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> 評価結果(2)研究開発課題の個別評価
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)
平成14年度実施課題 事後評価報告書
平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会
5.
評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
12 鉛フリー、高信頼性積層型圧電アクチュエータの開発(H14−0060)
企業名
:株式会社 タイセー
研究者(研究機関名)
:清水 紀夫(千葉工業大学 工業化学科 主任教授)
1 )
モデル化の概要および成果
本開発は鉛フリー、高信頼性積層型圧電アクチュエータの試作である。
従来の積層型圧電アクチュエータには圧電定数の大きいチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で代表される鉛系材料が用いられている。しかし、その焼成温度が高く、さらに電極材料として高価な銀−パラジウムを用いること、高湿度下での銀のマイグレーションによる絶縁破壊等信頼性に問題がある。
本開発の目的は、これらの問題を解決した、鉛フリー、高信頼性積層型圧電アクチュエータを実現することである。そのために、
チタン酸バリウム系材料組成
グリーンシート
※
の薄肉化及びその積層化
電極パターン、応力緩和層、予圧機構の最適化
ニッケル複合材料による内部電極形成
ホウケイ酸ガラスによる保護コーティング等について開発を行い、35μm厚のシートを約300枚積層した圧電アクチュエータを試作した。
試作品では、シートのピンホールの影響により、目標値(10μm)には及ばないものの、4.5μmの変位量(10mm厚、150V駆動)が得られ、PZT同等の性能が実現可能であることが示唆された。今後、シート成形技術及びニッケル複合材料による内部電極形成技術を更に追求する必要がある。
鉛フリー化は圧電材料及びその応用商品においても社会的な課題であるが、本開発の圧電アクチュエータの実現により、半導体、光学、自動車、精密加工分野やプリンタ、ハードディスク等の民生機器はもとより、特に高信頼性と人体への環境配慮が必要な医療機器などを中心に新産業創出を目指す。
※グリーンシート:焼成前の薄板状原料
2 )
事後評価
モデル化目標の達成度
原料組成の選定、焼結、グリーンシートの作成、応力緩和についてはかなりの成果が得られたが、グリーンシートのピンホールの防止、Ni電極の焼成時酸化防止、封止技術などが課題として残された。モデル化達成は今一歩である。
知的財産権等の発生
現在まで発生なし。今後の取得の可能性あり。
企業化開発の可能性
企業化のネックはNi電極の作成とみられるが、解決のめどが立っていない。この種のテーマはモデル化が完成すれば実用化への移行は可能性が高い。
新産業、新事業創出の期待度
鉛は2006年からの電子機器への使用禁止が決定され、鉛フリー半田と並んで、鉛フリー圧電アクチュエータの開発が緊急課題となってきた。技術開発が成功すれば新産業として期待出来る。
3 )
評価のまとめ
圧電体材料調整についてはかなりの成果が得られたが、内部電極のNiの焼成時酸化防止などの課題が残されている。圧電アクチュエータはインクジェッターなど多く機器に使われおり、2006年からの鉛の電子機器への使用禁止に向けて鉛フリー化が緊急課題となっている。技術開発が成功すれば新産業の創出が期待出来る。貴金属の電極では全く経済性がないのか検討してみてはどうか。
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This page updated on May 19, 2004
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