赤﨑勇博士、天野浩博士、中村修二博士
ノーベル物理学賞受賞をお祝いして

 名城大学教授 名古屋大学特別教授・名誉教授 赤﨑勇博士、名古屋大学大学院工学研究科教授 天野浩博士、カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授 中村修二博士がノーベル物理学賞を受賞されることに対して、心からお喜び申し上げます。

 受賞理由は、「高輝度、省エネルギーの白色光源を可能とした高効率青色発光ダイオードの発明」です。赤﨑博士、天野博士、中村博士は、当時多くの研究者が難しいと考えていた窒化ガリウム(GaN)の研究に取り組み、20世紀中は不可能と言われてきた青色発光ダイオードを実現しました。そしてこのような3人の先生方のご研究によって、 青色発光ダイオードの実用化およびその応用に道が開かれ、イノベーションを引き起こしたことが高く評価されたものと思います。

 JSTは、1986年度より基礎研究の成果を実用化につなげるため、豊田合成株式会社との産学連携事業を支援しました。その結果1995年に青色LEDの事業化に成功しました。青色LEDを使用するディスプレイは、従来の蛍光管方式などと比較して高輝度、低消費電力、軽量、長寿命などの優れた特長を持ち、また青色LEDなどを応用した白色LEDも開発され、スマートフォンなどの液晶表示のバックライトやLED照明などに使用され省電力へ大きく貢献しています。

 窒化ガリウム半導体はさらに、電力の制御や供給を行うパワー半導体としての研究分野にも広がりをみせています。これは将来の省エネルギー技術やスマートグリッド技術への応用につながるものです。

 このように赤﨑博士、天野博士、中村博士の成果は、21世紀のグリーンイノベーションにとって、なくてはならない技術となっています。JSTが研究を支援したことですばらしい成果を挙げたことに、ひとかたならぬ喜びを感じています。

 2012年の山中博士に続く受賞は、わが国の研究開発のレベルが幅広い分野において世界のトップクラスにあることを示しています。

 赤﨑博士、天野博士、中村博士の受賞を心からお祝いするとともに、今後、JSTは、わが国の科学技術の発展に貢献できるよう、より一層の努力を続けていくつもりです。

2014年10月7日
独立行政法人科学技術振興機構 理事長 中村 道治

JSTとの関係(参考)

 赤﨑博士は、高品質GaN単結晶の作製に成功した後、実用化を目指して、豊田合成株式会社(愛知県清須市)と1986年度より5年間、科学技術振興機構(JST)の前身である新技術事業団の委託開発制度※1で「GaN系青色発光ダイオードの製造技術」を実施し、青色発光ダイオードを実用化することに成功しました。

 その後、赤﨑博士、天野博士のMgドープp型GaN半導体の成果を加え、JSTの委託開発制度でGaN単結晶を使ったレーザーの実用化について、引き続き豊田合成株式会社と「窒化ガリウム(GaN)系短波長半導体レーザーの製造技術(1993~2001)」を実施し、その成果は青紫半導体レーザーとして実用化され、ブルーレイディスクの光源など身近なところに実用化されています。

 中村博士は創造科学技術推進事業(ERATO)※2 の総括責任者として、2001年10月に「中村不均一結晶プロジェクト」※3を発足させました。同プロジェクトは、2006年9月に終了しましたが、非極性、反極性窒化ガリウム材料の研究など、次世代の発光デバイスにつながる大きな成果を残しています。

※1委託開発制度:
大学や公的研究機関等の研究成果で、特に開発リスクの高いものについて企業に開発費を支出して開発を委託し、実用化を図ります。現在は、「研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 本格研究開発ステージ(実用化挑戦タイプ)」として実施しています。
※2創造科学技術推進事業(ERATO):
基礎的な研究から今後の科学技術の新しい領域を開拓するとともに、技術革新をもたらす科学技術の芽を積極的に生み出すことを目的として、卓越した洞察力と指導力を持つ総括責任者のもと研究プロジェクトを構成し、約5年間の基礎研究に取り組む制度です。なお同事業は2001年度をもって発展的に解消し、2002年度からは戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究として推進されています。
※3「中村不均一結晶プロジェクト」:
窒化物半導体内に存在する結晶欠陥や不純物、あるいは量子ドットなどのナノスコピックな種々の「不均一性」を、より自由に制御しうる科学技術を開拓することを目指し、2001年10月から2006年9月まで実施されました。

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