SFプロトタイピングで想像&創造する50年後の社会
日本ファシリテーション協会
9月13日(日)15:30〜17:00 4階オープンスペースC
出展レポート
提起した問い・目指した未来像
本企画では、50年後の2076年を舞台に、ベーシックインカム(BI)とユニバーサルベーシックサービス(UBS)が浸透した社会を設定した。最低限の生活が保障される世界で、人は何のために働き、何を支えに挑戦するのか。また、社会に必要な仕事は誰が担うのか。こうした問いを、SFプロトタイピングを用いて考察した。
具体的には、宇宙や深海などの極端な環境で、AIや機械と協働する「開拓者」を育てる養成スクールを設定した。そこで得られる未来の「資格」を入り口に、開拓に必要な科学技術やその扱い方、生きるために働く必要のない社会において「仕事」や「挑戦」に対する人々の価値観、さらには、それらを取り巻く社会の変化について考えた。
目指したのは、現在の常識や価値観から離れ、生活が保障された社会での生き方や社会との関わり方を、多様な視点から考えることである。未来年表では、この50年間の技術や制度、社会の変化をたどりながら、想像した未来に至るまでにどのような課題や出来事があり、それらをどのように乗り越え、解決してきたのかを、未来から現在へ逆算する形で考え、想像した未来と現在とをつなげることを意識した。
参加者との対話から生まれた意見や気づき
ワークは、①想像力を広げるアイスブレイク、②資格の名前づくり、③資格の内容の深掘り、④資格が制度として成立するまでの50年間の未来年表づくり、の4ステップで進めた。
自由な未来の発想から始まり、資格という共通の対象をつくることで、「その資格はなぜ必要になったのか」という社会的背景や、「どのような権限や責任を持つのか」「AIや機械に任せられないことは何か」といった、資格が社会に与える影響について対話を広げた。さらに未来年表では、参加者それぞれのアイデアを紡ぎながら、資格が生まれるまでに、技術や制度、社会、人々の暮らしにどのような変化が起きたのかを考えた。
ワークは2チームに分かれて対話を行い、「環境整備総督」「不透明限界状況突破士」という資格の名前を創造した。
未来の「正解」をつくることよりも、参加者が互いの発言に乗っかり、自分たちで設定を問い直し始めたことが印象的だった。AIに頼る社会を想定しながらも、「AIが使えないときに、生身の人間は何ができるのか、何をすべきか」という問いが生まれた。また、資格を持つ人の活躍の場が、極限環境での開拓から日常生活の支援へと広がるなど、一人の発想が他者の関心や発想を呼び起こし、当初の設定では想定していなかった新たな問いへと展開していった。
対話を通じて得られた未来へのヒントと今後の展望
SFプロトタイピングは、想像力を働かせて仮の未来社会を創造することで、現在当たり前だと思っている社会の仕組みや価値観をいったん脇に置き、異なる前提から捉え直す手法である。予測の難しい未来を、科学技術だけでなく、社会、倫理、制度、人々の価値観など、さまざまな視点から考える市民対話の一手法として、BI・UBSをテーマにした今回のワークが一定程度機能することを確認した。
対話では、生活が保障された社会で人は何のために働き、挑戦するのか、AIや機械が多くの仕事を担うなかで、人は何を判断すべきかといった問いが生まれた。また、制度からこぼれ落ちる人や想定外の状況にも目が向けられ、未来の科学技術を考えることが、人々の生き方や価値観、責任の所在、社会制度のあり方を考えることにつながった。
時間の制約から、具体的な登場人物の生活や感情を描く工程は割愛したが、「資格」という設定によって、科学技術だけでなく、責任や倫理、制度や条件にまで議論を広げることができた。その反面、働かない人や挑戦しない人など、開拓者とは異なる価値観については十分に扱えなかった。未来年表でも、出来事を「仮置き」することで議論を進めたが、その背景や別の展開についてもう少し掘り下げる余地があったように思う。
今回は、中学生からシニア世代まで、世代や経験の異なる参加者が同じテーブルで対話した。初対面の参加者同士が互いの意見や価値観に触れ、一人の発言から新たな発想へと展開していくうえで、我々が普段から実践しているファシリテーションの技法が有効であることを再確認できた。科学技術の社会実装を専門家だけの課題とせず、市民も未来の社会を形づくる一員として主体的に考え、対話に参加できる場を目指し、今後もワークの構成や対話の進め方を磨いていきたい。
今回のワークで生まれたアイデアをもとに、AIを活用してSF小説を制作しました。
下記URLよりご覧いただけます。
https://www.faj.or.jp/activity/collabo/1/
当日の様子