特集大学発ベンチャー表彰2017

ティエムファクトリ株式会社 
世界初の汎用透明断熱材実用化に向けて

ティエムファクトリ株式会社 代表取締役 山地 正洋

写真:ティエムファクトリ株式会社 代表取締役 山地 正洋

2017年10月15日

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【大学発ベンチャー表彰2017】経済産業大臣賞
モノリス化された透明断熱材エアロゲルは、高い断熱性能と光透過性から応用範囲が非常に広く、素材ベンチャーとしてのポテンシャルの大きさ等が高く評価された。YKK APとの協業を通じ、建材としての活用が実装されれば社会的なインパクトは大きく、国内のみならず、世界的な活躍が期待できる。

SUFAの役割と可能性

当社は超軽量透明断熱材SUFA(スーファ)の事業化を進めている。この材料は学術的にはエアロゲルと呼ばれており、地球上の固体の中で最も軽く最も断熱性能の高い材料として知られている。

省エネによるCO2排出量削減が喫緊の課題となってきた昨今、地球上の固体で最も断熱性能の高いエアロゲルの重要性が再認識され、世界中で数十社のエアロゲルメーカーが設立された。しかし、いずれのメーカーでも高透明度で大きなエアロゲルは作ることができず、エアロゲルを細かく砕いたパウダータイプ(写真1)や、その二次加工品のみに限定されているのが現状である。しかし当社は、京都大学との共同研究の結果、現実的なコストで板状(モノリス)エアロゲル(写真2)を生産する技術の発明に成功し、これをSUFA(=Super Functional Air)と名付けた。モノリスタイプでなければ透明性を維持することは難しく、当社がSUFAの量産化に成功すれば、世界初の透明断熱材サプライヤーになると考える。

写真1
写真1 (左)グラニュール形状、(右)パウダー形状
写真2
写真2 モノリス形状

これまで透明な断熱材は一般市場に流通していなかったため、窓などの透明部分の断熱には真空ガラスや不活性ガス封入技術を用いるしかなかったが、SUFAをガラスにサンドイッチのように挟むだけでトリプルガラス以上の性能が得られる。また、将来的にはSUFA自体が超高断熱軽量ガラスとして、世界中の窓ガラスをリプレイスできる可能性を秘めている。

SUFAは、世界で最も使われている断熱材(グラスウール)の約3倍の断熱性能を持っている。つまり従来の断熱性能を実現するための断熱材の3分の1の厚さで済むため、透明である特徴を抜きにしても、既存の断熱材料に比べて住空間や輸送機などへの実装において大きなメリットとなる。

NEDO採択が転機に

2014年度に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)スタートアップイノベーター(SUI)に440社の中から選ばれた。この制度は年間数千万円の活動資金が助成率100%で提供されるだけでなく、メンターとして著名な起業家に各チームをサポートしていただけるという至れり尽くせりの制度であった。この制度によって、SUFAの元となる知財の確立を行うことができ、YKK AP株式会社との共同開発体制を構築することができた。また、16年度にはNEDO戦略的省エネルギー革新技術プログラムにも採択された。

当社のエアロゲルは、他社品と比べてコストが60分の1と圧倒的に安く、量産化が可能である。これは製造方法(図1)に大きな特徴があるためで、その製造方法を使うためには幾つかの特許とノウハウを駆使する必要がある。しかし14年時点ではそれらが一つの事業体の下にまとまっておらず、誰も使えない状況であった。それを15年度にNEDO SUI制度のバックアップを受けつつ、当社だけが使える状況に持っていくことに成功した。この知財の整備が最も注力したポイントであった。

図1
図1 製造工程比較図

「量産開発向け助成金」の創設を

ベンチャー向けの支援は多く、前述のように当社も助成金制度によって今に至るといっても過言ではない。しかし制度の多くはシード期向けであり、金額も年間数千万円程度のものがほとんどである。

当社のような素材系ベンチャーにとって、量産開発は高額な装置の設計・購入や、開発人員の投入などを進めていく必要があり、この金額では到底進めることができない。かといって助成額が年間1億円を超えるような大型の助成金は、実用化直前まで事業が進んでいないと採択は難しい。素材に限らず、多くのハード系ベンチャーにとっては、「死の谷」となるこの量産開発フェーズでの支援が最も必要と考えている。