特集大学発ベンチャー表彰2017

大学発ベンチャー調査 調査結果サマリー

本誌編集長 山口 泰博

2017年10月15日

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イノベーションを通じた成長力強化が求められる状況下で、最先端の「知」が集積する大学の研究成果を事業化する大学発ベンチャーへの期待は依然として高い。ことし4月に経済産業省(平成28年度⼤学発ベンチャー調査)や民間調査会社の株式会社帝国データバンク(大学発ベンチャー企業の実態調査)から、大学発ベンチャーに関する調査結果が相次いで公表された。それぞれの調査方法が異なるなど、各大学が関係する大学発ベンチャー企業数には大きく乖離(かいり)が見られるが、公表データに基づいて概略をまとめた。

経済産業省調査 大学発ベンチャー1,851社、黒字企業55.6%、閉鎖169社

2017年4月経済産業省発表の「平成28年度大学発ベンチャー調査 調査結果概要」によると、存在が確認された大学発ベンチャーは1,851社。前年の15(平成27)年度の1,773社から78社増加した。また15年度調査以後に閉鎖した会社は169社。大学発ベンチャーの事業ステージは、15年度調査時は⿊字化した⼤学発ベンチャーの割合は55.6%だったが、16年度では55.7%とほぼ同様だった。

⼤学発ベンチャー創出数では、1位の東京大学が突出し216社、以下そのほとんどを国立大学が占める中、私立大学では早稲田大学が62社で1位、慶應義塾大学が42社で2位と続く。またデジタルハリウッド⼤学が10位と健闘。日本初の株式会社立の大学としてビジネスマインドの高さがうかがえる(表1)。

表1 2016年度 大学別⼤学発ベンチャー創出数
表1

また、同調査における大学発ベンチャーの定義は表2を参照されたい。

表2 大学発ベンチャー 分類別企業数と比率(2016年度)
表2

回答率16.9% 際立つ低さ

経済産業省の「⼤学発ベンチャー設⽴状況等調査」は、全国の⼤学、⾼専、TLO、インキュベーション施設、都道府県(計1,275機関)を実施対象とし、各機関が把握している⼤学発ベンチャーにアンケート調査を実施。そのうち、現存する⼤学発ベンチャーのみを抽出。1,275発送のうち597回収した。

ここでは触れていないが、その後「⼤学発ベンチャーに関する基礎調査」も実施し、先の「⼤学発ベンチャー設⽴状況等調査」によって設⽴が把握された⼤学発ベンチャーを対象に、各⼤学発ベンチャーの起業した年度や2015年度の従業員数・売上⾼など具体的な項目で調査を行ったようだが、調査票の発送数1,959のうち回収できたのは332、回答率16.9%とその低さが際立つものとなった。

帝国データバンク 大学発ベンチャー企業の実態調査858社を集計

一方、株式会社帝国データバンクが発表した「大学発ベンチャー企業の実態調査」は、企業概要データベース「COSMOS2」のほか、信用調査報告書ファイル、その他外部情報などを基に、大学発ベンチャー858社を集計・分析したもの。

従業員数は「5人以下」の少人数経営が最多

従業員数別に見ると(表3)、「5人以下」(代表のみで経営を行っている企業を含む)が510社(同 59.4%)となり、全体の約6割を占めた。「6~20人以下」(231社、同26.9%)と合わせると、従業員数20人以下の企業が全体の約86.3%を占め、大学発ベンチャーの多くが少人数で構成された企業といえる。

表3 大学発ベンチャー 従業員数別の会社数と比率
表3
大学別 上位11校中10校が国立大学

大学別に見ると(表4)、トップは東京大学の93社。以下東北大学の43社、大阪大学の42社。9位の慶應義塾大学(26社)を除き、11校中10校が国立大学となったほか、全体の約1割を東京大学発ベンチャーが占めた。また、公立・私立大学だけで見ると、慶應義塾大学(26 社)と早稲田大学(18社)が上位を占めるほか、会津大学、近畿大学、東海大学(13社)などが上位となった。前出の経済産業省の調査結果と大きく違いが見られる。

表4 大学発ベンチャー 大学別会社数
表4
業績動向 売上高1億円未満が9割以上

2015年の業績が判明した大学発ベンチャー817社を売上高別に見ると(表5)、最も多かったのは「5,000万~1億円未満」の377社(構成比46.1%)。以下、「1億~10億円未満」(260社、同31.8%)、「5,000万円未満」(145社、同17.8%)と続き、売上高10億円未満の企業が全体の9割以上を占めるなど、経営規模が小規模にとどまる企業が多い。 また、大学発ベンチャーの過去10年間の売上高合計推移を見ると、08年のリーマン・ショック以降売上高は伸び悩んでいたが、11年以降は増加。15年では07年以降で最高となる約1847億9300万円を記録した。1社当たり売上高平均についても、07年(約2.53億円)以降減少傾向にあったが、15年には約2億2600万円まで回復した。

表5 売上高別の社数と比率 ※2015年の業績が判明した企業のみ
表5
業歴別損益動向 設立「5年未満」約6割が赤字

大学発ベンチャー858社のうち、15年の収益が判明した510社の損益動向を見ると、全体の58.4%(298社)が黒字だった。しかし、業歴別にみると設立から「5年未満」(47社)の企業は 61.7%が赤字計上となり、全体の赤字(構成比41.6%)より20.1ポイントも高くなった。多くの企業で研究・開発費などの投資が先行するため、特に設立直後の企業において事業が安定化するまでは収益性が低調になりやすく、設立「5年未満」において赤字経営の割合が多くなる要因の一つに考えられる。