E1215地球・環境・未来を守る

「おいしい」だけじゃない? ~未来の食、何が気になる?~

生物系特定産業技術研究支援センター

9月12日(土)15:30〜17:00 5階オープンスペースE

出展レポート

提起した問い・目指した未来像

ムーンショット型農林水産研究開発事業(ムーンショット目標5)の社会実装が生活者の食とくらしに与える変化を、一般市民パネラーや来場者と対話しながら“自分ごと化”し、社会受容の条件や引っ掛かりを可視化することで、生活者として一人ひとりが判断の軸を持つことを提起しました。
ムーンショット目標5では、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出することを目指しています。それによって、2050年までに90億人がおいしく食べ続けられる社会を目指します。そのため、来場者自身が未来の食について「自分ならどう考えるか」を言葉にし、科学とくらしの距離を縮める対話の場を作りました。

参加者との対話から生まれた意見や気づき

市民パネラーからは、昆虫を餌とした循環型食料生産システムの鶏卵を使ったプリンについて、試食前には昆虫のイメージに抵抗があったものの、おいしく食べられたことで抵抗感が少し薄れたという意見があった。未利用農産物を使ったレモンマドレーヌでは、予想以上にレモンの味や香りが強いという感想があり、凍結粉砕の技術を使っていると分かれば、その商品を選びたいとの意見もあった。

一方で、自分がおいしく食べられても、家族に勧めるには広く使われる身近な食材になることが必要という意見があった。日常の食として取り入れられる条件として、価格、手間の少なさ、おいしさが挙がった。レモンマドレーヌは、凍結粉砕の技術が付加価値(おいしさ)を生むことを知れば、少し高くてもよいという意見があった。

凍結粉砕によって栄養が損なわれないかという質問には、研究者が乾燥することなく超低温で保存する考え方を説明し、栄養の保持だけでなく調理・保存方法と体内への吸収の関係も調べる必要があると応じた。また、循環型食料生産システムが環境に優しい点は伝えてほしいが、昆虫を前面に出すと抵抗を感じるという声もあった。試食でおいしさを実感した後にも、購入や家庭での利用には多様な判断材料があるという気づきを得た。

対話を通じて得られた未来へのヒントと今後の展望

新しい食品を暮らしに取り入れる最初のステップとして、地域の特産品や食文化(例;昆虫を食べる食習慣がある)を活用しながらご当地の食として普及を進める案が出された。研究者からも、小規模な実践から始めて広げていく考えが示された。身近な商品や地域の食文化を入り口にすることが、研究成果を社会に届けるヒントになると考えられる。

凍結粉砕技術については、保存期間を延ばすだけでなく、香りや風味を生かしてよりおいしくする使い方(付加価値の向上)へと話題が広がった。おいしさをどう測るかという問いから、研究者は心理学や人文科学にも研究が広がると述べた。

今回のイベントから、一般市民・生活者との対話や試食を通じて生活の中の疑問を真摯に確かめながら、研究開発や社会実装につなげていくことが、未来の食を身近にする、社会受容性を高める方法の一つになりうることを実感した。

当日の様子