418地球・環境・未来を守る

響海島コミュニケーションセンター準備室

悩めるサイエンスコミュニケーターの部屋

9月12日(土)10:00〜18:00、13日(日) 10:00〜17:00 テレコムセンタービル 4階

出展レポート

提起した問い・目指した未来像

さまざまな住民が暮らす架空の島「響海島」を舞台として、来場者とともに「この島には、どのような(サイエンス)コミュニケーションがあったらよいだろう?」という問いに取り組みました。
サイエンスコミュニケーションは、しばしば「ある科学技術について、どのように伝え、対話し、考えるか」というように、科学技術を起点として構想されます。しかし、それとは反対に、まず人々の生活があり、そこから立ち上がった問いが科学技術と結びついていく、という経路もありうるのではないか。これが、本企画の背景にある問題意識です。
そのため本企画では、普段サイエンスコミュニケーションに関わっていないと感じている人には、「自分たちの生活の中にも、サイエンスコミュニケーションにつながる問いがあるかもしれない」という見方を提示することを目指しました。他方、科学技術に関わる仕事をし、サイエンスコミュニケーションを行う機会のある人には、「コミュニケーションの入り口を、科学技術だけに置いてよいのだろうか?」という問いを投げかけ、ともに考えました。
科学技術に関わる人だけが科学技術を起点に行うものではなく、さまざまな人の生活や関心、困りごと、大切にしていることからも始まるサイエンスコミュニケーション。そうした、より多様な入口をもつサイエンスコミュニケーションが根付く未来を、本企画メンバーは見据えています。

参加者との対話から生まれた意見や気づき

来場者にはまず、自分の簡単なプロフィールや生活の様子を書いた「住民カード」を作成していただきました。そのようにして集まった住民カードを見比べながら、それぞれの生活上の楽しみや悩みについて対話を行いました。
印象的だった対話の一つに、次のようなものがあります。ある来場者は、はじめ、同居する家族の面倒を見る時間が長い若年世代について書かれた、既存の社会課題の枠組みとも結びつけて読める住民カードを選び、その内容について対話するのがよいのではないかと話しました。しかし、しばらくしてから、ある子どもが書いた「植物が好き。でも虫はちょっと苦手。」という素朴なカードを選び直し、「『どんなコミュニケーションがあったらよいか』と問われると、社会課題的なものを選んでしまいがちだが、その一方で、こういう素朴な感情の発露は見逃されていくのかもしれない」と話しました。
この発言は、何かを社会課題や科学技術と結びつけて捉えること自体が、一つの問題のフレーミングであることを示唆しています。同時に、生活から問いを立ち上げることを目指して設計した私たちの企画にも、なお「課題らしいもの」に目を向けさせるフレーミングが埋め込まれていたのではないかと、企画者自身が改めて考えるきっかけにもなりました。

対話を通じて得られた未来へのヒントと今後の展望

わたしたちのグループは、2024年からサイエンスアゴラに出展しています。過去二年は、サイエンスコミュニケーションの実践者を主な対象とした企画を行い、その成果を科学技術コミュニケーションの学術誌等で発表してきました。本年はそうした実践を踏まえ、必ずしも自らをサイエンスコミュニケーションの実践者だと考えていない来場者にも参加してもらいながら、なお「サイエンスコミュニケーション」について考えることのできるブースを目指しました。 
昨年度までよりも多様な来場者に体験いただけた手ごたえがあり、また、企画者があらかじめ科学技術の話題を設定していない場面から、自然に科学技術についての対話が生まれる場面も多く見られました。このことから、生活を起点としてサイエンスコミュニケーションへ接続するという今回の試みには、一定の可能性があったのではないかと考えています。
また、「自分の所属する組織やグループのメンバーで体験すると、互いが普段どのようなことを考えているのかを知ることができそうだ」という意見や、「架空の島を舞台にするだけでなく、実在する地域を舞台として、よりシリアスな対話にも挑戦してみたい」という意見もいただきました。これらは、今回の手法がサイエンスコミュニケーションの場に限らず、同じ場で生活したり活動したりする人々が互いの見方を知るための方法としても展開できること、また、架空世界での対話から現実の地域をめぐる対話へと接続できる可能性を示すものだと考えています。今後は、こうした展開可能性を検討しながら、生活を起点とするコミュニケーションのあり方をさらに探っていきたいです。

当日の様子