技術士と話そう! まもる力をはぐくむ防災の科学
日本技術士会 科学技術振興支援委員会
9月12日(土)10:00〜18:00、13日(日) 10:00〜17:00 テレコムセンタービル 4階
出展レポート
提起した問い・目指した未来像
本企画で私たちが提起した問いは、「災害が生活の一部となった現代において、子どもたちはどのように科学的な視点を獲得し、自らの安全を守る判断力を育てられるのか」である。地震、豪雨、浸水、土砂災害など、かつては“まれな出来事”とされていた事象が、今では日常の延長として向き合わざるを得ない現実となった。しかし、防災教育は依然として“覚えるべき知識”として扱われることが多く、災害のしくみを科学的に理解し、自分で考え、状況に応じて判断する力を育む機会は十分とは言えない。こうした課題を踏まえ、本企画では、技術士が地震・津波・火山・風水害という複数の災害を横断しながら、科学的な原理と防災技術を体験型で伝える構成とした。
地震パートでは、ばねを使ったP波・S波の体験を通じて揺れ方の違いを理解し、耐震・制震・免震技術の役割を紹介した。風水害パートでは、雨量・地形・都市構造が水の流れに与える影響を図で示し、おもりを使った水中歩行の模擬体験を行うことで、身近な危険箇所への理解を深めた。火山パートでは、噴火のしくみを実験で示し、溶岩岩石の実物に触れる体験を通じて、自然現象の迫力と科学的理解を結びつけた。これらの体験は、子どもたちが「地震・津波 ⇒ 火山 ⇒ 風水害」という流れで自ら学びをつなげていく姿を生み出し、災害を“怖いもの”から“理解して備えるもの”へと捉え直す契機となった。
私たちが描く未来像は、子どもたちが災害を恐れるだけでなく、科学的な理解をもとに主体的に判断し、地域の安全を支える一員として成長していく社会である。体験と対話を通じて、子どもたちが自分の生活環境を科学的に読み解き、家や学校の周りの危険と安全性などを自ら考え始める姿は、その未来像の萌芽である。防災を“自分ごと”として捉え、科学的な視点で状況を理解し、行動できる次世代を育むことこそが、本企画の中心的な目的である。
参加者との対話から生まれた意見や気づき
本企画では、子ども・保護者・大人の参加者との対話を通じて、多くの意見や気づきが生まれた。まず、体験を通じた理解の深まりが顕著であった。地震パートでは、ばねを使ったP波・S波の体験が子どもたちの興味を強く引きつけ、揺れ方の違いを自分の手で確かめることで、抽象的な地震の知識が具体的な理解へと変わっていった。また、火山噴火の実験では、溶岩岩石の実物に触れた子どもが感激し、自然現象の迫力が学びの動機づけになることが確認できた。アンケートで、「溶岩岩石の実物に触れられてよかった」という記述は、体験型学習の効果を象徴している。
風水害パートでは、おもりを使った水中歩行の模擬体験が、身近な危険への理解を促した。短時間のため「片足500gでは軽いという子供が多かった」という反応も見られたが、子どもたちは歩きにくさを実感し、保護者からも「こうした体験があると家庭で防災を話題にしやすい」という声が寄せられた。体験を通じて、子どもが自分の生活環境を科学的に読み解こうとする姿勢が芽生えたことは、今後の防災教育にとって重要な示唆である。
大人の参加者からは、地震のP波・S波について詳しく聞きたいという声があり、専門的な内容でも対話を通じて深い学びが生まれることが示された。保護者からは「子どもの新たな関心を知った」との意見も頂いた。
一方で、子どもたちは説明が長くなると集中が途切れる傾向があり、「説明が長くなると子供たちは飽きてくるため、端的な説明が求められる」という課題も明確になった。技術士側からは「子どもの素朴な疑問が専門家の視点を揺さぶる」という気づきが得られ、専門性を社会に開くコミュニケーションの重要性が再確認された。
対話を通じて得られた未来へのヒントと今後の展望
参加者との対話から得られた最大のヒントは、子どもたちが「自分の生活と科学がつながる瞬間」に強い興味を示すという点である。地震・津波・火山・風水害の体験を通じて、子どもたちは揺れ方の違いや水の流れの速さ、火山噴火のしくみなどを自分の目と手で確かめながら理解し、「家の周りはどうなっているのか」「学校への通路は安全なのか」「ハザードマップを確認しよう」といった身近な疑問を次々に口にした。これは、防災を単なる知識ではなく“自分の環境を科学的に読み解く力”として捉える姿勢が芽生えた証拠であり、今後の防災教育の方向性を示す重要な示唆となった。
保護者との対話からは、「家庭で防災を話題にするきっかけとなった」「子どもの新たな関心事を知った」という声が寄せられ、体験内容を家庭へ持ち帰れる教材や、地域の安全を家族で一緒に考える仕組みの必要性が明らかになった。大人の参加者からは地震のP波・S波について詳しく聞きたいという声もあり、専門的な内容でも対話を通じて深い学びが生まれることが確認できた。
技術士側の気づきとしては、「子どもの素朴な疑問が専門家の視点を揺さぶる」「説明の仕方を工夫することで専門性がより社会に開かれる」という点が挙げられた。体験型の構成により、専門家が市民と対話することで技術の社会的価値が再確認され、次世代に伝えるべき知識の整理にもつながった。
今後の展望としては、参加者が内容を一目で理解できる導入資料等の環境整備が必要である。また、学校・地域・家庭をつなぐ継続的な学びへと発展させ、子どもたちが科学的な視点で地域の安全を考え、将来の防災を担う人材へと育つ循環をつくることを目指したい。
当日の様子