311見て・さわって・楽しく学ぶ

見えない分子を観る ~模型と計算で~

日本コンピュータ化学会

9月12日(土)10:00〜18:00、13日(日) 10:00〜17:00 テレコムセンタービル 3階

出展レポート

提起した問い・目指した未来像

ふだん私たちが飲んでいる水は、目に見えないほど小さな水分子の集まりです。その分子はどんな形をして、どのようにふるまっているのでしょうか。今回のサイエンスアゴラで私たち日本コンピュータ化学会は、さまざまな種類の分子模型やWebアプリを活用しながら、参加者と一緒に分子の形や動きを確かめました。

分子をまだ学校で習っていない低年齢の子どもたちには、まず「分子って知っている?」と問いかけ、水分子の動きをシミュレートするWebアプリを見せながら説明しました。続いて、分子をキャラクターにした「化合物モンスター」(サイエンスイラストレーターの揚げ鶏々さん制作)のイラストから好きな分子・気になる分子をいくつか選び、私たちが開発した紙製分子パズル「PuzMol」を組み立ててもらいました。完成したPuzMolを持ち帰れることも、子どもたちに喜ばれました。

PuzMolを組み立て、iPadの画面で分子たちの動きを確かめる体験が、身近な現象を分子の働きで考えたり、化学式の意味を理解したりするときの助けになればと考えています。年齢や予備知識、学校や家庭の環境によらず、誰もが自分で模型を組み立てながら化学を学べるように、化学の学びを身近にすることを目指しました。

参加者との対話から生まれた意見や気づき

「分子がさわれるので、イメージがわいてきました」――これはPuzMolを組み立てた参加者の感想です。回収したふりかえりシート271枚には、「いえでもやってみたいです。」という声や、学校で習うときにこの体験を思い出してほしいという保護者の記述もありました。

9席を設けたPuzMolコーナーは、2日間ほぼ満席でした。分子をまだ習っていない子どもたちも、PuzMolの組み立てに夢中になっていました。ただ、「分子の形を作るんだよ」という説明が十分にできなかった場面では、PuzMolパーツをブロックのように自由に組み立ててしまって終わることもありました。化学の学びとして、分子の形を確かめるところまで体験してもらうには、説明や声かけにも工夫が必要だと感じました。

中学生以上の参加者とは、原子の中の電子の広がりを表したガラス模型「NEBULA」や分子シミュレーションのアプリを見ながら話しました。私たち日本コンピュータ化学会がふだんの研究活動で取り組んでいる「コンピュータで化学を研究する」とはどういうことか、コンピュータ化学を学んだ先にどんな仕事があるかといった質問も受けました。教育関係者らとは、一般的なプラスチック製の分子模型が高価なので生徒全員分をそろえにくいという話になり、PuzMolを授業で使う方法について意見を交わしました。

視覚障害のある参加者からは、PuzMolに触れながら、平面の原子パーツに点字で元素名を表示すれば、視覚に頼らず組み立てられそうだという提案をいただきました。私たちが想定していなかった使い方で、ぜひ試してみたいと思いました。

対話を通じて得られた未来へのヒントと今後の展望

今回、さまざまな模型(PuzMolやNEBULA)やWebアプリが、分子をまだ習っていない子どもたちに形や動きを伝える助けになることを実感しました。

身近で安価な紙を使うPuzMolなら、学ぶ人それぞれに模型を用意しやすくなります。自分で組み直して試したり、隣の人と形を比べたり、作り方を教え合ったりできるよう、教材の開発と授業・体験活動での活用を続けていきたいと考えています。子どもたちが熱心に取り組む様子を見て、学校や家庭の予算によらず、一人ひとりが模型を手にできるようにしたいと、その思いを強くしました。

また、組み立てる楽しさを分子への関心につなげるには、教材の使い方の工夫も必要だと思いました。今後は、組み立てる分子を選ぶ際にキャラクターのイラストを用いて水などの身近な物質の話を交えたり、完成後に形を一緒に確かめたりすることで、学習意欲を高める工夫をしていきたいと考えています。こうした進め方や声かけの工夫を整理し、イベントや学校などでPuzMolを教材として利用する方々にも広く伝えていきたいと思います。点字表示については、当事者の意見を聞きながら、触って原子の種類を区別できる表示や、組み立てやすい形を試作・検討したいと考えています。

10回以上のサイエンスアゴラへの出展を続けるなかで、毎年PuzMolを楽しみに訪れてくれる参加者もいます。今回の声をもとに教材と説明を工夫し、次の出展でもまた体験してもらいたいと思います。

当日の様子