315社会とつながる・世界とつながる

アゴラカダブラ! 〜科学の未来を描く魔法〜

立教大学 理学部 SCOLA

9月12日(土)10:00〜18:00、13日(日) 10:00〜17:00 テレコムセンタービル 3階

出展レポート

提起した問い・目指した未来像

「私たちが期待する未来や社会、そして科学の在り方とはどのようなものなのだろうか。」
本展示において、参加者はエクネイクス魔法学校(アルファベット逆読みで"サイエンス")の学生として卒業試験を受ける、という設定になっている。まず一次試験として「魔法」ブースにて、実現したい魔法(願い)を記載する。二次試験として「科学」ブースに移り、誰かの魔法(願い)を実現するために、どのような科学技術が転用可能かを考えるという構造だ。
同じ「科学」という言葉であっても、それぞれが歩んできた経験や体験によって思い描く姿は少しずつ違うだろう。では、その違いとはどのようなものなのだろうか。また、その先にどんな世界を望んでいるのか、さらに、それはどのように実現され、また今はその過程のどの段階にあるのだろうか。こうした疑問を出発点に、「魔法」というある種「科学」とは離れた視点で考えることで、科学的知識の程度に関わらず「誰もが当事者として未来を考えることができる」という未来像(そしてそれにまつわる体験の提供)を目指した。

参加者との対話から生まれた意見や気づき

「科学」ブースでは、自身が知っている科学技術を具体的に挙げながら、誰かの魔法(願い)を実現する方法を考える参加者も少なくなかった。参加者の知識や発想を展示内で次の参加者へと橋渡しすることで、多様な知見を共有するという点においても、企画の目的に近づくことができたと言えるだろう。
また、「菌が好きだから、菌のことをもっと知りたい」「ある病気を治したい」といった魔法も寄せられた。一つひとつの魔法には、参加者それぞれの経験や関心、強い思いが込められていることもうかがえた。
「空を飛びたい」「部屋を片付けたい」といった魔法は比較的多く見られたが、その理由は「移動そのものを楽しみたい」「普段とは異なる視点から、いつもの街を見てみたい」など、参加者によって異なっていた。同じ言葉で表された願いであっても、その背景には多様な動機や価値観があることは、興味深い発見であった。さらに、「植物たちと話せる魔法」に対して、別の参加者から「植物に文句を言われそう」というコメントが寄せられる場面もあり、他者の発想に触れることによって、身近な存在への見方が変化しうることも示された。
一方、参加者との対話からは、「魔法」が発想を広げる入口になると同時に、参加をためらわせる要因にもなりうることがわかった。作り込まれた世界観や「魔法」という言葉に戸惑い、「世界観に入りにくい」「何をすればよいのかわからない」といった理由から、体験を避ける参加者も一定数見られた。展示の世界観を活かしながら、初めて訪れた人にも企画の意図や参加方法が伝わるよう、導入や説明を工夫する必要があるだろう。

対話を通じて得られた未来へのヒントと今後の展望

本展示では、子ども連れの家族をはじめ、幅広い年代の参加者に実現したい魔法を想像してもらい、それをもとに対話を行った。その中で見えてきたのは、参加者が普段どのようなことに困り、どのような助けや変化を求めているのかという、日常からの視点でもあった。
例えば、多くの参加者が「瞬間移動」や「部屋を片付ける魔法」を挙げていた。そこには、移動にかかる時間や負担を減らしたいという願いや、家事や片付けに費やす労力から解放されたいという思いが表れていると捉えられる。
未来の科学技術を考える際には、専門的な課題や技術的な実現可能性だけでなく、一人ひとりの日常にある小さな不便や願いに目を向けることも重要である。身近な願いから出発することで、未来をより具体的に想像し、自分自身に関わる問題として捉えやすくなると考えられる。本展示では、参加者の願いを「魔法」として表現し、その実現方法を科学の視点から考えることによって、一見すると距離のある科学技術と人々の暮らしを結びつけることができたと言えるかもしれない。
今後は、今回集まった願いを整理・データ化し、人々がどのような科学技術や社会の仕組みを求めているのかを分析していきたい。また、魔法学校という世界観の魅力を活かしながら、参加者が企画の意図を理解し、より自然に対話へ加われるよう、展示の導入や説明、進行方法についても改善を重ねていきたい。
多様な願いを丁寧にすくい上げ、生活者の視点と科学に関する知見とを行き来しながら未来について考える場をつくることが、今後のサイエンスコミュニケーションにおいて重要であると考える。

当日の様子