎研究に始まり事業化に至るまで、国の助成金と大学の支援なしに当社の設立と発展は成し得なかった。特に、07年度からの国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)育成研究により「バイオ3Dプリンタ」の開発が加速したことを受け、現在の装置販売および新たなシーズ開発につながっていること、また09年度からのJST「研究成果最適展開事業(A-STEP)」の「フィージビリティスタディ(FS)・ステージ可能性発掘タイプ(起業検証)」を受け事業化する形で当社がスタートし現在の当社の地盤となっていることは、産学官連携のたまものである。その後は、12年度から国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、会社としての体を整えながら、九州大学と共に先行して開発していた骨軟骨再生の橋渡し研究を経て、現在、臨床入りに至っている。また、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの支援により、15年度からは佐賀大学、京都府立医科大学との共同研究において「バイオ3Dプリンタで造形した小口径Scaffold free細胞人工血管の臨床開発」を、17年度からは京都大学と共に末梢神経再生を目的とする「細胞製神経導管の臨床開発」を、それぞれ実用化を見据えて開発を進めている。このように、民間企業からの資金調達と並行した助成金によるシーズ開発が当社の礎となっており、今後も産学官連携の強みを生かしつつ、そこで得た経験を基に会社の体力をつけながら、全力で事業に取り組んでいくことをお約束したい。

日本初の技術を世界に

起業当初「サイフーズ?」「サイヒューズ?」と呼ばれていた当社であるが、今日になってようやく「Kenzan」をキーワードに、「サイフューズ」という名前が少しずつ周知されてきていることをうれしく感じている。「細胞がFusionする」という意味で名付けた社名であるが、現在ではエンジニアとバイオロジストが、またさまざまな分野のパートナーがFusionし、今日のサイフューズを支えてくださっていることは何ものにも代え難い会社の資産である。当社の技術を通じて、協力いただいている開発パートナーや高度な専門性を有する多くの中小企業、試薬・資材、検査機器などを扱う関連企業、一般社団法人再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)などの業界団体の方々と共に日本初の技術を世界へ発信し、世界中の医療の進歩に貢献しながら、日本の産業界全体を活性化させていければと思う。

「細胞だけで立体的な組織・臓器をつくる!」。この世界に先行する日本初の当社技術を用いて「細胞から希望をつくる」をモットーに、患者のみならず本開発に携わる全ての人が幸せな道を歩むことができるよう、社員一丸となって取り組んでいきたい。