E1313社会とつながる・世界とつながる

石棒って!? リアル×3Dで体感する縄文の文化財

名古屋大学×飛騨市・石棒クラブ×TOPPAN

9月13日(日)13:00〜14:30 5階オープンスペースE

出展レポート

提起した問い・目指した未来像

石棒(せきぼう)は縄文時代の男根状の石製品で、何のために使われたのかは未だ謎に包まれている部分も多い。本企画は、石棒に触れ、3Dデータと照合する「石棒神経衰弱」を通じ、実物とデジタルそれぞれの強みを生かした鑑賞体験を提供。そのうえで「文化財とは何か」「私たちはなぜ残すのか」を参加者に問いかけ、文化財を専門家だけのものではなく、誰もが想像を巡らせ、人や社会、後世につなぐ財産でありつづける未来を目指した。

参加者との対話から生まれた意見や気づき

参加者からは「なぜ石なのか」「土偶の祭祀と関係はあるのか」「どこから石棒と認定されるのか」など次々に質問が寄せられ、岩石に詳しい参加者が「柱状節理」を解説し、研究者が補足する場面もあった。
終盤には、参加者から「石棒にはどんな可能性や未来があるだろうか」という問いかけがあった。登壇者からは、地域を元気にする町おこし、重要文化財への指定による研究の進展、文化財を市民に開いていく意義が語られ、文化財は単なる古いものではないという気づきが共有された。対話はそこから「人はなぜ残すのか」へと発展した。登壇者の答えは「残そうとして残ったものは案外少なく、未来から参照され続けるものが残る」「教科書に載らない暮らしをたどり、地域のアイデンティティを残す」「自分の名前を残したいという気持ちがある」とさまざまで、参加者の用紙にも「残したいと思うものは残らない?」「分かっていないでいることを残す」など、思い思いの言葉が書き留められていた。

対話を通じて得られた未来へのヒントと今後の展望

石棒というテーマには、よくわかっていないという「余白」があるからこそ、専門家も市民も同じ立場で想像を巡らせ、問いを立てられることを体感した。参加者からは「正解のないことをみんなで考えて共有する時間が尊い」という声が寄せられ、答えの出ない問いを共有すること自体が、文化財と人をつなぐ力になることを確認できた。「サイエンスの場でこんな話ができたのがとても良かった」という声もあり、科学技術と社会について考えるサイエンスアゴラに文化財というテーマを持ち込んだ意義も感じられた。企画・運営をともにした飛騨市の皆さんからも、体験にとどまらず、関わる人の思いを共有できる場になったことへの手応えが語られた。
今後は、寄せられた問いを大学での研究や飛騨市での発信に生かすとともに、実物とデジタル技術を組み合わせた体験を入口に、市民が文化財を自分ごととして考え、未来へつないでいく場を重ねていきたい。

当日の様子