321社会とつながる・世界とつながる

GIコンビニ

Blend

9月12日(土)10:00〜18:00、13日(日) 10:00〜17:00 テレコムセンタービル 3階

出展レポート

提起した問い・目指した未来像

科学技術や製品デザインには、無意識のうちに特定の性別や身体特性を前提とした「標準」が組み込まれていることがあります。その結果、医薬品の副作用や使いづらいサービス設計など、さまざまな不利益が生じています。こうした偏りを見直し、性差や交差性の視点を研究・設計に取り入れる考え方が「ジェンダード・イノベーション(GI)」ですが、日本ではまだアカデミックな概念にとどまり、広く浸透しているとは言えません。

そこで本企画では、多様な技術やデザインが集まる「コンビニ」を舞台に、「この便利は、誰を基準につくられているのか?」という問いを提起しました。ブースでは、お菓子の箱に自分で栄養表示ラベルをつくって貼る体験(「1日分の栄養」は誰にとっての1日分?)と、同じ「ようこそ」というメッセージを文字・言語・配置を変えて並べたGIコンビニ広告の展示を通して、身の回りの「当たり前」を問い直す対話の場をつくりました。GIを知識として教えるのではなく、身近なものへの違和感から問いが立ち上がり、性別や身体の違いを想定した設計が研究やものづくりの初期段階から「当たり前」になっている未来を目指しています。

参加者との対話から生まれた意見や気づき

ジェンダード・イノベーションという言葉を初めて聞く来場者が多く、概念としてまだ十分に浸透していないことを実感しました。特に「イノベーション」という語から技術革新や新製品を想像する方が多く、性別や身体的な違いを研究・開発の視点に取り入れるという考え方には馴染みが薄いようでした。一方で、簡単に説明すると「自分の専門分野でも似たようなことがある」と、ご自身の経験を思い浮かべる方も多くいらっしゃいました。空調メーカーにお勤めだった方からは、温度や湿度の快適性を示す指標が特定の属性の男性を基準に設定されているという事例を共有いただきました。ほかにもデザイン関係者や学生など、さまざまな立場の方が専門や経験と照らし合わせながら気づきを語ってくださいました。

同時に、言葉の壁も見えてきました。薬学研究をされてきた60〜70代の方からは、「ジェンダー」という語が入っているだけでセンシティブな内容だと先入観を持ってしまい触れにくい、もっと抵抗感のない新しい言葉にしてはどうか、というご意見をいただきました。理科教育を研究されている方からは、授業ではある程度結果が見えている前提で題材を選ぶことが多く、GIのような反応の読めないトピックは扱いづらい、という率直な声もありました。また、小学生以下の来場者の方ににどう説明するかという私たち自身の課題にも気づかされました。

対話を通じて得られた未来へのヒントと今後の展望

今回の対話から得た最大のヒントは、GIの普及には「まず言葉を知ってもらうこと」と「身近な事例から入ること」の両方が必要だということです。概念を説明するだけでは伝わりにくい一方で、コンビニの栄養表示や広告のように誰もが日常で触れるものを入口にすると、来場者は自分の専門や経験の中にある「標準」の偏りを自ら見つけ、語り始めてくださいました。同時に、「ジェンダー」という語への抵抗感や、教育現場で扱いにくいという声は、GIを「特定の人のための話」ではなく「よりよい研究・設計のための方法」として伝える言葉と入口の設計が、今後の課題であることを示しています。

今後は、来場者から寄せられた事例を蓄積して展示や教材に反映させること、小学生から専門家まで相手に応じた説明の言葉を練り直すこと、そして企業の方々と営利との両立について議論する場をつくることに取り組みます。Blendは普段、文理を問わず若手研究者が集まり、自分の研究にGIの視点を取り入れる月1回のオンラインプログラムを運営しています。今回の展示で生まれた対話を、そうした研究実践の場へとつなげ、GIの視点が研究やものづくりの「当たり前」になる未来に向けて活動を続けていきます。

当日の様子